■ 10月29、30日、スペイン南東部バレンシア州などで、集中豪雨による洪水が発生。11月3日の段階で死者数は217人に達し、行方不明者も多数出ている。一体なぜ被害がここまで拡大したのか。BBC(電子版)が伝えた。バレンシア州では乗用車が人を乗せたまま濁流に呑み込まれ、橋が崩壊した。線路や道路が泥やがれきに覆われ、公共交通網が遮断された。スペイン気象庁によると、被災地の一つバレンシア州チバでは10月29日、わずか8時間で1年分に相当する雨が降った。特に被害が甚大だったのは人口2万5000人のパイポルタ(Paiporta)という町で、少なくとも62人の死亡が報告されている。
市民保護機関は、先週火曜日(10月29日)の現地時間20時過ぎにバレンシア市や周辺の住民に緊急警報を発令したが、その時点ではすでに多くの地域で洪水が進行中であり、甚大な被害が発生していた。犠牲者の多くは鉄砲水が襲った際、仕事からの帰宅途中で路上にいた。地下の車庫が特に危険な場所となった。雨が降ると車が水没しないようにと人々は車を出すために車庫に降りていく。それがバレンシア郊外のラ・トーレ地区でも起きたとみられ、住宅ビルの車庫から7人の遺体が見つかった。バレンシアとマドリードを結ぶ高速道路A3では、多くのドライバーが急な増水で車内に閉じ込められた。その他、被害が拡大した要因として、被災地一帯は年間を通じて雨が少ないため、地面が雨水を効率的に吸収できない状態になっていたという。洪水や干ばつの研究者であるパブロ・アスナル氏は「被災地の多くで無計画な開発が進んでおり、多くの場所で透水性のない資材が使われているため、こうした災害の危険性が増している」と警告している。さらに、気候変動も洪水の激しさに寄与した可能性が高い。
洪水から5日が経った11月3日、スペイン国王、フェリペ6世夫妻がパイポルタを慰問した際、怒りに満ちた群衆が夫妻に泥を投げつけ「人殺し」「恥を知れ」と叫ぶ事態が発生した。若い男性は「なぜもっと早く来なかったのか」「この悲劇を防ぐために何もしなかった」と迫った。国王は「怒りといら立ち」は十分理解できると語った。By週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)