■野球人気が高いどころか、ほとんど認知すらされていない英国。しかし野球の枠を飛び越え、既に世界的なアスリートとなった怪物「大谷翔平」の存在は英国でも、見て見ぬふりが出来ないほど大きな存在になりつつあるようだ。ポストシーズン開幕直前の4日、英紙「ガーディアン」が大谷翔平を「謙虚で究極の普通の大スターはいかにして野球の大舞台に立ったのか?」というタイトルで大々的に取り上げた。ロサンゼルス在住のクレア・ド・ルーン氏の記事を一部抜粋でお届けする。

ドジャースのレギュラーシーズン最終週、サンディエゴ・パドレスを迎えての大事な一戦。クラブハウス内は緊張の空気に包まれていた。そんな中、長身で、柔らかな髪をなびかせた男が部屋に入ってくる。誰よりも落ち着いており、柔らかな微笑みを浮かべている。そして湯気の立つ一杯の紅茶を手に椅子に腰を下ろす。その落ち着きぶりは驚くべきほどで、彼が歴史を塗り替えた世界的なスターであり、初めてポストシーズンに挑むという事実が到底想像できない。
しかし大谷翔平は普通のスーパースターではない。30歳となった大谷の驚異的な成績はもはや理解しがたいほどだ。大谷がドジャースと結んだ破格の10年7億ドルという契約の初年度は、ケガ人が続出する中で彼がチームをメジャーリーグ最高の成績に導いたことで、まさにその額に見合う活躍を見せた。一方、彼に最も近い人々の話を聞くと、彼をさらに特別な存在にしているのはプレー以外での態度やクラブハウスでの人柄だという。「彼の立ち居振る舞いを見ると、たくさんの注目が集まっていることを彼はわかっているはずなのに、それを全く感じさせない」と語るのはドジャースの三塁コーチ、ディノ・イーベルだ。イーベルはエンゼルス時代の大谷と1年目から一緒におり、今春ドジャースで再会した。大谷について尋ねると彼の顔はパッと明るくなった。そして大谷のことを知る人が必ず口にする「謙虚(humble)」という言葉が出て来る。イーベルは「彼はただ他の選手と同じように過ごしたいんだ。彼は正真の本物で、素晴らしい人間だ」と語った。
数々の記録を驚くほどのペースで打ち立ててきた大谷だが、メディア対応の場では常に日本語を話す。そして野球を超えて彼はセレブリティとしての地位を確立している。彼はとてもハンサムだが、少年のような純粋さを持った魅力がある。ロサンゼルス市議会はドジャース在籍期間中の毎年5月17日を「大谷翔平の日」と決めた。彼はまさに現代の完璧なスーパースターだ。まるでユニフォームを販売するために研究所で作られたかのような存在だ。そして大谷の存在が日本企業のスポンサーを次々とドジャースに引き寄せ、遠征試合や日本語ガイドによる球場ツアーの参加者数が急増したことは言うまでもない。(
)By週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)