■ 英国人が愛する趣味のひとつ、ガーデニング。「世界でもっとも花が好きな国民」とも言われるだけに、部屋に花を飾るのも、花を贈るのも、花盛りの公園を散歩するのも大好き。今年は例年よりも全体的に開花が早く、藤やシャクナゲは終わりつつあり、イングランドの国花であるバラが間もなく見頃を迎えそう。そんな今回は、花真っ盛りのシーズンを満喫できるロンドン近郊のフラワーショーを紹介する。
●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部
英国では5~7月にかけて、英王室主催の競馬「ロイヤル・アスコット」、テニスの「ウィンブルドン選手権」、クラシック音楽の祭典「プロムズ」といった華やかなイベントが次々と開催され、1年でもっとも賑やかな「社交シーズン」を迎える。この約2ヵ月にわたる期間は「ザ・シーズン(The Season)」と呼ばれており、その幕開けを飾るのが毎年5月下旬に開かれる「チェルシー・フラワーショー」だ。
チェルシー・フラワーショーは英国最古とされるフラワーショーのひとつで、起源は1833年にさかのぼる。
陶磁器メーカー「ウェッジウッド」の創始者ジョサイア・ウェッジウッドの息子ジョンが、植民地からもたらされる様々な植物を英国で育てるために、1804年に王立園芸協会(Royal Horticultural Society/RHS)を設立。その園芸協会主催で、1833年に花の品評会「The Flower Show Chiswick」が初開催されたのが始まりである。
やがてガーデニング・ブームが到来すると、花や植物自体よりも「都会におけるガーデン・デザイン」を競うものへと趣旨が変化。しかし、名称は当初のものがそのまま引き継がれたため、「フラワーショー」とは言っても、今は主にモデルガーデンを楽しむイベントとなっている。
とはいえ、RHS主催のものはもちろん、どこの会場内にもガーデンセンターが併設され、色々な苗木や鉢植え、種、球根のほか、最終日には切り花も格安で大放出される。ぜひ今年は足を運んでみては?
RHS Chelsea Flower Show チェルシー・フラワーショー
5月21日(火)~25日(土)
1913年以降は、チェルシー王立病院で開催されている英国最大級のフラワーショー。RHSのパトロンを務める王室メンバーが、毎年訪れることでも有名。
Chelsea in Bloom チェルシー・イン・ブルーム
5月20日(月)~26日(日)
チェルシー・フラワーショーの期間中、スローン・スクエア駅周辺では店や建物を花で飾るイベントを開催。ベルグレイヴィア一帯でも「Belgravia in Bloom」が見られる。
Blenheim Palace Flower Show ブレナム宮殿 フラワーショー
6月21日(金)~23日(日)
広大な庭園を持つチャーチル元首相が誕生したブレナム宮殿では、バラが盛りの6月中旬頃にフラワーショーを開催。
RHS Hampton Court Palace Garden Festival ハンプトンコート宮殿 ガーデン・フェスティバル
7月2日(火)~7日(日)
ハンプトンコート宮殿の庭園で開かれる、RHS主催のガーデン・フェスティバル。チェルシー・フラワーショーに次ぐ規模を誇る。
RHS Garden Hyde Hall Flower Show ガーデン・ハイドホール・フラワーショー
7月31日(水)~8月4日(日)
RHSが所有する5つのガーデンのうち、ロンドンから車で1時間45分ほどの場所にあるハイドホール・ガーデンでも、フラワーショーを開催。
RHS Garden Wisley Flower Show ガーデン・ウィズリー・フラワーショー
9月3日(火)~8日(日)
RHSが所有するもっとも古いガーデンで、ロンドンから車で1時間弱で行けるウィズリー・ガーデンでは夏の終わりにフラワーショーが開かれる。
世界遺産の王立植物園
Kew Gardens
キュー・ガーデン
世界最大規模の植物園として知られるキュー・ガーデン。中世初期には同地の南側に広がるリッチモンドとともに、一帯は「鹿狩りの名所」として王侯貴族たちのお気に入りの場所だった。しかし17世紀後半、この地に住んでいた貴族がガーデニングに目覚め、庭園づくりに没頭。やがて当時皇太子だったジョージ2世とキャロライン妃夫妻が移り住んだことから、広大な敷地の庭園化が進んだ。歴代君主に受け継がれたものの、ヴィクトリア女王の即位時に王室の手を離れ、植物園として国有化。一般に公開されるようになった。
同所では現在、「黄金の藤」と称えられるキングサリ(写真上)が満開を迎えている。
週刊ジャーニー No.1342(2024年5月16日)掲載