いざというときに役に立つ【ファーストエイド】基本の「キ」 [First Aid]
負傷や急病が出たときに行う応急救護手当て、 ファーストエイド(First Aid)。 日常の小さなケガの手当てもあれば、命にかかわる状況で、 救急のプロの到着を待つ間に患者の状態の悪化を食い止めることもある。 何の知識も持たない人にとっては、難しいように感じられるかもしれないが、 実際に必要な知識と技術は、一般人にも無理なく習得できるレベル。 そこで、いざというときに知っていると役立つ、 ファーストエイドの基本をご紹介する。
参考資料:『First aid reference guide』St John Ambulance、www.sja.org.uk

●サバイバー●取材・執筆/名越美千代、本誌編集部

筆者はロンドン地下鉄の駅構内で倒れたことがある。
引越しで疲れが溜まっていたのだが、最寄り駅の階段を駆け上がったところで突然、手足の力が抜けて倒れこみ、そのまま動けなくなってしまった。あのときは、通りがかりの人たちがすぐさま駆け寄ってくれて、私は後続の通行人に踏みつぶされずに済んだ。誰かが私を楽な姿勢に動かしてくれた。
20代くらいの若い女性が(なかなかパンクな服装の人だったのだが)私の手を握り、「病歴はある? なにか薬を飲んでる? どこか苦しい? 家族の電話番号は?」とテキパキと質問してから、「大丈夫よ、心配しないでね」と、救急車が来るまでずっと、私の動かなくなった手足をさすりながら話しかけてくれ、本当に心強かった。自分の目の前で誰かが倒れたら、私も同じようにしたいと思う。今のところまだ、そんなことには遭遇していないが、準備だけはしておきたい。
2005年7月にロンドン市内で同時爆破テロが発生した際にも、同じようなことを考えた。筆者はそのとき、ロンドン在住の英国人の友人とスペインを旅行中だったのだが、ニュースを聞いた友人はすぐさま、「ロンドンにいたら何か手伝えたのに残念だ」とつぶやいた。この一言は、事件の衝撃と共に印象に残っている。友人は当時、普通の40代の女性だったのだが、ファーストエイドの心得はあり、事件現場の一つが職場の近くだったこともあって、なにか小さなことでも役に立てたのではと思ったようだった。
英国はイスラム過激派によるテロが問題になる以前に、1970年代からIRAによる爆破テロに悩まされてきているので、緊急事態に対する国民の意識が高いのかもしれない。実際に、一般市民向けのファーストエイド講座も、英国の方が日本より充実しているようだ。
あれから10年以上経ち、世の中はますます危険な方向へ進んでいる気がする。昨年11月のパリでの同時多発テロの衝撃に追い打ちをかけるように、新年早々にはイスタンブールやジャカルタでテロが起こった。今や、世界のどこにも安全な場所はないと感じる人も多いだろう。いつどこで、予測もしなかった事態に遭遇するか、誰にもわからない。そんなとき、自分にはいったいなにができるだろうか?
テロや大事故がなくとも、日常生活において、いつでもファーストエイドが必要な状況になりうる。
「応急手当てさえできていれば…」と悔やまれることの多い症例には、ノド詰まり、心拍停止、大量出血、心臓発作、気道閉塞の5つが挙げられるという。応急手当ての知識があれば誰かの命を救ったり、社会復帰を可能にしたりできるチャンスが広がる。救えるのはあなたの大切な家族や友達かもしれない。
ただ、ファーストエイドでは、まずは自らの安全確保が第一で、自分を危険にさらしてはならない。それを踏まえた上で、ひとりでも多くの人が少しの時間を割いてファーストエイドを学び、いざというときには一歩前に出る勇気を持つことができればと、願うばかりだ。

