グレンフェル・タワー大火災から、間もなく1年…問われる責任の所在

■2017年6月14日、午前1時前。ロンドン西部ノッティングヒル・ゲートの一角にそびえたつ23階立てのグレンフェル・タワーで小さな火災が発生した。その火が、鎮火までに24時間を要し、72名もの犠牲者を出す大惨事を招くことになるとは、誰が考えただろう。

この大火災から間もなく1年。なぜ多くの命が奪われたのか、原因と責任を問う調査が進んでいる。また、命は助かったものの、文字通り全てを失った人への支援金の全容が明らかになり、驚きをもって受け止められたことを各メディアが報じた。

火災が起こったのは4階16号室。台所のホットポイント社製冷凍冷蔵庫の「中、または周囲から」出火。同フラットの住人は午前0時54分に消防に通報、その5分後には消防隊の第一陣が到着。消火活動が始まったものの、その10分後には火は建物の外壁へと広がったことが分かっている。

生死を分けた『指示』

860万ポンドをかけて2016年に完了した改装工事により、グレンフェル・タワーの外壁には「cladding」と呼ばれる化粧板がほどこされたが、この「cladding」が可燃性であったことをはじめ、複数の条件が重なり、火の回りを異常に早めたと見られている。

さらに、午前2時47分まで解除されなかった、「フラット内で待機(stay put)」という消防局からの指示が、多数の犠牲者を出す事態につながったとされている。この点についても、よりはっきりとしたことが今後報じられることになるはずだ。

この1年、各階で採取された約15トンずつのがれきの山から、2500点にのぼる証拠品が集められた。関係書類は3100万枚に達し、1144名の証人と383社への聞き取り調査が行われたという。

グレンフェル・タワー
3棟分のホテル代

どの数字からも火災規模の大きさがうかがわれ、衝撃を受けるが、焼け出された209世帯に費やされた金額の大きさに、驚きの声が聞かれている。

焼け出された人々のホテル代が、2100万ポンドにも及んでいるためだ。グレンフェル・タワーが1970年代に建設された際の工費は50万ポンド(現在の620万ポンドに相当)。ホテル代は、グレンフェル・タワー級の高層フラットを3棟建築するに十分足りる金額。地元のケンジントン&チェルシー自治体は、被災者支援にさらに800万ポンドを支出。3000万ポンドに近い公的資金が投入されたことになる。国が半分を肩代わりする予定というが、全世帯が落ち着くまでに、さらなる時間と費用がかかる現状も伝えられている。

原因・責任究明の調査は、来年秋までに「答え」を出すことを目指しているとされ、こちらも長丁場。その長さは、72名という多数の犠牲者の無念さ、そして遺族の悲しみの深さと比例しているといえるのかもしれない。

足場が組まれ、外観が白い幕で覆われつつあるグレンフェル・タワー。近くには花や、幼い犠牲者のためのぬいぐるみが今も供えられている。

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by 週刊ジャーニー(Japan Journals Ltd, London)