■ オーストラリアでの公務2日目、オーストラリア国会議事堂でのスピーチを終えた直後のチャールズ国王が、無所属の上院議員から「私の王ではない」と罵声を浴びせられる出来事があった。英各メディアが報じた。
罵声を浴びせたリディア・ソープ議員は、先住民族アボリジニ出身。首都キャンベラで行われた式典中に「我々に対するジェノサイド(集団虐殺)を行った」「ここはあなたの土地ではない、あなたは私の王ではない」と約1分間叫び続け、警備員に連行された。式典前に国王と王妃を歓迎したアボリジニの長老アンティー・バイオレット・シェリダン氏は、ソープ議員の抗議を「無礼だ。彼女は私の代弁者ではない」とコメント。式典はこの出来事に言及することなく終了し、国王と王妃は外で待っていた数百人の人々と面会を続けた。
オーストラリアは国王が元首を務める英連邦諸国の一つ。しかし近年、国王をその役割から外すべきという議論が高まっている。ソープ議員はヴィクトリア州選出、無所属の上院議員で、オーストラリア政府と先住民との間の条約締結を長年にわたって提唱し続けている。オーストラリアは旧英植民地の中で唯一そのような条約が存在しない国であり、多くのアボリジニやトレス海峡諸島民は王室に自分たちの主権や土地を譲渡したことはないと強調している。
ソープ議員はBBCに対し、国王に「明確なメッセージ」を送りたかったとし「君主になるということは、その土地の者である必要がある。彼はこの土地の者ではない」と語った。ソープ議員は国王が議会に対し、先住民との平和条約について議論するよう指示する必要性があると話した。「我々はそれをリードし、それを実現できる。私たちはより良い国になることができる。彼が言及した植民地支配者の祖先たちは、集団殺人と集団虐殺に対する責任がある」と強調した。王室のオーストラリア訪問は常に先住民との歴史に触れるものとなるが、ソープ議員の介入により、国王と王妃は予定よりも直接的に向き合うこととなった。By週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)
チャールズ国王が罵声を浴びせられた場面の動画はこちらから。© BBC News Japan