これは役に立つ!ファーストエイドの豆知識

応急救護のお助けアプリ
「St John Ambulance First Aid」

セント・ジョン・アンビュランス=写真=のほか、英国赤十字社のものなど、種類もいろいろあるので、気に入ったものを探してみては?
負傷者や急病人には思いもかけないところで遭遇するものだ。たとえファーストエイドの心得があったとしても、慌てて、頭の中が真っ白になることもあるかもしれない。そんなときのために、救急・救命・応急手当てに関する基礎知識をまとめたアプリを、普段持ち歩くスマホやタブレットに入れておけば心強い。
第一段階の救急対応の手順、気道確保や回復体位への動かし方、CPR(心肺蘇生法)、AED(自動体外式除細動器)の使い方などをイラスト入りで詳しく説明してくれる(機種によっては音声も出る)。応急手当ても、緊急性の高いものから日常で起こりがちな出血、やけどといったものまで、多岐にわたる症状がカバーされている。アプリの指示に従えば、一刻を争う緊急時にも落ち着いて対応できるだろう。ファーストエイド講習後の復習用としても使える。

緊急通報電話、999と112

英国の緊急通報電話の番号は、「999」または「112」。
「999」は1937年から使用されている英国民に馴染み深い番号で、「112」は欧州内共通の緊急通報番号として1995年から導入された新しい番号。どちらも同じようにつながる。
ただし、警察や消防への通報も同じ番号になっているので、つながったら「救急車を」と頼むことが必要だ。
自分の名前、今いる場所、連絡の取れる電話番号、いつ、何が起こったか、緊急の度合い、倒れている人の詳細(人数、性別、およその年齢、症状など)、現場の状況(特に、ガス漏れ、悪天候など、危険を伴うと思われる状況)などを落ち着いて伝えること。
電話は、先方が切るまでは繋げておく。救急車の到着まで指示が受けられるし、その後の状況の変化を先方へ報告することもできる。

機械の指示に従うだけ。
誰でも使いこなせるAED

AED(Automated External Defibrillatorの略で、日本語では、自動体外式除細動器とされる)とは、心臓が痙攣して血流を促すポンプ機能を失った状態(心室細動)になったときに、電気ショックを与えて正常なリズムに戻す医療機器だ。倒れている人に意識がなく、呼吸停止状態、または呼吸に異常がある場合に使用する。空港やショッピングセンターなど公共の場でもAEDがあることを示すサインを見かけることは多い。
スイッチを入れれば音声による指示が始まるので、その声に従えば、誰でもAEDが使いこなせる仕組みになっている(英国では指示は英語)。心臓の状態はAEDが解析し、電気ショックが必要かどうかを判断してくれるので、誤使用の心配もない。
AEDから細かい指示が出るとはいえ、覚えておくとよい注意点としては…
■AEDの解析中は、機械が正確に状態を判断できるよう、胸骨圧迫(心臓マッサージ)は止め、対象者には触れない。
■電気ショックを与える際には、対象者から離れるように機械から指示が出るが、自分でも声に出して繰り返し、周囲にも促す。
■電気ショックを与えた後にはまたすぐに、CPRを再開する(AEDのパッドはつけたまま)。
■電気ショックは不要と判断されても、回復したという意味ではない。CPRの継続は必要。
■患者の体が濡れていたら、パッドを貼り付ける前に水分をふき取る。
■1歳未満の赤ちゃんには行わない。8歳未満の子供には子供用のパッドを使用(なければ大人用で代用可)。

最初の数分間が決め手!基本の救急対応
プライマリー・サーベイ

倒れている人を見つけてから応急手当てを施すまでの救急対応(英語ではPrimary Surveyという)は、「Danger(危険)」→「Response(反応)」→「Airway(気道)」→「Breathing(呼吸)」→「Circulation(循環)」の5つの手順に従う。それぞれの頭文字をとった、「DRABC(ディー・アール・エイ・ビー・シー)」がキーワード。「DRABC」は、どんなに小さな事故であっても、状況の深刻度にかかわらず常に遵守されなければならない。

Danger: 危険の確認

倒れている人がいたら、近づく前にまず、周囲に危険がないことを確認する(倒れた原因がまだ、そこにあるかもしれない)。誰かを助けようとして自分もケガをすることは絶対に避けなければならない。交通量の多い道路を渡るときぐらいの注意深さが必要だ。
危険を及ぼす恐れがあるものは先に排除する(感電の恐れ→電源を切る/ガス中毒や酸欠→窓を開けるなど)。負傷者が発生した原因がまだ残っていたり、原因が不明であったりと、自分自身の安全が確保できないと思われたら、専門家が到着するまで近づいてはならない。
倒れている人には頭側から近づかないこと。声をかけるときも必ず、顔の正面から。
負傷者の動きは最小限にとどめる。やむを得ない場合を除いては、救急隊員が来るまではなるべく移動させない。首の損傷がある場合、顔の向きを変えさせることで悪化させてしまう可能性があることも覚えておきたい。

