走って、歩いて、楽しめる! 英国の珍マラソン

 本場・英国で乗馬デビュー!!
新年を迎え、今年の抱負を大きく掲げた人も多いのではないだろうか。
でも「いやまだ…」という人にぜひおすすめしたいのがマラソン!
え? 走るのなんてつまらない!? そんな声にも頷ける。
そこで、今回は一風変わった、おもしろマラソンを紹介する。

●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部

英国では年間を通して、本格的な市民マラソンから、いかにも英国らしいと笑ってしまうユニークな大会まで、趣の異なる『走る』イベントが各種催されている。その中から、42.195キロのフルマラソンにこだわらず、5キロ、10キロの短めのレースを中心に、一風変わった、面白いマラソン大会を集めてみた。 
改めてみてみると、英国にはチャリティー目的の走者が多いことがよくわかる。たとえば毎年4月に行われるロンドン・マラソンは、世界で最も大きいチャリティー・マラソンとしての地位を確実にしており、4万人の出場者のうち4分の3がチャリティー・ランナーと言われている。大会によってチャリティーの仕組みは異なり、収益の一部が特定の団体に寄付される大会もあるが、自分が走ることで家族や友人などのサポーターに寄付を呼びかけて目標額を達成する形が広く採用されている。言ってみれば自分の「趣味」で走ることに対し寄付を集めるというのは、日本人には馴染みがないかもしれない。だがチャリティー文化が根付く英国では一般的に行われていて、日本との違いを感じることができる。
チャリティーなどの大義名分がなくても、単に「楽しい」だけの大会ももちろんある。「走ることの何が楽しいのか」。それは走ってみた人にしかわからないのかもしれないが、騙されたと思って出場してみれば、今年は新境地に到達できるかもしれない!?
参加にあたっては、事前の準備が大事。参加申込み(人気イベントはすぐに定員になることもある)はもちろん、練習も必須。運動不足の人がぶっつけ本番で短めのレースを走って「意外と大丈夫だったよ」という話も耳にする一方、練習しようと思ったら200メートルで息が上がって、足が動かなくなったというのもよくある話。昔取った杵柄が使い物にならないことも、過信することによって健康に悪影響が及ぶこともある。参加を決めたら計画的に体を慣らして、気持ちよく汗を流していただきたい。
3月

ウォーリーの世界が現実に!
Where’s Wally? Fun Run

© National Literacy Trust
英国人イラストレーターのマーティン・ハンドフォード作の大人気絵本『ウォーリーを探せ!』のキャラクター「ウォーリー」に扮して走るチャリティー・ラン。体力に合わせて距離を選べる上、歩いても問題ないので家族や友人と一緒に扮装して参加したい。寄付を集めるための目標金額が掲げられているが、必須ではないので初心者でも参加しやすい。
【開催日】2018年3月18日
【距離】1キロ(12歳未満)、5キロ、10キロ
【開催地】クラパム・コモン
【参加費】大人26ポンド(衣装付)、子供13ポンド(衣装付)
https://literacytrust.org.uk/support-us/fundraising/wheres-wally-fun-run-2018/

4月

奥様運びレースの英国版
UK Wife Carrying Race


時はさかのぼること1800年代。フィンランドのある村では、近隣に住む男が村の娘たちを背負って連れ去るという言い伝えがあった。この話を元に、1992年にフィンランドで始まった「奥様運びレース」の英国版。傾斜や障害物のあるコースを「wife」を抱えて走り抜ける。速くゴールするために数々の抱え方が考案されるなか、定評があるのはワイフを逆さ吊りに背負う「エストニアン」=写真。速さは劣るがユニークと主催者が押すのが、走者の前方で逆さ吊りにするセクシーなポーズ(主催地名にちなみ「ドーキング」と呼ばれる)。アットホームな雰囲気の中、昨年は35組が参加した。
【開催日】2018年4月8日
【距離】380メートル障害
【開催地】イングランド南東部サリー、ドーキング
【参加費】50ポンド
【優勝賞品】奥様の体重分のビール
【最下位】ドッグフード
www.trionium.com/wife

