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2014年5月29日

●Great Britons●取材・執筆/佐々木敦子、本誌編集部

 

下町生まれの激情型
国民画家 ターナー
Joseph Mallord William Turner



「ディエップの港」(1825年)テート・ブリテン所蔵。

「英国を代表する画家」というと、
まずその筆頭に名があがるターナー(1775~1851)。
しかし、「モヤモヤした風景画」を描く画家であるということ以外に、
私たちはターナーについてどの程度知っているだろうか。
床屋の息子としてコベント・ガーデンに生まれた生粋の下町っ子で、
身なりに構わず気取りとは無縁だったターナー。
寡黙でぶっきらぼうだが子供にやさしく、進取の気性にも富んでいたという、
この国民画家の知られざる素顔とその作品に迫ってみたい。

【参考資料】『Turner』Peter Ackroyd著、Vintage Books 、『Turner』 Barry Venning著、Phaidonほか

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ロンドン東京プロパティ
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Dr Ito Clinic
早稲田アカデミー
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JOBAロンドン校
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「自画像」(1799年)テート・ブリテン所蔵。

 

19世紀のダミアン・ハーストだった!?

 

 テート・ブリテンを舞台に、毎年秋から冬にかけて開催されるターナー賞(Turner Prize)展。英現代アート界において最も権威のある美術賞の一つといわれるターナー賞は、50歳以下の英国人もしくは英国在住の卓逸したアーティストに対して贈られる賞だが、同展に出品されるノミネート作品は、ダミアン・ハーストによるホルマリン漬けの牛の作品、トレーシー・エミンの避妊具やタバコ、日用品が散乱しただらしない自分のベッドなど、ショッキングな作品であることが多い(次頁のコラム参照)。なぜこのような過激な作品が選ばれる賞に、19世紀の風景画家ターナーの名が冠されているのだろうか。
ターナーが活躍したのは、英国の産業革命期。国外ではフランス革命などが起き、世界中が新しい時代に向かってうねりをあげて進んでいる時期だった。新しい技術や科学が次々に生まれ、親の世代には分からない思想や価値観が広まっていく、そんな時代の英国芸術、特に絵画の世界はどんな状況だったのか。
それまでの西洋絵画では、神話、聖書のエピソード、歴史上の大事件や偉人などをテーマとした歴史画が上位におかれ、「風景」は歴史画などの背景としての意味しか持っていなかった。ところが18世紀後半から19世紀になると、ヨーロッパ大陸へのグランド・ツアー(長期旅行)が定着し、また変化の激しい世の中の移り変わりを描き留めたいという要求もあったのか、風景をメインに描く人々が現れる。風景画というジャンルが英国で市民権を得るのはこの時代で、ターナーはその初期の一人である。
だがそれだけでなく、ターナーの画風の変化を見ると、まるで100年分の美術史の変遷を一人だけ数年で駆け抜けてしまったように思える。同時代の人々から「描きかけ?」「スキャンダラス」「訳がわからない」「石鹸水で描いたんじゃないか?」などと揶揄されたり、酷評されたりしたターナーの作品が当時いかに革新的だったかは、彼と同世代の風景画家ジョン・コンスタブル(1776~1837)の牧歌的な作品と比べてみると、一目瞭然だろう(後述のコラム参照)。ターナーは、モネなどに代表されるフランス印象派を30年近く先取りしていたばかりでなく、作品によっては1960年代の米国の抽象表現主義作家、マーク・ロスコの作品を彷彿とさせるものすらある。毎年、作品のあまりの奇想天外さに物議をかもすターナー賞であるが、「新たな才能ある芸術家の作品を祝福する」「ビジュアル・アートの分野での新たな動きに注目する」ことに主眼がおかれた同賞が、ターナーの名を冠するのも不思議なことではく、むしろうまく名付けたといえるだろう。
しかしながら、ターナーも最初から「スキャンダラス」な作品を描いた訳ではない。ターナーがどのように後世に残るアーティストとなったかを、彼の生誕時まで時計の針を戻して見ていこう。

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ちょっとだけ紹介! ターナー賞 過去の受賞・ノミネート作品
■今年のターナー賞展は、テート・ブリテンにて9月30日~2015年1月4日まで開催予定。
1995年受賞
ダミアン・ハースト
「Mother and Child, Divided」
1999年ノミネート
(受賞作家はスティーヴ・マックイーン)
トレイシー・エミン
「My Bed」
2003年受賞
女装アーティスト
グレイソン・ペリー
Grayson Perry at the 2003 Turner Prize reception, 2003 Tate Britain