
最近は、コーヒーの人気上昇で紅茶離れがささやかれる英国ですが、スーパーに行くと目移りするほど多種多様の紅茶が並んでいるのは、さすが英国です。
英国で紅茶が飲まれるようになったのは17世紀になってから。ポルトガルやオランダの貿易船が中国からヨーロッパに紅茶を輸入しはじめたのが16世紀ですから、ヨーロッパの中では一足遅れて入ってきたことになります。でも、これほど紅茶が浸透した国はヨーロッパでは英国だけ。それはなぜなのでしょうか。
紅茶が紹介される以前は、アルコールが人々の嗜好品として普及していました。ところが、紅茶が輸入販売されると、健康を促進・維持する高級品として扱われ、特に特権階級の間で紅茶人気が高まっていきました。
その一方、アルコールの売上は落ち込んでいきます。アルコールに課税し、安定した収入を得ていた政府にとっては大打撃です。そこで、紅茶に高い税を課すことにします。苦肉の策で一時期は、119%の税率になったといいますから、政府が紅茶排除に躍起になったことが伺えます。
しかし、政府の思惑とは裏腹に、紅茶はますます希少価値の高い商品となっていき、密輸が横行する事態に発展します。ドーバー海峡の真ん中あたりに停泊した貿易船から、ボートで紅茶を運び込み、教会が隠し場所になったこともあったそうです。
イタチごっこの結果、政府は税金を12.5%にまで下げ事態は収束していきます。その後、それまでは一部の人にしか手の届かなかった商品が、庶民にも行き渡るようになり、健康的な飲み物として愛飲されるようになったのでした。
政府の規制強化の反動によって紅茶人気に拍車がかかり、その後の解禁によって、紅茶は手が届かない物を手に入れられるようになった人々に『ありがたがれ』、紅茶の根強い人気につながったのかもしれません。確かに、アルコールよりは健康的ですしね。
さて、こうして根付いた紅茶文化。数多くのブランドから販売されているので、自分用にあるいはお土産にと迷う人も多いのではないでしょうか。そこで、スーパーで手に入る紅茶から専門店の紅茶まで、そのブランドの魅力と一押し商品をまとめました。
フォートナム&メイソン
Fortnum & Mason

創業は1707年、英王室の御用達としてもお馴染みの老舗ブランド。お茶とともに有名なのがフォートナムズの色「ナイルの水」を基調としたパッケージや缶。お土産にすると喜ばれること間違いなし!
ところであなたは、ティーバッグ派ですか? それとも茶葉派?
ティーバッグの方がマグカップだけで飲めるので便利だけど、時には、茶葉から淹れて風味をより楽しむのもおすすめ。ガラスのティーポットや、ハートやボールの形をしたティー・インフューザー(茶こし器)など、ティータイムを彩ってくれるアイテムもそろってます。
おすすめの茶葉


ハロッズ
Harrods

元々は、紅茶専門でスタートした老舗百貨店のブランド。貴族の嗜好品からようやく一般にも普及が始まったころに店頭営業で紅茶販売を開始。紅茶を飲んだ人々からは「魔法のようなおいしさ」と喜ばれたそうです。
茶葉のブレンドやタイプを番号で管理し、それを商品名とともにパッケージに記しています。気に入ったブレンドを番号で覚えておくと便利ですね。万人に愛されるようにブレンドされた味は、どんなお菓子にでもあうと評判。贈れば喜ばれること間違いなしの大人気の紅茶ブランドです。
おすすめの茶葉

ハロッズ本店にあるジョージアンレストランで提供されている「No.18 Georgian Blend」。アッサム、ダージリン、セイロンがブレンドされ、しっかりとしたコクがあります。午後のひと時にストレートティーでさっぱりと飲んでみては。

トワイニング
Twinings

1706年に世界で初めて紅茶専門店を出した老舗。現在も、ストランド通り216番地で営業を続けています。アルコールが主流だった当時、先駆けて紅茶を提供し、紳士淑女から絶大な人気を誇ったブランドです。
日本では、1965年に輸入が開始され親しまれてきたので、庶民的なブランドというイメージを持つ人も多いと思いますが、アールグレイの名前の元となったグレイ伯爵が好んだのがトワイニングだといわれています。1837年に、紅茶として初めて英国王室御用達に指定されたのもトワイニング。とはいっても、スーパーで手ごろな価格で手に入るので、お土産や日常的に愛飲するのに貴重な存在です。
おすすめの茶葉

