ご当地ワインと郷土料理&名産物㉒ 北米・カリフォルニア その2

カリフォルニア州に横たわる複雑な構成の土壌

10月初め、そして今月にも原野大火災で大被害を受けている、カリフォルニア州のナパ・ヴァレーについて、引き続きお届けすることにしたい。
北米プレートと太平洋プレ-トの境界域に位置し、約1,300キロにわたって続く巨大なサン・アンドレアス断層がこの一帯を走っており、地震の危険性を忘れることのできない地域でもある。北米の西海岸線は、中生紀から新生紀に海底から持ち上げられて形成され、その後何度も起きた激震をともなう地殻変動と火山活動によって、何ひだにもなる海岸山脈が誕生。こうした隆起と浸食作用によって地中の花崗岩が地表に現れ、更新世(約258万年前から約1万年前までの期間)の氷河により渓谷が削られて堆積物となった。
大陸部から流れ出した土砂による堆積物は、その後、変成作用を受けて変成岩となり、火山活動が活発になる度に溶岩や灰として地殻の隙間を縫うように吹き出しては地形を変化させた。一方、陸地は何度も浸水と干ばつを繰り返し、貝殻をはじめとする海洋性有機体の砂や粘土、火山灰が一体となってこの地域特有の堆積層が形成され…云々といった具合に、ナパ・ヴァレーの複雑な地形形成をいくつもの著書が説明しているが、その結果に関する考察はほぼ共通している。すなわち、ナパ・ヴァレーを含む、カリフォルニア州のワイン産地には140種類以上の土壌のタイプが存在すると言われ、この土壌の多様性が、気候の多様性と相まってカリフォルニア州での様々なブドウ品種の栽培を可能にし、質の異なる多くのワインが造られるに至っている。

 


暑すぎるはずのヴァレーで上質ワインができる理由

ナパ・ヴァレーはカリフォルニア州でも、最も上質なワインの生産地として有名だが、北緯38度に位置し、実は、上質ワインの産地として暑すぎる。しかし、次のような気候の特性がワイン造りに恩恵を与えている。まず、カリフォルニア沿岸に北極から氷点下に近い海水が流れ込んでいること。さらに、北カリフォルニア沖には、地球自転によるコリオリ効果が深海で発生し、超冷却水が継続的に湧昇し、サンフランシスコ湾に深い霧を発生させていること。夏の間、灼熱の太陽によって内陸のセントラル・ヴァレーが加熱され暖かい空気が上昇して低気圧帯が生じると、海上に発生した霧が冷たい湧昇気流となってサンフランシスコ湾に向かって猛烈な勢いで流れ込む。 この冷たい空気がカリフォルニア州の海岸山脈に挟まれたいくつものヴァレー地域に流れ込み、気温を下げている。
ナパ・ヴァレーは、サンフランシスコから車で1時間ほど北上する地点から、北にのびる長さ約50キロ、幅1.5~5キロの細長い渓谷地帯。西はマヤカマス山脈(標高600メートル)、東はヴェカ山脈によって挟まれ、夏の期間、湾から流れ込むこの冷たい空気のおかげで、ブドウ栽培に理想的な気候となっている。

 

ワイン造りのきっかけはゴールド・ラッシュ

さて、このナパ・ヴァレーにブドウ栽培を持ち込んだのはメキシコからやってきたスペイン人の宣教師たちで、18世紀中ごろのことだった。1848年に内陸のシエラ・フット・ヒルズで金(ゴールド)が見つかると、国内外から人々が移り住んだ。1846年のサンフランシスコの人口は200人だったが、50年には2万5,000人、そして70年には15万人と一挙に人口が増え、この市場をターゲットにワイン造りが盛んに行われるようになった。つまり、カリフォルニアでのワイン産業はゴールド・ラッシュが引き金となってスタートしたというわけだ。次回では、同州のワイン産業のさらなる発展の経緯についてご紹介したい。

週刊ジャーニー No.1014(2017年12月14日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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