Response: 反応を見る

安全を確かめて倒れている人に近づくことができたら、まずは意識の有無を確認する。名前を呼んだり、「目を開けて」、「聞こえますか」などと語りかけたりする。または、肩や鎖骨の下を軽く叩いて反応を見る(赤ちゃんの場合は足の裏をはたく。また、手を叩く音で反応を見る)。絶対に体をゆすぶらないように(特に赤ちゃんの場合は厳禁)。
反応の段階は、AVPU(Alert:注意喚起、Voice:声に反応、Pain:痛みに反応、Unresponsive:反応がない)の4つに分けられる。反応がないときは要注意。大きな声で助けを呼ぼう。他に誰かがいれば、その人に助けを呼んでもらう。

Airway: 気道の確保

意識を失っている場合、舌が気道を塞ぐことがある。気道が塞がっていると肺に空気が入らず、呼吸ができない。気道を確保すれば、誤って何かを飲む事故も防げる。

■大人と子どもの場合
①倒れている人(仰向け)の傍に膝をついて、片手を額に置き、口が少し開く程度に頭を後方へ傾ける。
②もう片方の手の人差し指と中指を倒れている人の顎の下に置き、気道が確保されるように顎先を引き上げる。顎の下のやわらかい部分を指で圧迫しないように気をつけよう。
※赤ちゃんの場合は、やさしく、そっと行う。強く押しすぎないように。

Breathing: 呼吸の確認

気道を確保したら、倒れている人が正常に呼吸しているかを確認する。
①対象者の口と鼻のすぐ上に自分の頬を近づける。
②呼吸音を聞く、胸の動きを見る、息を感じるなどで、呼吸を確認する。確認は10秒以内で。10秒間に3回の呼吸ならOK、2回以下なら要注意。心臓が停止すると、2〜3分の間、苦しげな呼吸(短くて断続的な、喘ぐような呼吸)がみられることがよくある。これも頭に入れておこう。
③―1 呼吸をしていない、または、呼吸に異常が感じられるなどの場合は、CPR(心肺蘇生法)を行う。
999か112に電話をして、救急車を呼ぶ(他に誰かいれば、その人に頼む)。可能であれば、AED(自動体外式除細動器)を手配する。
③―2 呼吸が正常なら、ケガに応急手当てを施し、回復体位(Recovery Position)に動かす。途中で呼吸が荒くなったら、応急手当ては中断して、先に回復体位へ動かしてから、応急手当てを再開する。

Circulation: 血液循環の確認

ここでは「出血の有無」を指す。大量の出血は、ショック症状を引き起こす可能性があり、生命にもかかわる。正常な呼吸が確認できたらすぐに、出血しているところがないか、全身を確認し、出血があれば止血を行う。感染症予防のため、傷口には直接触れない、自分の体に開いた傷がある場合は布か絆創膏で覆っておくなど、衛生面に気をつけること。
※止血の方法や下で紹介するCPRの方法など、詳しくはセント・ジョン・アンビュランスのウェブサイト(www.sja.org.uk)の「First aid skill finder」を使えば、動画が検索できる。わかりやすいのでおすすめ。

CPR(心肺蘇生法)とは?

