
■正直、ロンドンで暮らすことに大した英語力はいらない。私は、元号を二つ遡り、携帯電話はおろか電話がダイヤル式であった遥か昔にイギリスに住んでいたが、その時とは180度違う便利さに心底驚く。とは言え、海外に暮らす限り、多少の勇気が必要になる場面が多い事も、紛れも無い事実なのである。
2020年のクリスマス前。ロンドンに移り住み1年と少しが経過した頃だった。近所の小さなコーヒーショップ。パンやケーキもあり随分と前から気になっていた。ただ、その店はいつも沢山の常連客が店主と常にお喋りをしている、非常にローカルなお店。英語が流暢ではない私がその輪の中に入るのには、少しの勇気が必要だった。
そんなある日、買い物帰りに前を通ると、3回目のロックダウンが始まったせいなのか、店内には店主のみ。よし、チャンス到来。店に入り品物を選ぶ。そして、もう少しの勇気を出し、店主に話しかけてみた。今日初めて店に入ったこと、ずっと前から入ってみたかったこと、英語に自信がなくて躊躇していたこと…、しばらくお喋りが続いた。
20分くらい話した後だっただろうか、彼はイギリス人らしく私の英語をほめてくれた上で、「いつでも遊びにおいで、何も買わなくて良いよ、英会話の練習においで」と申し出てくれた。そして、喜びを必死で伝える私に、友人になった証と称し、コーヒーをご馳走してくれた。大げさに聞こえるかもしれないが、この出来事はクリスマスプレゼントなのかと思うほど、私には嬉しかったのだ。
コロナ禍で世界中の人達が常に緊張の中にいる日々。この温かな出来事は心を軽くする。親切や優しい言葉がこれほどに人の気持ちを救うのか、ならば自分もそうしようと思わされる。簡単なことのはずなのだ。自分の親や子供が困っている時、そうされたら嬉しいと思うことを他人にすれば良い。コロナ禍であってもなくても、親切は自分が思うよりも人を救い救われる。(在英1年半/40代歯科医師 史さん)
By 週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)
































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