5月

誰もがスーパーヒーローになれる!
Super Hero Run


スーパーマンやバットマンなどに扮して誰もが本物のヒーローになれるチャリティー・ラン。参加費に加えて、寄付達成金額100ポンドを目指して、友人・知人から、あるいはウェブサイトを通して寄付を募る。
レース前には8歳未満の子供による200メートル走もあり。大勢で参加して、レース終了後にはピクニックをして1日を堪能したい。
【開催日】2018年5月13日
【距離】5キロ、10キロ
【開催地】リージェンツ・パーク
【参加費】25ポンド(衣装付)+寄付金達成額100ポンド
www.londonsuperherorun.co.uk

6月

人間と馬、どっちが速い?
Whole Earth Man v Horse

© Peter Barnett
「実際のところ、山を越えるのに馬と人間とどちらが良いのだろう」。
1980年6月、ふたりの男がウェールズのとあるパブでそんな会話をしているのを耳にした店のオーナーが試したことからスタートし、毎年恒例となった「人間vs馬」のレース。
平坦ならば馬の方が速いかもしれないが、障害物が多い自然界となると話は別。コースは人間の不利にならないよう毎年変更が加えられ、接戦が繰り広げられることもある。
馬に負けっぱなしだった人間だが、初開催から25年を迎えた2004年にようやく勝利、3年後の2007年にも馬を負かすことができた。
ウェールズ中部の町を舞台に、ひざの深さほど沼や川、傾斜のある22マイル(約35キロ)を人と馬が駆け抜ける。ランナーとしてはもちろん、騎手としての参加も可能。人間が馬に勝った場合には賞金が支払われ、負けた際には賞金が翌年に持ち越される。2018年の賞金は2500ポンド!
【開催日】2018年6月9日
【距離】22マイル(35キロ)
【開催地】ウェールズ中部スランウルティド・ウェルス(Llanwrtyd Wells)
【参加費】30ポンド~
www.green-events.co.uk/?mvh_main

7月

地球上で最も幸せな5キロ
The Color Run UK


米国で2011年にスタートし、ロンドン、東京など200以上の都市で開催されるカラフルなイベント。「地球上で最も幸せな5キロ」をコンセプトにしたランニング・コースで、カラフルな色のパウダーを全身に浴びながら走ったり、歩いたり、踊ったりしてゴールを目指す。2017年からは「泡ゾーン」が登場し、イベントに彩りを添える。ボランティアとしての参加も可能。
【開催日】2018年7月8日
【距離】5キロ
【開催地】ウェンブリー・パーク
【参加費】未発表
https://thecolorrun.co.uk/locations/london

9月

走る理由は「ビールが好きだから」
Beer Barrel Challenge


1998年1月の寒い夜、とあるパブで男性がお気に入りのビールを飲み干してしまう。もっと飲みたい男が店主に不満をぶつけると、店主は「3マイル離れたパブからビールを樽ごと運んできたら、樽全部を飲ませてやる」と約束する。3マイルといっても高低差は280メートル弱の急勾配。だが、男は地元民をかき集めて見事賭けに勝ち、無事にビールで喉を潤したのだった。これが元になって始まったビア樽運びレース。20年を経た今も変わらず賞品は樽いっぱいのビール。
【開催日】2018年9月8日
【距離】約3マイル(4.8キロ)
【開催地】イングランド中部ピーク・ディストリクト
【参加費】1チーム80ポンド
www.facebook.com/TGKBBC/

9月

1年で自分が最も『輝く』日
Glow in the Park


体中に光るアイテムを身につけて、光と音楽を全身に浴びながら走る、運動と夜遊びが合体したイベント。コース途中に用意された泡ゾーン、ペイント・ゾーンなどで、出場者を楽しませる。
【開催日】2018年9月29日
【距離】5キロ
【開催地】未発表(2017年はケンプトン・パーク)
【参加費】未発表(2017年は16.50ポンド~)
www.glowinthepark.co.uk

12月

誰かを救うサンタになる
London Santa Run / London Santa Dash


サンタクロースの格好で公園を駆け抜ける、英国の冬の風物詩ともいえるチャリティー・ラン。ロンドンでは主に「Santa Run」「Santa Dash」が主催されている。寄付目標額は主催者によって異なる。
【開催日】2018年12月1週目の週末
【距離】5キロ、10キロ
【開催地】ロンドン各地
www.londonsantarun.co.uk
www.gosh.org
番外編