呼吸が不自然で、心臓が止まっているとみられる人へはCPR(心肺蘇生法)を行う。CPRは、「胸骨圧迫30回」と「人工呼吸2回」を交互に、呼吸が戻るまで、または、救急車が到着するまで繰り返す。大切なテクニックなので、わかりにくい場合は、手順を説明する動画(www.sja.org.uk)を参考にしてほしい。

●胸骨圧迫による心臓マッサージ

※以下は大人対象
①対象者を仰向けにし、傍らに両膝をつく。
②対象者の胸の真ん中(胸骨下部)に片方の手の付け根が当たるように置き、その上にもう片方の手を指を絡めて、しっかりと重ねる。
③肘をまっすぐに伸ばした状態で、体重を使って垂直に5〜6センチ、胸骨を押し下げてから、元に戻る。この動きを、1分間に100〜120回くらいの速さで、30回、繰り返す(映画『サタデー・ナイト・フィーバー』で有名なビージーズのヒット曲『ステイン・アライヴ Stayin’ Alive』 が毎分103ビートであるため、テンポの参考に使われることも多い)。戻るときに手の付け根が対象者の胸から離れないよう注意。胸骨圧迫を30回、繰り返したら人工呼吸へ。

●人工呼吸

※以下は大人対象
①片手の指2本で対象者の顎を引き上げ、気道を確保。
②口の中に邪魔になるものがあれば、排除する。ただし、指でむやみにまさぐったりはしないこと。
③片手の指で対象者の顎を支えたまま、もう片方の手の親指と2指で対象者の鼻をそっとつまんで、息が漏れないようにする。
④息を吸って、対象者の口に1秒間をかけて、ゆっくりと、対象者の胸が少し膨らんで上に上がる程度に、息を吹き込む。このとき、息が外に漏れないよう、対象者の口を自分の口でしっかりと覆う。
⑤胸の位置が戻るよう、力を緩める。2回の吹き込みのあと、胸骨圧迫へ戻る。胸骨圧迫が10秒以上中断されることのないように気をつける。

回復体位への動かし方

対象者を仰向けにして、気道を確保し、呼吸ができていることを確認した後、対象者の足はまっすぐに伸ばす。自分側にある対象者の腕を肘を90度に曲げた状態の『バンザイ』の形にする。自分より奥にある対象者の足をとり、膝を立てた状態にし、その膝と、同じ側の肩を持ち、テコの原理で手前に転がす。そのとき、上になっているほうの手の甲を対象者の頬の下にいれ、枕代わりになるようにする。息がしやすい角度に頭を少し動かし、無理のない、安定した形になっているかを確認する。

半日講習体験レポート
あなたもファーストエイダーに!

いざという場面で少しでも落ち着いて対応できるようになるには、実際にファーストエイドの講習を受けて実習を経験しておくことがおすすめ。
英国ではファーストエイド講習を行う団体のうち、英国赤十字社(British Red Cross)とセント・ジョン・アンビュランス(St John Ambulance、以下SJA)がよく知られている。
SJAは、1887年に英国で設立された、ファーストエイドの普及を目的とするボランティア団体で、世界各国にも支部を持つ。英国内だけで240ヵ所以上で講習を実施しており、毎年40万人以上がSJAの講習で学んでいるという。
SJAの講習は種類も豊富なのだが、その中から今回は、大人から子供、赤ちゃんまでを対象とした応急救護手当てをたった3時間で学べるという一般人向けの基本コース、「Essential first aid all ages」を受講した。

「助けになる人」か「ヤジ馬」か

まずは、事故に遭遇したときの注意点を講習参加者で考えるため、短い映像を見る。場面はゴルフ場で、ある男性が倒れている人を発見。状況と状態を把握し、電話で救急車を呼ぶのだが、そこへゴルフ客が「邪魔だから、早くどいて」と文句をつけてくる…という寸劇だ。
映像の男性は終始、冷静沈着で、自己中心的なゴルフ客のこともうまくあしらっていたが、自分なら慌ててしまってパニックに陥るかもしれないし、そんなときに非協力的な人がいたらキレてしまいそうだ。逆に、もし、乗っている電車が急病人のために長い間止まったら、自分だって「病人はとりあえず移動させて、発車してくれないかな、急いでいるのに!」と心の中でつぶやくかもしれない。講師によれば、救急救命に携わる側からみると、人々は大きく分けて「助けになる人」と「ヤジ馬」の2種類なんだそうだ。前者になれるよう、これから3時間、がんばらなくては。

