エコで、コロナで、大盛況!昔ながらのミルクマン

■ エコ意識の高いミレニアム世代が、外出制限下で牛乳だけは切らせたくない人々が、新鮮な牛乳を玄関先まで届けてくれるミルクマンに白羽の矢を立てている。

英国人の生活に最も欠かせないもののひとつである紅茶や毎朝のシリアルに必須の牛乳。牛乳をきらしてしまったときの英国人の焦りぶりを目の当たりにしたことがある読者は多いのではないだろうか。
英国人にとってそれほど重要な牛乳といえば、かつての英国では、瓶がぶつかり合う音を立てながらミルクマンらが早朝に家々を訪れ、軒先まで配達するのが日常の風景だった。ところがスーパーマーケットの台頭や、プラスチック入りの安い牛乳が好まれるようになると、1980年代以降、牛乳配達の需要は減少の一途をたどった。1970年代にはミルク市場のほとんどが配達によって消費されていたが、2013年には全体の5%にも満たなくなってしまったのだそう。
ところが今、新型コロナウイルスの影響による外出制限下でも確実に牛乳を確保しておきたい人の間で需要が増加し、ミルクマンたちが大忙しだ。だが実は、この動きが始まったのは少し前にさかのぼる。環境問題を考慮して、 スーパーで買うプラスチック入りから牛乳配達のガラス瓶牛乳に切り替えたいという、若い世代を中心にした人々からの注文が増加したという。
2018年にいち早くこの現象を報じた「イブニング・スタンダード」紙によると、英国最大の牛乳・食料品の配送会社「Milk & More」と、ロンドン東部と中心部が配達範囲の「Parker Dairies」は共に、2018年初頭からガラス瓶牛乳の配達が急増した。その要因として、2017年10月から放送されたBBCの自然ドキュメンタリー「Blue Planet Ⅱ」が影響しているのではないかと推測されている。両社ともにガラス瓶とプラスチックボトル両方の牛乳を配達販売しているが、「Parker Dairies」の2018年1、2月の新規個人客の95パーセントがガラス瓶を選び、この現象は今も続いているという。
そして現在、新型コロナの影響で再び牛乳配達に切り替える人が急増。「Milk & More」では、外出制限令以降一気に2万5000人も顧客が増加したため、現在の1000人ほどの牛乳配達人では人手が足らず100人の配達人を急募した。
「環境汚染」と「新型ウイルス」という、人類を脅かすこれらの問題が、昔ながらの伝統の復活に一役かった格好だ。今後、朝玄関先に牛乳を取りに行くのが子供の仕事になる、そんな家庭がさらに増えそうだ。(文/ネイサン弘子)

 

週刊ジャーニー No.1137(2020年5月14日)掲載