
1920〜50年代、ココ・シャネル最大のライバルとして名を馳せたスキャパレリ。かつて2人は互いを認め合うことはせず、シャネルはスキャパレリのことを「服を作っているあのイタリア人アーティスト」と呼んでデザイナーと認めず、一方のスキャパレリは、孤児院育ちでお針子から叩き上げで成功したシャネルのことを「あのお針子」と皮肉を込めて呼んだという。
確かに、「ドレスはただの布ではない。自分を表現するためのキャンバスである」と語った彼女の作品は、奇想天外で美しく、挑発的でアーティスティックなものばかりだ。
パリのサロンが芸術家たちで溢れかえっていた当時、彼女はサルバドール・ダリやジャン・コクトーらと深く交流した。彼らと共に作り上げた、シュルレアリスム(超現実主義)の香るコラボドレスも今回の見どころのひとつだ。
ファッションに関する正式な訓練を受けていなかったにもかかわらず、トップデザイナーとして時代を牽引したスキャパレリだったが、1954年に自らメゾンを閉鎖。その名は長らく伝説的なものになっていたが、2014年にメゾンが復活、2019年にダニエル・ローズベリーがクリエイティブ・ディレクターに就任すると、クチュール・ブランドとして鮮烈な再飛躍を遂げた。
ローズベリーの手によりスキャパレリの芸術性溢れるデザインを過去の伝説から現代のシーンへと継承し、進化させたドレスたちも多数展示されている。どの衣装を見ても、正直なところ、一般人が着こなせる気は全くせず、自分を当てはめる隙すら与えてくれないが、それもそのはず、ローズベリーによるそれらの衣装の数々は、今やハリウッドのレッドカーペットの常連。レディー・ガガやビヨンセ、アリアナ・グランデといった超A級スターたちが身にまとう逸品だ。
美しさへの感動と驚き。ファッションの枠を飛び越えた芸術的な世界をぜひ会場で体感してほしい。



Elsa Schiaparelli

1890年:ローマの貴族階級の学者一家に誕生。
1914年:ロンドンで結婚。
1916年:ニューヨークへ移住。
1920年:娘が誕生。直後に夫が失踪し、極貧生活へ。
1922年:パリへ移住。伝説のデザイナー、ポール・ポワレと出会う。
1927年:「だまし絵セーター」を発表し、デザイナーとしてデビュー。
1935年:パリに店を構える。
1954年:時代の変化を感じ、メゾンを閉鎖して引退。
1973年:パリにて83歳で死去。
Schiaparelli by Daniel Roseberry
ダニエル・ローズベリーは、スキャパレリのDNAである「アートへの挑戦」を21世紀のポップカルチャーに見事に融合させ、眠っていた伝説のブランド「スキャパレり」を現代的アートブランドへと復活させた立役者。ハリウッドのレッドカーペットで彼のクチュールドレスは大人気。



Schiaparelli: Fashion Becomes Art

8月23日(日)まで
V&A South Kensington
Cromwell Rd, SW7 2RL
月~日:午前10時~午後5時45分
金:午前10時~午後10時
チケット:平日£28 /週末£30
www.vam.ac.uk
週刊ジャーニー No.1441(2026年4月23日)掲載