給水はフランスの美酒&美食
Medoc Marathon

© Yves Mainguy
赤ワインの名産地、フランス・ボルドーのメドック地区で開催される、スポーツとお祭り、食文化が融合した大人気のマラソン大会。美しいぶどう畑に囲まれたコース上には20ヵ所以上の給水ポイントが設置され、そこで振る舞われるのはシャトー(ワイン醸造所)自慢のワイン! 美酒を堪能しながら完走を目指す。ゴール近くなると、牡蠣やステーキなども提供される。参加者のほとんどはド派手な仮装をして挑むことから、当日はお祭りさながら! 34回目を迎える2018年の仮装テーマは「アミューズメント・パーク」。距離は42.195キロなので、運動不足の人はしっかりと準備の上、挑みたい。参加受付は3月から!
【開催日】2018年9月8日
【距離】42.195キロ
【開催地】フランス・ボルドー、メドック
【参加費】87ユーロ~
【条件】健康診断書の提出必須
www.marathondumedoc.com

体験者に聞くメドック体験談


■ 昨年のメドック・マラソンに出場したロンドン在住のSさん(フルマラソン3回目・男)とEさん(フルマラソン2回目・女)、そして応援団として現地に足を運んだHさん。大会の心得について伺った。

お祭りとはいえ、マラソンはマラソン。準備は大変なのだろうか。「アルコールを飲みながら走る練習をする人もいるようですが、僕は大会3ヵ月前から週1、2回10キロ、月1回20キロ、直前に30キロを走って準備しました」とSさん。一方のEさんは、「毎月100キロ走ることを目標に練習していましたが、直前は忙しくて走れず、不安でした」と話す。
9000人近い参加者の中には大掛かりな仮装の人も見られ、レース前半の混雑は必至。「最初の10キロは人が多くて、自分のペースで走れなかったのがつらかった。結局、足切り時間(6時間半)ギリギリを走っていました」とEさんは話す。
通常のマラソンと違い、完走や記録だけが目標とはならない。Sさんが掲げたのは、「完走、完食、完飲」。常連参加者の中には、お気に入りのシャトーに狙いを定めて立ち寄る人もいるが、Sさんは「すべて食べること、すべて飲むこと」を目標に、見事制覇した。そう話すSさんの笑顔がまぶしい!
気になる「食」について伺ったところ、ふたりが語気を強めたのがオイスター。「オイスターが出されるシャトーに着くまでに35キロを走っていて、体内の水分や栄養素が奪われていたから、生牡蠣のミネラルが体に染み渡るんです!」とEさん。Sさんも「あんなに美味しいの食べたことない!」と強調する(うらやましい!)。
大会を楽しむ上で最も大切なことは、コスプレ。Eさんは「走りやすさを優先して中途半端な仮装になってしまいました」と後悔する。レース中や給水ポイントで、似た格好の人同士が集まって記念撮影をしたり、互いの衣装をほめあったりするなど、出場者同士の交流もあるのが大会の魅力。Sさんは「恥ずかしがらずに思い切って仮装したほうがいいですよ」とアドバイスする。

応援に行くだけでも楽しい!

ダンスユニット「ベビーメタル」をイメージした仮装で挑んだSさん。
参加したいけど、まったく自信がない…そんな筆者に「走らなくても大丈夫ですよ!」と教えてくれたのが応援団のHさん。ふたりを応援すべく、現地に乗り込み、さてどうやって応援するかと悩んでいたとき、事務局の人から自転車に乗って回れることを知らされた。「最初のシャトーの近くにあるレンタル所で自転車を借り、ランナー専用のコースと自転車専用のコースがそれぞれ記されたマップを受け取って、それを元に走りました」。時には、ランナーが去った後にシャトーにお邪魔してワインをおすそ分けしてもらったとご満悦だ。
最初の方はランナーのコースと併走していたが、途中からは道が分かれてしまい、応援できる場所が限られていたという。「ふたりがいつ通るかが分からないんですよ。すでに通り過ぎたのかもしれないし、まだかもしれない。本当に困りました。次回はGPSをつけて走らせたい(笑)」と話す。
大会を楽しむためには応援者も仮装するのがおすすめ。参加している感覚を味わえる上、世界中のランナーとの交流も深まるのだそう。体力のある友人に走ってもらい、応援として『参加』するのもひとつの方法かも!?

週刊ジャーニー No.1016(2018年1月4日)掲載