■ キスは人間の最も原始的な衝動の一つ。では「なぜ人はキスをするのか?」という問いに、科学者たちは何世紀も興味を持ち続けてきた。そして今、ある研究者が新たな理論を提唱した。デイリー・メール紙(電子版)が報じた。
ウォーリック大学のアドリアーノ・レメイラ教授(進化心理学)は、キスの起源は何百万年も前の毛むくじゃらの人類の祖先にまで遡ると話す。教授は「唇をすぼめてごくわずかに吸う行為は、かつてお互いの毛についたダニやシラミを取り除くためのテクニックだった。それが性的な意味合いを持つようになり、交尾に先立つ行為となったのは数百万年前のこと」と語る。「人はなぜキスをするのか」に関しては、「バクテリアを交換することで免疫システムを強化する」という説から、相手を確認するための「匂い嗅ぎ」という説まで、さまざまな理論が存在する。今回の仮説は「毛づくろいの仕上げ」説で、100年以上に渡って論じられてきたキスの起源説に、新たな進化的起源論を加えるものとなった。
「進化人類学」誌に掲載された新説でレメイラ教授は、キスとは進化の遺物と述べている。論文の中で教授は「数百年前、唇を突き出して軽く吸う動作は寄生虫や古い皮膚、またはゴミを取り除くために不可欠なグルーミングの一種だった。毛むくじゃらの祖先の間で行われていたグルーミングは全身に及び、口と口が触れ合うことで終了したと考えられる。祖先が進化し、毛が少なくなるにつれて、毛づくろいの時間は徐々に短くなっていったのだろう。やがて全身グルーミングは消えたが、口と口が触れ合う最後の段階だけが残った。毛を吸う技術を発達させたのは、樹上から地上に移動した700万年ほど前だろう」と話す。地上には寄生虫が多かったため、グルーミングは衛生上重要だったという。「祖先はその後、200万年から400万年前に濃い体毛を失い、キスをする猿になった」と語る。では、なぜキスが性的な意味合いを持つようになったのか。レメイラ教授は「その正確な理由はまだ推測の域を出ない」と話している。訳していたらキスしたくなってきた。今夜は明太子だ。By週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)