ニューヨーク・メッツ対フィラデルフィア・フィリーズ
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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

何ゆえ、エッグ・ベネディクトは
誕生いたしましたの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、いかがお過ごしでしょうか? あと一週間ほどで9月、英国では新学期がスタートする季節となります。わたくしも在英4年目に入りますので、しっかりと先を見据えつつ、後悔のない英国生活を送りたいと思っております。

さて、本日も新たに知りました事柄についてご報告いたしますね。

先週末、ピカデリーにあるレストランで友人と一緒にブランチをいただきました。わたくしの大好きな卵料理「エッグ・ベネディクト」が大変美味しいと定評のあるレストランだったのですが、本当に期待を裏切らない美味しさでとても幸せな気持ちになりました。友人が注文していた、ブルーベリーとクリームがたっぷりと飾られた3枚重ねのパンケーキにも心惹かれましたので、また近々再訪しようと計画している次第です。

それにいたしましても、このエッグ・ベネディクトという朝食メニュー、英国では近年定着したものなのだそうですけれど、どちらの発祥のお料理なのでしょう? また「ベネディクト」とは一体どんな意味なのでしょうか。気になりましたので、調べてみることにいたしました。

いくつか資料をあたりましたところ、どうやらエッグ・ベネディクトはニューヨーク生まれの朝食であることが判明いたしました。起源については諸説あるようですが、最初にその名が世に登場したのは1860年代。当時、人気を博していたニューヨークの高級レストラン「Delmonico's」の常連客のために、同店のシェフが考案した一品だったとか。

常連客であるご夫妻は毎週末、このレストランで朝食を召し上がっていたそうですが、ある日、ご夫人が「何か新しいメニューはないのかしら? いつも同じお料理ばかりで飽きてしまったわ…」とつぶやいたそうです。これを耳にしたシェフは、彼女の好みにあわせた新しい朝食メニューを考えることにしました。そうして誕生したのが、エッグ・ベネディクトです。半分にスライス&トーストしたイングリッシュ・マフィンの上に、厚いハムとポーチトエッグをのせ、オランデーズソース(レモン果汁、バター、卵黄でつくったソース)をかけるという、女性でも食べやすいシンプルなものでした。このメニューはご夫人の名前にちなんで「Eggs à la Benedick」と名付けられ(ルグラン・ベネディクトさんというお名前だったそうです)、それがやがて現在の「Eggs Benedict」に変わったとのこと。同店のシェフは1894年にレシピ本を出版、その中に載っていたエッグ・ベネディクトのレシピが少しずつ世界中に広まっていったようでした。

その後、様々な種類が生まれ、たとえばハムやベーコンの代わりにほうれん草をのせたものを「エッグ・フロレンティーン」(フィレンツェ風)、同じくハムやベーコンの代わりにスモークサーモンをのせたものを「エッグ・ロワイヤル」(王朝風)と呼ぶそうです。

何やらまた、エッグ・ベネディクトが食べたくなってきてしまいました…。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成29年8月21日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の26歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年11ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

週刊ジャーニー No.998(2017年8月24日)掲載

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