
■ アイシングたっぷりのケーキやホットドッグ、パイや駄菓子、個人商店のカウンターなど、ノスタルジックな雰囲気の静物画で知られる米国の現代アーティスト、ウェイン・ティーボーの回顧展が、コートールド美術館で開催中だ。英国ではまだ広く知られているとは言いがたいティーボーの魅力が凝縮された展覧会を堪能してきた。
20世紀の米国を代表する、独創的な画家の一人であるティーボー。モノがあふれる戦後米国の豊かな文化を象徴する日常のモチーフを通して、独自の絵画スタイルを築き上げた。
本展では、彼が最も精力的に制作し、その評価を決定づけた1960年代の代表作が勢ぞろい。チェリーパイ、ホットドッグ、キャンディカウンター、ガムボールマシン、ピンボール台などを描いた代表作は見逃せない。
かつて「それぞれの時代には、その時代の静物画がある」と語ったティーボーは、先人たちの伝統を受け継ぎながら、自身の時代の米国的な日用品を現代美術の重要な題材にして、ポップでいて詩情溢れるそれまでに見たことがなかったような静物画を描き、伝統的な静物画というジャンルを現代に蘇らせたと評価された。カラフルで可愛らしく単純に見える彼の作品のその奥には、豊かさや欲望の裏に潜む孤独や郷愁といった感情が織り込まれているように見える。
ティーボーは、誰も目を留めないようなカウンターのガラスケースの中にぽつんと残された一切れのパイに詩情を見出し、ホットドッグや日常使いのマグカップにも描くべき美しさを見出した。その感受性に、アーティストと凡人の違いを大いに感じたエキシビションだった。(文・ネイサン弘子)




Wayne Thiebaud. American Still Life

2026年1月18日まで
The Courtauld Gallery
Somerset House, Strand, WC2R 0RN
チケット代:£18
https://courtauld.ac.uk
週刊ジャーニー No.1419(2025年11月13日)掲載















