
2023年にロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーのリニューアルオープン記念として開催された「ポール・マッカートニー写真展 1963-64~Eyes of the Storm~」に続く今回の写真展は、1963年12月~1964年2月までの3ヵ月の間に、ポール自身が撮影した写真に焦点を当てたもの。
当時のビートルズといえば、1963年4月にファースト・アルバム「Please Please Me」、同年11月に2枚目「With the Beatles」をリリース、秋に初のヘッドライナーとしての全英ツアーを行い、「ビートルマニア」と呼ばれる若い女性ファンの熱狂ぶりが社会現象に。1964年2月には米国に渡り、音楽番組「エド・サリヴァン・ショー」に出演して話題を集めるなど、リヴァプール出身の彼らが世界中で旋風を巻き起こした時代だ。
展示されている作品は、全部で11点。ポールが1963年後半に購入したペンタックス35ミリカメラを使用して、メンバーたちの日常や周囲の様子を撮影した日記のような内容で、半世紀もの間、ネガやコンタクトシートのままで現像されなかった写真をポールの署名付きで展示している。
ロンドンのフィンズベリーパーク・アストリアで行われた「ビートルズ・クリスマスショー」の控室にいるジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、パリ公演中にシャンゼリゼでポーズを取るジョン、ニューヨークに向かうパンナム機内とロンドンの空港で撮影したメンバーとマネージャーのブライアン・エプスタイン、ロードマネージャー兼パーソナル・アシスタントのマル・エヴァンスとニール・アスピノール(後に設立されたビートルズの会社「Apple Corps」の代表)など、被写体は身近な人々が中心。プロのカメラマンが撮影する写真とは異なり、ファインダーを覗くポールに向けて、メンバーたちが気取らない素のままの顔を見せているのが印象的だ。

At London Airport (with Brian Epstein, Mal Evans, and Neil Aspinall) for Pan Am flight 101 to New York City, 7 February 1964, 2025
© Paul McCartney

George, Ringo, and John backstage at The Beatles Christmas Show, Finsbury Park Astoria, London, December 1963, 2025
© Paul McCartney

Self-portrait in my room at the Asher family home, Wimpole Street, London, December 1963, 2025
© Paul McCartney

John on the Champs-Élysées, Paris, 15 January 1964, 2025
© Paul McCartney
ほかにも、ポールが当時交際していたジェーン・アッシャーの自宅で撮影したセルフポートレートや、パリで自分たちの周りに集まるファンやマスコミ、警官をおさめた写真など、熱狂の只中にいたポールが客観的な視点でとらえた作品が並ぶ。社会・文化が大きな変化を遂げた1960年代の前半という、何かが起こる嵐の前夜のような空気感や時代の移り変わりの記録という意味でも、貴重な写真の数々と言えるだろう。
そういえば、ポールの元妻の故リンダ・マッカートニー、娘のメアリー、弟のマイクは、全員が写真家。マッカートニー家一家にとって、「写真」という媒体がクリエイティビティや表現活動に重要な意味を持つものであることがうかがわれる。
入場無料で、買い物や用事の途中でふらりと立ち寄れるのもロンドンならではの贅沢さ。ビートルズのファンならずとも、ぜひオススメしたい。

Paul McCartney
Rearview Mirror: Liverpool–London–Paris
10月4日(土)まで
Gagosian
17–19 Davies St , London W1K 3DE
入場無料/日・月曜休み
https://gagosian.com
週刊ジャーニー No.1410(2025年9月11日)掲載







