夏目漱石も見ていた‼ 女王陛下の国葬

■1901年1月22日、ヴィクトリア女王が81歳で死去した。在位は63年7ヵ月に及び、今月8日に亡くなったエリザベス女王に次ぐ長さだった。同年2月2日に女王の国葬が行われたが、明治の文豪、夏目漱石=写真=はたまたまこの時期ロンドンに国費留学中で、葬列を見る機会に恵まれていた。

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漱石、2月2日の日記に以下のように書き留めている(原文は英語:若干捕捉説明あり)。

「クィーンの葬儀を見ようと朝9時に下宿の大家、ブレットさんと共に出掛け、Oval駅(ノーザンライン)より地下電気機関車にてBank駅に行き、そこから2ペニーチューブ(Two penny Tube=現在のセントラルライン)に乗り換えてマーブルアーチ駅で降りた。ところがすごい人ごみだったので次の駅(ランカスターゲート)で降りようと大家さんが言った。

ハイドパークでは見物のため人々が樹木によじ昇っていてまるで木が実をつけているかのようだった。しばらく歩いて通路に辿り着いたが到底前が見えなかった。するとブレットさんが私のことを肩車してくれた。そうこうしていると葬送の隊列がやって来て胸から上を見ることができた。棺は白と赤の布で覆われていた。棺の後を新国王(エドワード7世)とドイツ皇帝(ヴィルヘルム2世=ヴィクトリア女王の孫)らが従っていた」。

19日に執り行われたエリザベス女王の国葬の様子は世界中にライブ配信された。読者の方々も何らかの方法でご覧になったことだろう。しかし漱石がロンドンにいた頃はテレビがなかったため、国葬の模様を見たければ沿道に駆け付ける以外に方法がなかった。国葬当日はかなり冷え込み、霧が出ていたというが、ハイドパークには十数万人もの人が集まったといわれる。

34歳の漱石が英国人に肩車されて葬列を眺めるというのはなかなか滑稽な風景だが(漱石は身長が158センチ程度だった)、世紀の瞬間を日本から来た若者に一目でも見せてあげようという大家さんの心意気には素直に感謝したい。

漱石は弔意を示すためにこの日の朝、黒いネクタイと手袋を購入した。店の店員が漱石に向かって「新しい世紀は酷く不吉な始まりをしたもんだね」と話したという。英国はこの1年後、日英同盟を締結。ボーア戦争を経て2度の大戦に突き進んで行く。

漱石はこの後、神経衰弱を患い、1902年末に帰国した。現代人と違い動く女王の姿を見たことがなかった漱石にとって、ヴィクトリア女王の死はその後の創作活動にそれほどインパクトを残さなかったようだ。

By 週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)

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