わかりやすく、楽しいトークで参加者に根気強く指導してくださったトロイ・ベル先生。3時間があっという間に過ぎていった。

頭では理解していても実際は違う…

ファーストエイドの要である救急対応の第一段階、「プライマル・サーベイ」と回復体位(詳細は右ページを参照)を、実習を交えて学ぶ。当然のことながら、読んで理解するのと実際にやってみるのとではかなり勝手が違う。安全確認を行うにしても、助けを呼ぶにしても、緊迫した状況で落ち着いて行えるか、素人には心もとない。動けなくなっている他人の体に触ったり、動かしたり、というのにも、抵抗がある。実際に目の前で急に人が倒れたら、本当に自信を持って助けにいけるだろうか、という不安が消えない。
一方で、講師からは、助ける方もとまどいがあれば、助けられる方にもいろんな事情があることも考慮するように教えられた。見知らぬ人に助けられたり、触られたりすることに抵抗がある人や不安を感じる人もいる。人種のるつぼのロンドンでは、宗教の違いによる事情もあるかもしれない。講習では、「ファーストエイドの知識と居合わせた人の行動する勇気」の重要性が強調される一方で、「できないことやできることの限界も知り、その上で代わりに何ができるかを模索する」ことの大切さも説かれる。例えば、倒れている人に実際に触れることができなくても、質問したり、言葉で誘導したりすることで、救護が可能だ。

想像以上に体力を使う心臓マッサージ

続いて、上半身だけのマネキンを使って、CPRの実習。胸骨圧迫と人工呼吸を学ぶ。脳は3〜4分間の血流の停止で重大な損傷を受けるとされ、救急車が到着するまでの間にCPRが行われたかどうかで、倒れている人のその後が左右されると言われている。1分間遅れるごとに10パーセントも生存率が落ちるという数字もあるらしい。CPRは、呼吸も心臓も止まっていると見られる人の脳への酸素供給を維持するための、大切な救命処置なのだ(CPRの詳細は上ページを参照)。
胸骨圧迫による心臓マッサージでは、とにかくコンスタントに力強く、押し続けなければならないので、体重をうまく使っても、かなりの体力を使う。私など最初の30回でバテバテだ。これはひとりに任せず、居合わせた人たちで交代で行うべきだと身を持って知った。また、こんなに力を入れて押し続けたら骨が折れてしまうのではないかとも心配にもなるが、講師曰く、「酸素を脳に送り続けることが最優先」ということだった。赤ちゃんが対象の場合はもちろん、優しく、指先だけで押す。練習用の赤ちゃんマネキンの胸部も柔らかく作られていて、リアルな練習ができるようになっているのには感心した。 

心臓マッサージは、対象者によって力の加え方がまったく異なる。大人の場合=写真左、想像以上に体力を使った。
そして、おそらく、多くの人が抵抗を感じるであろう人工呼吸。実習ではマネキン相手であり、練習前にマネキンの口元を消毒ワイプで拭きとれるのだが、実際の現場ではそうもいかない。感染症を予防するための人工呼吸用マスクもあるのだが、いざというときにそんなものを持ち合わせているとも思えない。しかし、最近は人工呼吸への抵抗からCPRを避ける人がいることを懸念して、「抵抗がある場合は無理はせず、胸骨圧迫を行うだけでもよい」という指導もされているそうで、少し気が楽になった。
その他、講習では、ノドを詰まらせた人の助け方、狭心症と心筋梗塞の違いとそれぞれの対応、出血の手当てと出血場所による休ませ方の違い、包帯や三角布の使い方などなど、様々な状況を想定した体験ができる。「胸や太もものような平らな部分の止血にはクレジットカードをあてがってから包帯を巻くと良い」といった豆知識、持っていると役に立つファーストエイド・キットの話が聞けたのも、講習ならでは。講師は熱意にあふれていて、最後には、終了時間を過ぎているにもかかわらず、講習内容にはなかったAEDの使い方まで見せてくれた。ファーストエイドに関する本やアプリでは得られない体験ができ、自信もつくので、是非受講してみてはいかがだろうか。
今回受講したコース、セント・ジョン・アンビュランスの「Essential first aid all ages」は、オンラインから予約可能。メリルボンやロンドン・ブリッジなどで定期的に実施されている。30ポンド(VAT込み)。詳しくはwww.sja.org.ukでご確認を。

週刊ジャーニー No.918(2016年2月4日)掲載