■ドナルド・トランプ前米大統領が13日、東部ペンシルベニア州バトラーで開いた支援者集会で、演説中に銃撃され右耳を負傷した。FBIはトランプ氏を銃撃した男はトーマス・マシュー・クルックス容疑者だと発表した。容疑者はシークレットサービスの狙撃手によって射殺された。この銃撃で元消防士のコーリー・コンパートアさん(50)が家族をかばって被弾し死亡。57歳と74歳の男性が負傷した。クルックス容疑者は身分証明書を携帯していなかったため、捜査当局は射殺された容疑者のDNAと顔認証技術を使って身元を特定したと発表した。
地元紙によるとクルックス容疑者は暗殺未遂現場から約70キロ離れたペンシルベニア州ベセルパークの出身で、2022年に数学と科学で成績優秀者に贈られる500ドルの賞金を得てベセルパーク高校を卒業。一方で服装をばかにされるなど、毎日のようにいじめられていたという。高校卒業後は自宅近くにある介護施設の厨房で働いていた。州の有権者登録記録に共和党支持者として登録。2021年にはリベラル派グループに15ドルを寄付したという記録がある。また、1年ほど前から地元の射撃クラブに所属していたという。
クルックス容疑者はトランプ氏が演説した会場外の建物屋上から殺傷能力が高い半自動式ライフル銃AR―15で発砲。ライフルは容疑者の父親が合法的に購入したものという。警察はクルックス容疑者の自宅と車から爆発物を発見したと語った。
極度の無能か、故意か
15日、米CNNはクルックス容疑者が銃撃のわずか数時間前に50発の弾薬を購入していたと報じた。また、シークレットサービスが演説ステージからわずか130ヤードしか離れていない建物の屋上にさほどの注意を払っていなかったことも分かった。
銃撃発生の数分前、ライフル銃を持ち、梯子を使って屋根の上にのぼるクルックス容疑者の姿が会場外で多くの人に目撃されていた。BBCのインタビューに答えた目撃者の男性は近くにいた警官に「『ライフルを持った男が屋根の上にいる。屋根の上で這いまわっている』と知らせたが警官は何が起きているか全く分かっていない様子だった。なぜトランプ氏を壇上から降ろさないのか不思議で仕方なかった。その後3~4分、納屋の上にいたシークレットサービスがこっちを見ていたからずっと屋根の上を指し続けていたんだ。気がついたら銃声が5発響いた」と、興奮気味に語った。
BBCのリポーターが「発砲したのは確かに屋根の上の男だったか?」と尋ねると男性は間髪入れず「100パーセントだ」と答えた。さらに「もしかしたらシークレットサービスの位置から犯人は見えなかったかもしれない。でもなぜこの屋根の上にシークレットサービスを配置しないんだ? ここはそんな広大な場所じゃないのに」と疑問を投げかけた。イーロン・マスク氏はXで「極度の無能か、故意か。いずれにしてもシークレットサービスの指導者は辞任すべきだ」と投稿した。
警護強化を拒否
シークレットサービスとはアメリカ合衆国大統領の警護を行う執行機関。偽造通貨を取り締まる組織として南北戦争時に発足。そのため以前は財務省の管理下にあったがその後、2001年の同時多発テロ事件以降に設置された国土安全保障省(DHS)に移管された。メキシコとの国境を警備するのも国土安全保障省とされる。
トップはキューバ生まれのユダヤ系米国人で民主党員のアルハンドロ・マヨルカス長官=写真左。ある共和党議員はフォックスニュースに「シークレットサービスによるトランプ氏の警護強化を何度も要請していたが、マヨルカス長官はこれを拒否した」と証言。また、国土安全保障省は昨年、民主党の大統領候補だったロバート・ケネディJrの警護を拒否したとも伝えられている。マヨルカス長官はバイデン大統領の指示でメキシコ国境を開放し、不法移民者や児童誘拐団を招き入れたとして悪名が高い。こうしたシークレットサービスの闇は、大手メディアではほとんど報じられることはない。By週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)
興味のある方は及川幸久氏の「トランプ暗殺未遂」をご覧ください。