デイヴィッド・ホックニー: 「ノルマンディーの1年」と絵画にまつわるその他の考察

David Hockney: A Year in Normandie and Some Other Thoughts about Painting, installation view, Serpentine North, 2026 © David Hockney. Photo: George Darrell
■ケンジントン・ガーデンズのサーペンタイン・ノースで、英国民に愛される現代画家、デヴィッド・ホックニーのエキシビションが開幕した。ホックニーのまなざしを通したノルマンディーの四季をたどってきた。(文・ネイサン弘子)

真っ暗な回廊に浮かび上がるようにぐるりと展示された風景画は、本展のタイトル通り、フランスのノルマンディーの移り変わる四季を描いた大作だ。世界が門扉を閉じた2020年~2021年のコロナ禍、ホックニーはノルマンディーに新しく構えたスタジオに滞在した。ホックニーは外に出て、刻々と変化する自然の営みを描き始めた。生命が躍動する春、生き生きとした夏、真っ赤に燃える秋、静けさの冬――。絶えず変化する光と空気を捉え、iPadというデジタルツールを用いて、その場で描き留める。かつて「春の生命力は世界最高のショーだ」と語ったホックニー。繰り返し誕生する生命のエネルギーが、その筆にも本人が気づかぬうちに注がれたのではないかと思う。

『ノルマンディーの1年』は、11世紀のバイユー・タペストリーへのオマージュでもある。バイユー・タペストリーは、1066年のノルマン征服を物語る、全長約70メートルの刺繍画で、ホックニーは幼い頃からこの刺繍に魅了され、その形式や時間の経過を描く手法が、本作に影響を与えたという。もう一つのインスピレーションの源は14世紀の中国の巻物であり、風景の中を歩いているような体験を呼び起こす力に魅了されたという。まさに回廊をぐるりと歩きながら鑑賞する本作は、ノルマンディーのそよ風を頬に受け、花や果実の香りを嗅ぎ、落ち葉を踏みしめながら、風景の中を歩いているような感覚に包まれる。

回廊の中心にある2つのギャラリーには、新作の静物画と肖像画10点も展示されているのでお見逃しなく。

TK Trading
Centre People
ロンドン東京プロパティ
Dr Ito Clinic
早稲田アカデミー
サカイ引越センター
JOBAロンドン校
Koyanagi
5点の静物画と、家族や介護スタッフを含む身近な人々を描いた5点の肖像画からなる新作は、いずれもギンガムチェックのテーブルクロスが舞台だ。ノルマンディーの自然と人影のない静けさに癒されたと同時に、作者の身近な人々のまなざしと、彼らを描こうとするホックニーのまなざしを想像して、ほっとする感覚になった。

David Hockney

David Hockney, London, 2023 © David Hockney Photo Credit: Jean-Pierre Gonçalves de Lima

1937年生まれ、88歳。ウェスト・ヨークシャー、ブラッドフォード生まれ。1960年代のポップアート運動を牽引した英国を代表する現代アーティスト。カラフルで平面的なスタイルで知られるペインティングだけでなく、写真コラージュや、デジタルメディアを駆使して絵を描くなど、常に新しい表現に挑戦し続けている。



David Hockney:
A Year In Normandie And Some Other Thoughts About Painting

8月23日(日)まで
Serpentine North

West Carriage Drive, W2 2AR
入場無料※予約推奨
www.serpentinegalleries.org


週刊ジャーニー No.1437(2026年3月26日)掲載

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