今さら聞きづらい…そもそもウイルスって何?

■ 人類が新型コロナウイルス(Covid-19)の攻撃を受けている。ウイルス自身は攻撃しているつもりなどないのだろうが、彼らが増殖を続ける結果として多くの人が命を落としている。そもそもウイルスとは一体何者なのか。細菌との違いは何か。生物学者や医師、製薬会社等が公開している様々な情報をかき集めてまとめた。可能な限り正確性を追及したつもりだが、もしも事実誤認があれば遠慮なくご指摘いただきたい。

ウイルスは生物じゃない?

「細胞が外界と膜で仕切られている」
「代謝を行う」
「自分のコピーを作る(増殖)」

生物学者はこの3条件を満たすものを生物と定義している。細菌とは目で見ることができない小さな単細胞だが、栄養源があれば自力で増殖していく生物だ。一方、細菌よりも遥かに小さいウイルスは細胞を持たず代謝もしない。DNAやRNAといった核酸(遺伝子)をタンパク質の殻で覆っただけの単純な構造だ。ウイルスを生物と認めない生物学者が多いのは、ウイルスがこのように前述の3条件をほとんど満たしていないためだ。ウイルスが生物でないとするならば今、我々を脅かしているウイルスとは一体何者なのか。

ウイルスは自力で増えることはできない。そのため増殖の唯一の方法は他の生物の細胞に侵入し、その寄生先(宿主)の細胞が持っている酵素を拝借して自分のコピーを製造していく。やがてその細胞を突き破って他の細胞にも入り込むことで増殖していく完全な寄生体だ。つまり他の生物の細胞内に寄生することで「生物的」な存在となる。無害なウイルスであれば問題はないが、ウイルスは時に増殖時にコピーミスを起こすことがある。この時に毒性が強いコピーができてしまい、宿主に牙を剥く存在となることがある。

免疫って、なに?

免疫とは読んで字のごとく疫病などから逃れることを意味する。ウイルスが体内に侵入すると白血球の一種であるマクロファージが真っ先に現場に急行し、侵入したウイルスの情報を収集し、直ちにリンパ球の一種であるT細胞の司令官に伝達する。司令官は配下のキラーT細胞たちに「ウイルスに感染した細胞を探して破壊せよ」と命ずる。同時に司令官は同じくリンパ球の一種であるB細胞に「大至急、抗体を作れ」と命ずる。

命令を受けたB細胞は大急ぎでウイルスを撃退するための抗体を量産する。この抗体がウイルスに感染した細胞を一斉攻撃して破壊、回復へと向かわせる。これがウイルスに感染した人の体内で起っていることだ。このように侵入してきた病原体や異常になった自己の細胞をいち早く感知、排除する仕組みを自然免疫という。

一方、侵入してきた病原体に対して新たに作られた抗体は次に同じウイルスが侵入してくるとそれを記憶している免疫がすぐに反応する。これは獲得免疫と呼ばれる。

英政府が取ってきた戦略が「なるべく多くの人にゆっくり感染させて『集団免疫』を獲得し、ピークを遅らせてNHSの医療崩壊を回避、獲得した免疫で第二波に備え、ワクチンの完成を急ぐ」というものだった。ヒースロー等の各空港で体温チェックすら行われず簡単に入国できたのもこのためと思われる。残念ながら3月中旬以降、英国内でも爆発的な感染拡大が起ってこの戦略は軌道修正を余儀なくされ、一転して外出禁止令が発動された。

3月25日にはチャールズ皇太子が、2日後の27日にはジョンソン首相とハンコック保健相、そして主任医務官まで新型コロナウイルスに感染していることが分かり、英国は動揺した。

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なぜ宿主を殺すの?

せっかく宿主に取り付いて増殖の機会や条件を手に入れたのに、その宿主を死なせてしまうことがあるのはなぜなのだろう。宿主が死んでしまえばウイルス自身もまた死ぬことになるのに。新型コロナウイルスの場合、侵入した宿主に基礎疾患があった場合に重篤化、あるいは死に至ると言われている。致死率がSARSやMERSウイルスと比べて高くないと言われているにも関わらず死者が多数出ているのは、ウイルスにとっても想定外のことなのかもしれない。彼らの狙いは増殖であって、宿主である人類を滅ぼそうとしている訳ではないはずだ。

諸説あるが、宿主が死ぬ前により多く、別の宿主に感染させることができればウイルスの「種」は生き残り、「個」のウイルスは一定の任務を果たしたことになる、という説が有力だ。国家繁栄の前に一兵卒の命が軽視されるのと同様、「種」の繁栄の前に「個」のウイルスの犠牲などは取るに足らないことなのかもしれない。

【参考資料】(株)医学生物学研究所ホームページ/生物の「3つの定義」を知っていますか?(理学博士 更科功著)/National Geographic 他多数

By 週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)