自然の中で食べ物探し フォレジング

■ 新型コロナ対策によるレストランの休業や、一時的な混乱によるスーパーでの買占めによって「食」に対する考えを見直す人も少なくない。そんな中、身近な自然から植物を採取して食す人が増えているようだ。

新緑まぶしい5月のある日、家の近所にあるちょっとした森を散歩していると、白い花を採取している女性に遭遇した。彼女が立ち去った後にその花に鼻を近づけてみると、ヨーロッパで古くから風邪に薬効があるハーブとして利用されているエルダーフラワーだった。英国で初めて口にしたあの爽やかな風味を思い出し、筆者も花を採取してコーディアル(シロップ)作りに挑戦してみることにした。仕込んで1日漬け込んだ後、炭酸水で割って飲んでみると、甘く爽やかな香りが口いっぱいに広がり、手間暇かけた分、より美味しい!

砂糖とはちみつを煮溶かした液にレモンとエルダーフラワーを入れて1日漬け込めば、芳醇なエルダーフラワー・コーディアルの出来上がり!

このように自然界に自生する食用可能な植物を採取することを「foraging(フォレジング)」という。森林保護団体「ウッドランド・トラスト」のウェブサイトでは、森を傷つけずにフォレジングする方法や、月別の食用可能な植物を紹介。一方、歴史的名所や景勝地を管理する「ナショナル・トラスト」は、「ナショナル・トラストが管轄するほとんどの場所では個人用に野生の食べ物を採取することをサポートします。無理のない採取は私たちが自然の一部であるということを思い出させてくれるでしょう」とフォレジングへの理解を示した。

塩でも砂糖でも美味しいエルダーフラワーのフリッター。

両団体の『お墨付き』を得た気分で、自作の野草ガイドを手に、後日改めて森を歩いてみると、これまで何となく歩いていた景色が一変。立派なエルダーの木がそこかしこにあることに気づき、まるで宝探しのような気分で散策し、お茶になるネトル(イラクサ)、ワイルド・ローズなど6種類の収穫物を手に、充実した気分で家路についた。

収穫した草花いろいろ

5月17日付の「メトロ」紙(電子版)では、フォレジングが生活の一部であるという2児の母、ジョアンナ・ルミンスカさんを紹介。お気に入りの野草は「ワイルド・ガーリック」で、フォカッチャやピザ、パスタやシチューなどあらゆる料理に使うのだそう。野草料理のインスタグラムを開設する彼女のアカウントには、最近見知らぬ人からのメッセージが急増し、ロックダウン以降フォレジングに興味のある人が増えたと実感しているという。フォレジングを推進する「Totally Wild UK」で講師も務めるジョアンナさんは初心者へのアドバイスとして、まずは見分けやすいタンポポやネトルなどからはじめ、見分けが難しいキノコには手を出さないよう忠告。さらに「フォレジングはスーパーに並ぶよりも時間がかかるかもしれませんが、自然を観察しながらより有意義な時間が過ごせ、リラックスできますよ」と付け加えた。
「Totally Wild UK」のウェブサイトでは英国では嫌われ者の雑草「Japanese knotweed(イタドリ)」の新芽から、「burdock(ゴボウ)」のレシピまで、多様なレシピが紹介されており、驚くと同時にさらにフォレジングに興味が沸き、季節の野草探しにまた森に出かけたくなった。自分で探して食べる自信のない人は、ロックダウン解除後、同団体などが各地で開催するフォレジングの体験コースに参加し、自然の恵みを実感してみては?(写真/文・ネイサン弘子)

週刊ジャーニー No.1139(2020年5月28日)掲載