Yin Xiuzhen: Heart to Heart 尹秀珍:ハート・トゥ・ハート

ギャラリーの下階に入ると、古布をつなぎ合わせた巨大な飛行機が頭上にぶら下がり、空港の荷物受け取り所を模したターンテーブルには、スーツケースの中に一針一針縫い込まれた都市のジオラマ、尹秀珍のシリーズ作品《Portable City》が並ぶ。作品に使用された洋服はその都市の住民から寄付されたもので、人々と都市の記憶や魂が込められているように感じられる。これは彼女の全ての作品に共通するテーマだ。

本展は、30年以上にわたる制作活動を振り返り、代表作から新作まで、尹秀珍の制作の軌跡を紹介する、英国初の大規模回顧展だ。

Chiharu Shiota: Threads of Life 塩田千春:スレッズ・オブ・ライフ

一方、上階は圧倒的な塩田ワールド。新作の大型彫刻やドローイング、初期のパフォーマンス映像、写真とともに、アーティストを象徴する代表作が展示されている。
フロア全体に床から天井まで張り巡らされた真っ赤な糸に無数の鍵がぶらさがった「Threads of Life」(写真上)、赤と対照的な黒の部屋「During Sleep」(写真下)では、まるで人と人をつなぐ見えない赤い糸の中に没入し、黒の寝室で夢と現実の狭間に身を置く――。そんな非現実的な感覚に陥った。

2人のアーティストが紡いだ個々の記憶と想いが、鑑賞者の記憶と想いを掘り起こす――。そんな心を動かされるエキシビションだった。お見逃しなく。(文・ネイサン弘子)
5月3日(日)まで
Hayward Gallery
Southbank Centre, Belvedere Rd, SE1 8XX
チケット:£19
www.southbankcentre.co.uk
週刊ジャーニー No.1435(2026年3月12日)掲載















