■近年、ベジタリアン料理を取り入れる人が増えている。しかし肉や魚を完全に断つことは、老後の脳に悪影響を及ぼす可能性が示唆され始めている。英各メディアが報じた。米カリフォルニア州ロマリンダ大学ヘルスの科学者たちは、ベジタリアン食の多くが中年期の人々の病気リスクを低下させることを発見した。しかし65歳以上の人ではその逆の結果が見られた。高齢のベジタリアンについては脳卒中や認知症、パーキンソン病などのリスクがわずかに高まっていることが分かった。同時に、食事に(特に脂の乗った)魚を加えるとそのリスクは大幅に減少し、死亡リスクが最も低くなることが明らかになった。
2024年8月に『アメリカ臨床栄養学機関誌(American Journal of Clinical Nutrition)』に掲載されたこの研究では、カナダとアメリカの30歳から85歳まで、8万8000人の食事データを使用。参加者は2002年から2007年の間に募集に応じた人たちで、2015年に追跡調査が行われた。中には1万2500件の死亡例が含まれていた。参加者は食事内容に基づいて「非ベジタリアン」「セミベジタリアン」「ペスコベジタリアン(魚を食べる人)」「ラクト・オボベジタリアン(乳製品と卵を食べる人)」「ヴィーガン」の5つのカテゴリーに分けられた。ベジタリアンの食事をしている人は肉食者と比較して約12%死亡リスクが低いことが分かった。しかし③の魚も食べるベジタリアン(ペスコベジタリアン)は、死亡リスクがさらに18%低下していた。
研究者たちはベジタリアンの食事に乳製品や卵を加えることの利点についても調査。その結果、死亡リスクがさらに15%減少することが分かった。一方で動物性食品を一切食べないヴィーガンの人の死亡リスクは3%しか減少しなかった。さらに、ベジタリアンの食事が中年層に対しては死亡リスクを減少させる効果がある一方で、80歳以上の高齢者には同じような効果が見られなかったことも明らかにされた。
主任研究者ゲイリー・フレーザー教授は、80代のベジタリアンの間で神経系疾患のリスクが高まっていることを指摘する。これは魚を含まないベジタリアンの食事が、脳に有益な脂肪酸のような重要な栄養素が欠けている可能性があるためだと見られている。地中海式の食事は果物や野菜に加え、サーモンやサバのように脂の乗った魚を含むため、抗酸化物質が豊富であることから脳に有益だと考えられている。アルツハイマー協会はこれが脳細胞の損傷を防ぐのに役立つ可能性があると示唆している。それはオメガ3脂肪酸が、細胞膜に存在する脂肪の一種であり、胎児期から成人期に至るまで脳の発達に重要となるからだ。オメガ3は炎症や酸化ストレスを軽減するのに役立つとされており、これらはアルツハイマー病や認知症の発症に関与している。英国栄養士協会は「オメガ3は卵やナッツ、種子、クルミにも含まれているが、脂の乗った魚ほどの量ではない」と指摘している。By週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)