そのほか、アールグレイをベースにレモンピールやオレンジピールなどを加味したオリジナル・ブレンドの「Lady Gray」や、アッサムをベースとしたブレンドで、豊かな香りと渋みが魅力の「English Strong Breakfast」 などがあります。
ヨークシャーティー
Yorkshire Tea
1886年、ヨークシャー地方のハロゲイトで創業。以来、3代にわたり受け継がれてきた味は、庶民の強い味方です。
パッケージにはヨークシャーの丘陵地帯が描かれ、中央に赤や緑、青などのラインが入っていて、スーパーでもかなり目立ちます。時々、プロモーションで、山のように商品が積まれていますが、てっぺんに赤いポットの絵が飾られています。ヨークシャティーというと、この赤いポットやマグが広告に良く出てきます。日本でも、ネット販売で手に入るようですが、かなり割高。ちょっとかさ張りますが、80袋入りのほか40袋入りもあるので、お土産に喜ばれるはず。
おすすめの茶葉
赤ラインは、アフリカやインドから取り寄せた茶葉のブレンドで、独特の風味がある、本ブランドのオリジナルの味。英国はミルクティーが主流ですが、コクのある味はミルクとの相性もバッチリです。一方、緑ラインは、「Hard Water」とある通り硬水に対応したもの。カルシウムやマグネシウムが多い硬水は、お茶が濃くでてしまいます。硬水でも、お茶本来の味を楽しんでほしいとの配慮から生まれたのがこの商品です。硬水として知られるロンドンで楽しむのに向いています。ただ、濃い味がお好みならオリジナルもお薦めです。
ほかに、オリジナルの赤ラインより香りが強く、リッチな味が楽しめる「Gold」、カフェイン抜きの「Decafe」もあり。
ウィッタード
Whittard of Chelsea

1886年に創業した老舗の紅茶店。店に試飲コーナーが設けられ、試飲をしたり、自分好みの味をブレンドしたりできる気軽さが人気です。過去には、経営危機に陥り、お店のロゴやパッケージのデザインを改良した経験もあるのだとか。現在は、それが功を奏し、紅茶以外に、マグカップやティーポットも人気です。
おすすめの茶葉

「Whitterd Original」は、アッサムやセイロン、ケニアの茶葉をブレンドした、香りがよく、まろやかな喉ごしのお茶。
Online Journey 関連記事
ウェッジウッド
Wedgwood
1759年創業の陶磁器メーカー。紅茶人気の高まりとともに、ティーポットやティーカップなどを製造するようになった英国の老舗ブランドです。日本でも、ピーターラビットやワイルドストロベリーなどの絵柄のカップやお皿は定番の人気商品。
ウェッジウッドが紅茶販売を始めたのは、1990年代と比較的最近です。紅茶販売においての歴史は浅いですが、陶器と紅茶の関係は切っても切れないもの。紅茶に関しては、クセがなく、飲みやすい正統派の味との定評があります。
おすすめの茶葉

ほかにアッサム、ケニア、セイロンの茶葉をブレンドした「English Breakfast Tea Caddy」、中国茶とセイロンにベルガモットの香りをプラスした「Earl Grey Tea Caddy」もお薦めです。
商品名に「Caddy」があるように、商品はすべて茶葉(Loose tea)。その茶葉の入ったベイビーブルーや濃紺の缶もおしゃれ。ウェッジウッドの品を感じさせる商品です。
PG ティップス
PG Tips
英国で最も愛飲されているといっても過言ではない紅茶ブランドのひとつ。キャラクターのサルや、ピラミッド型のティーバッグ(ピラミッド・バッグ)で、庶民に親しまれています。パッケージに、サルの絵柄が王室御用達風についているのがご愛嬌です。
おすすめの茶葉

以上、7選。まだまだ、ほかにもたくさんの銘柄がありますが、今回は紅茶(Black Tea)をメインにご紹介いたしました。紅茶の味で選ぶもよし、パッケージの可愛さで選ぶもよし。英国旅行のお土産や、日本帰国の際のお土産のご参考にしていただけたら幸いです。(編集部 テンテン)
※情報は2017年11月16日現在。