ご当地ワインと郷土料理&名産物⑳スペイン・ワイン総括 その4

多様なスタイルとタイプが魅力

今号も、先月に続きシェリーについてお届けしたい。シェリーは、様々な料理にとても合わせやすい。極辛口から極甘口まで色々なスタイルやタイプのものがあるためだ。シェリーだけでアペリティフから食後酒まですべてアレンジすることができるほどだが、英国では1980年初めまで、シェリーはもっぱらアペリティフとして大人気で、コピタcopitaという小さいグラスに目いっぱい注いだものが供されることが多かった。バーなどでシェリーを注文すると、ウエイターは口癖のように「dry or medium?」と聞いてきたものだ。

今ではアペリティフというと、プロセッコやシャンパーニュといったスパークリング・ワインが主流ながら、シェリーは食事の前に飲んでも、スパークリング・ワインのように泡でお腹がはらないので食事に入りやすい。

「花」と呼ばれる酵母から生まれる個性

シェリーは酒精強化ワイン(アルコール添加ワイン)で種類も多様。まず、透明に近い色合いで、すっきりタイプの辛口シェリーは、フィーノFinoまたはマンサニーヤManzanillaとラベル表示されている。先月号で説明した個性の弱いパロミノ種から造られ、塩気があり、石のような、パンのような、柑橘類やアーモンドそしてハーブといった風味を呈す。やや鼻につくユニークな香を持つため、好き嫌いが分かれるが、飲みこなすと結構くせになる味わいと言える。

このユニークな風味は、独特の熟成過程から生まれる。フィーノやマンサニーヤは、アルコール度を15~15.5%に酒精強化した後、バットButtと呼ばれる容量600リットルのオーク樽内で熟成させるわけだが、ワインは樽の5/6だけ満たす量にとどめる。これによって、ワインの表面にフロールFlor(スペイン語で花という意味)と呼ばれる酵母の膜が発生し、ワイン中のアルコールを栄養源にして、二酸化炭素とアセトアルデヒドが生成される。 シェリーに個性的な風味を与えているのはこのアルデヒドというわけだ。

中国の老酒を思わせる辛口タイプ

同じ辛口でも、深みのある色合いで、豊潤でリッチ、そして深い味わいがあるシェリーはオロロソOloroso、アモンティヤードAmontillado、パロコルタドPalo Cortadoとラベル表示されている。同じくパロミノ種から造られ、3スタイルの作り方は異なるものの、結果的にはオーク樽の5/6だけ満たされたワインの表面にフロールが生成されない(17%に酒精強化され、アルコール度が高いがゆえにフロールが発生しない)点は共通で、ある程度、酸化したワインとなる。色合いは褐色、フルボディで、トフィー、香辛料、クルミといったどこか中国の老酒に似た風味を呈すようになる。

前菜からチーズまで楽しめるシェリー

シェリーはすべてノン=ヴィンテージ(複数の収穫年もののブレンド)で、購入後、瓶内で質が高まることがないので、できるだけ新鮮なうちに飲むのが好ましい。 

シェリーは前述のとおり、いろいろな料理に合いやすいが、当地で相性がいいのは何と言ってもタパスだろう。

まず、軽めのマンサニーヤをアペリティフにして、海産物などの冷たい前菜にフィーノ、肉料理に辛口のアモンティヤード、あるいは辛口のオロロソを合わせる。チーズについては、フィーノには若いマンチェゴ、アモンティヤードには、牛乳から作ったソフト・チーズやヤギ乳のチーズといった土っぽい香りのするチーズ、パロ・コルタドには豊潤な香りのパルメザン、そしてリッチなオロロソには強い香りをもつ古いマンチェゴやチェダー・チーズがよく合う。

週刊ジャーニー No.1001(2017年9月14日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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