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体感型エキシビションでゴッホの人生を辿る Meet Vincent van Gogh

■ オランダのヴァン・ゴッホ美術館が主催し、 世界を巡回中のゴッホ展がロンドンにやってきた。ゴッホに会いに、早速、出かけてきた。

今でこそ世界が認める大画家としての地位を獲得したゴッホだが、生前は画家としてなかなか評価されることのない人生を歩んだことは、広く知られている。そんな特異な画家の激動の人生を辿る体感型エキシビションが開催中だ。

会場はサウスバンクに建つナショナル・シアターの裏を通るアッパー・グラウンド沿いに設置された巨大な特設テント。入り口で音声ガイド(英語)を手渡され、いざ、ゴッホに会うべく足を踏み入れる。通路を型作る壁のパネルはそこかしこにゴッホの作品が映し出されており、その前でセルフィーを撮る観光客の姿が多く見られた。会場内はどこで写真を撮ってもSNS映えしそうでさながらセルフィー天国。「SNS映えする写真を撮る」という昨今の旅のトレンドを強く意識した主催者の意図が垣間見える。

画家としてのゴッホをサポートした家族の肖像、生まれ故郷であるオランダ時代の暗い画風、印象派の画家や日本の浮世絵に出会い、大きな影響を受けたパリ時代、明るく乾いた空気感が漂う風景や黄色に魅せられた南フランス時代、やがて精神バランスを大きく崩し、入退院を繰り返した晩年。全行程を通し、ゴッホと最も親密であった弟、テオへの手紙で語られるゴッホ自身の言葉は、どんな解説書よりも画家本人の思考を知ることができる。

Image courtesy of Meet Vincent van Gogh, Photo Luke Walker

そして、壁一面に映し出される麦畑の景色と風の音、触ったり座ったりできる農家やゴッホの部屋、藁を敷き詰めたベンチから漂う乾いた藁の香り、影絵で再現されたゴッホとゴーギャンのアトリエでの口論などから、その時々にゴッホが見た景色、感傷などが五感を通して伝わり、それらが彼の画風にどう影響を与えていったのか、より深く理解できた気がした。旅の最後、これまでなぞってきた彼の濃密な人生から、ゴッホは老齢で亡くなったように感じられたが、弟テオの墓の隣に並んだゴッホの墓標を目にし、37歳で没した事実に改めて驚いた。

今回はテントという会場の特性からオリジナル絵画が展示されていないのが残念だったが、幸い、ロンドンのナショナル・ギャラリーには、ゴッホの代表作「ひまわり」をはじめとする絵画が常設展示されている。ゴッホの人生を辿った後で見る彼の作品はきっと今までよりも深みが増して見えるに違いない。そう感じ、早速ナショナル・ギャラリーへと足を運んだのであった。 (文/ネイサン弘子)

Meet Vincent van Gogh

Upper Ground, SE1 9PP 最寄り駅:Waterloo
※サウスバンク・センター内で開催されていると間違える人も多いそうなのでご注意を。
5月21日まで
チケット: 月~金 16.50ポンド、土日 18.50ポンド
https://meetvincent.com/london

週刊ジャーニー No.1128(2020年3月12日)掲載