大英博物館 SAMURAI展

■ 昨年の広重展に続き、日本関連の特別展が大英博物館で開幕した。今回のテーマは「サムライ」。英国が誇る世界的博物館が、日本のサムライをどこまで深掘りし、どのように紹介しているのか。日本人として誇らしい気持ちを抱きつつ、その内容を目撃してきた。

「サムライ展」と聞けば、甲冑や日本刀といった武具の展示は容易に想像がつく。鍛冶や鉄細工、漆や木工、刺繍や組紐――呆れるほどのこだわりと美意識が凝縮された武具の数々は、期待を裏切らないものだった。それだけでなく、「大英博物館はこんなものまで所蔵しているのか」と感心してしまう書物や絵画、生活道具にいたるまで、テーマごとに分けられたショーケースには、サムライにまつわる多様な展示品が並ぶ。これらを用いて、サムライとは誰なのか、その歴史や精神性、役割や日常生活から、現代社会に与え続ける影響までが丁寧に解説されている。これまで西洋では、ごくごく断片的にしか知られてこなかったサムライの実像を伝えようとする意図が感じられた。

日本人として、ある程度の基礎知識を持ったうえで鑑賞したからだろうか。正直に言えば、サムライに関する知識を大きく更新したというよりも、展示品の芸術性とそのセンス、卓越した技術にただただ見惚れ、何度も感嘆の声を漏らしてしまった。

メディア向けのプレスレビューは3時間に及んだが、時間いっぱい会場を巡り、気づけば最後の数人になるまで滞在していた。「いいものを見させてもらった」という満足感を胸に会場を後にし、出口に併設されたサムライ展特設ショップへ。そこでもまた、サムライにインスパイアされた商品を、まるで展示品の続きのように眺め、最後までしっかりと楽しませてもらった。(写真・文/ネイサン弘子)

河鍋狂斎による政治的風刺画「どふけ百万遍」。幕府と宮廷の異なる派閥を表しているという。
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変わり兜

展示品の中でも特に見応えがあったのが、さまざまな装飾が施された変わり兜。堂々とした存在感を放つ兜は、戦場で高位の武将の所在を際立たせ、敵を威圧すると同時に味方を鼓舞する役割を担っていた。また、仏教や神道から着想を得た飾りには、神仏の加護を願う意味が込められ、身近な自然のモチーフも盛んに取り入れられている。

写真上後列左、写真右:サメの背びれを模した兜。下部には波模様が刻まれている。
写真上後列右:ナスのヘタをかたどった兜は、どこかコミカルな印象。
写真上前列左:サムライの武具によく見られる、刀と龍のモチーフ。
写真上前列右:力強いこぶしには、密教法具である金剛杵(こんごうしょ)が握られている。

世界を魅了するコンテンツ

米FXが製作し、数々の国際的な賞を受賞した「SHOGUN/将軍」や、現在Netflixで人気を集めているアクションドラマ「イクサガミ/Last Samurai Standing」など、サムライが活躍する日本のドラマも紹介されている。

与え続ける影響

サムライ展の最後を締めくくるのは、サムライの持つデザイン性やストーリー性が、現代のアート、映画、漫画、ゲームといったポップカルチャーに与えた影響を紹介するセクションだ。

ユニークでありながら精巧な鎧武者を造形し、時にシュールで、時に可愛らしい独特の世界観を生み出す日本人アーティスト・野口哲哉。本展のために制作された作品「Duck and Man」では、呆けた表情でラバー・ダックに座る武者の姿を通して、ストレスの多い現代社会を生きる大人が、子どものようなシンプルさを切望していることを訴えかけているという。

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SAMURAI

5月4日(月)まで
The British Museum

Great Russell Street, WC1B 3DG
チケット:一般£23~、16歳以下無料
(チケットを持つ大人同伴の場合)
www.britishmuseum.org


週刊ジャーニー No.1431(2026年2月12日)掲載

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