ロンドン・シティに復元、古代ローマ ミトラ神殿 London Mithraeum

■ ロンドンの金融街シティに昨年11月、古代ローマ時代の遺跡を展示するスペース「London Mithraeum」がオープンした。ロンドンの原型とされるロンドニウムの一角で、ひそかに営まれた「ミトラ教」の世界をのぞいてみた。

第二次世界大戦の傷跡が残るロンドンで1954年、古代ローマ時代の遺跡が発見された。当初は何のために建てられたものか分からずにいたが、調査が進むにつれ、当時信仰されていた密儀宗教「ミトラ教(Mithraism)」の神殿で、240年頃に建てられたことが判明。ロンドンにおける20世紀最大の発掘とされるこの遺跡の噂は瞬く間に英国中に広がり、3万人が現場に訪れたという。
その後、1962年に都市開発の影響によって一旦解体され、100メートル離れた場所へと移動させられることとなる。ところがその再現方法にいたっては専門家からの批判を集めたという。紆余曲折を経た2010年、情報サービス大手「ブルームバーグ」が発見現場に社屋建設を決めると、この遺跡を元の場所に戻して公開する計画が進行。昨年11月、晴れて一般オープンした。
足を運んでみると、まずは建設中に発掘された1万4000点におよぶ遺物の一部が目に飛び込んできた。木製ドアやナイフ、釘、器、皮の靴底など、1~5世紀頃のロンドナーが使ったという日用品が並んでいる。この地にはかつて川が流れており、湿った土壌によって状態良く保存されたのだそう。
地下へ進むとミトラ教を解説するスペースが広がる。目玉となるミトラ神殿へはここからさらに地下へ。20分毎の入場となるため、展示を見学しながらその時を待つ。そしていよいよ――。
ほんのりと明かりが照らされた神殿は、外の喧騒をよそに静寂に包まれている。周囲に設けられた回廊を歩きながら遺跡を覗き込んでいると、入信者らが祝宴を楽しむような音の演出が始まった。そして光の加減によって、昔あったと推測される柱が目の前に浮かび上がる。さらに牛を生贄にする習慣があったミトラ教の儀式を想像させる声が加わると、ムード満点!
金融街シティの地下で古代ローマ時代のロンドンに思いを馳せてみてはいかがだろうか。(写真・文/西村千秋)

London Mithraeum Bloomberg SPACE
12 Walbrook, London, EC4N 8AA
入場無料(ウェブサイトにて事前予約必須)
www.londonmithraeum.com

写真左:入り口に展示される遺物の数々。用意されたタブレットを使って展示物の背景を知ることができる。全体の所要時間は45分ほどなので、気軽に楽しめる。
同右:地下の展示室ではタッチパネル式で遺跡の詳細が紹介されている。また女優ジョアナ・ラムリーによる音声解説も繰り返し流されている。

週刊ジャーニー No.1023(2018年2月22日)掲載