【編集部員の体験談】ロンドン人情物語…バスで落としたスマホが奇跡の『生還』!!

先日、ナイトバスで帰路についた時のこと。オックスフォード・サーカスから、自宅のあるシェパーズ・ブッシュまで、いつもの94番バスに乗り込んだ。まだ地下鉄も走っているぎりぎりの時間だったからかバス内は空いていた。
疲れていたので、これは爆睡しそうという予感があり、スマホのアラームをセット。間もなく意識は夢の中へと消えていった。
はっと目が覚めると、見覚えのある風景!アラームが鳴る前にバスは、筆者が降りるべきバス停に到着したのだった。あわてて降り、「あーよかった、乗り過ごさなくて」と自宅に向かった。この時は、その10分後に自分が大パニックになるなど露ほども思っていなかったのだ。

帰宅し、寝る前にスマホの充電しなきゃ、とバッグの中を探したが、スマホがない! 帰宅後にいつもと違う行動を取っていないかと、じっくりふり返ったが思い当たることは皆無。まずい…。
バス停であわてて立ち上がった時に、スマホを落としたのか―。本当に自宅のどこにもないのか、固定電話から自分のスマホに電話をかけてみた。呼び出し音は鳴っているが、自宅の中にはただ静寂が広がるのみ。落とした、なくした!
どうする?交通局の遺失物取扱所に連絡しようにも、この時間、対応してくれる人がいるわけがない。頭の中で激しい自問自答、自責が繰り広げられた。
その時だ、固定電話が鳴った。
受話器に飛びついた。「ハロー?」
電話の相手は言った。「ぼく、バスドライバーなんだけど、君、スマホを落とした?」
「私です、私のです!」。声が興奮しているのが自分でも分かった。
「君、どこで降りたの?」
「シェパーズ・ブッシュの駅前です」
「マクドナルド近くのバス停、分かる?今から15分後くらいに、そこを通るから待ってて。少し遅れるかもしれないけど」
「そんなこと平気です。待ってます、待ってます!」
バスの車体に広告がついていたら、それが目印になるかもしれないと思い、とっさにたずねた。
「どんな車体ですか」
「赤だよ」
ロンドンのバスは赤いと決まっている。自分の質問が間抜けに響いたと思うと恥ずかしくなったが、それよりも興奮のほうが勝っていた。
すぐに指定されたバス停に向かった。
ちょうど15分ほどたったころ、1台の94番が近づいてきた。ヘッドライトをチカチカさせ、合図をしてくれている。
筆者は思わず手をふった。
バスが停車した。数人乗りこんだ後、筆者は運転席へと向かった。ドライバーが運転席の透明のドアを開けながら、満面の笑みを浮かべた。手には、筆者のスマホがあった。
「しっかりポケットに入れとかないとダメだよ」
お礼に、家にあったチョコの小箱を渡そうとしたが、最初は「いやいや」と断られた。「そういわずに」と引き下がらずに差し出すと、やっと受け取ってくれたのだった。
「本当に本当に有難うございました」
握手をしてから、深々と頭を下げて、バスを降りた。
走り去る94番を見送りながら、涙が出た。連日、殺人や傷害事件のニュースが流れるロンドンだけど、まだまだ捨てたもんじゃない。また明日もがんばろう!そう思えた夜だった。
(編集部 I)

By 週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)