■ ロックダウン中も視聴者参加型のアート番組を通して人々を励まし、精力的に活動する英国を代表する現代アーティストが旅し、見つめ、聞き、感じた「現代の米国」を表現したエキシビションが、東ロンドンで開催中。類まれなアーティストは米国をどう受け止めたのか興味に駆られ、出かけてきた。
英国のアートやファッション界に多大な影響を及ぼすアーティストのひとり、グレイソン・ペリー。1960年にエセックスで生まれ、ターナー賞を受賞するなどした彼の作品を直接目にしたことがなくとも、サイケデリックな女装をするアーティストとして認識している読者は多いのではないだろうか。
彼がライフワークとしている、ジェンダーやセクシャリティ、階級や宗教などからなる、人々の「アイデンティティ」を、陶芸や絵、タペストリーや彫刻といった作品で切り込み、風刺の効いた作風で表現するペリーの今回のテーマは「米国」。チャンネル4で9月に放送されたドキュメンタリー番組制作のため、2019年にカスタムバイクにまたがり、米国の3つの地域を巡って出会った人種や生活背景の異なる人々や光景に触発され、今の米国人のアイデンティティ、人種、お金、階級、分裂、格差問題などを表現した。
米国の富と文化の中心地とも言えるマンハッタンを象徴する言葉が散りばめられた巨大タペストリー、フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグが神、または闇を支配する暗黒卿のようにも見える絵画はオンラインによる文化戦争をマッピングしている。ペルシャ風の青と黒のコントラストが美しいツボをよく見ると、まるで心霊写真のように浮き上がっているのは様々な表情のトランプ大統領。イスラムの形、韓国の青磁製品の色、陶磁器の破損を美しく補修する日本の金継ぎ技術を融合したツボでは、現代の米国を形成するアイコンや移民コミュニティを象徴した。