年金受給者が侵入者を返り討ち-正当防衛から一転、復讐の対象に

■ロンドン南西部に住む70代の男性が4日、自宅に不法侵入した30代の男をスクリュードライバーで刺し殺す事件が発生し、同日、この70代の男性が逮捕された。翌日、男性は釈放されたものの、正当防衛の是非に関して議論が巻き起こっている。英各紙が伝えた。

事件が起こったのは4月4日の深夜1時前。認知症を患う妻とともにロンドン南西部に暮らす年金受給者リチャード・オズボーン・ブルックスさん(78)=写真右上=宅に、男2人が侵入。家の中で不審者を発見したオズボーン・ブルックスさんは、侵入犯の1人ともみ合いになり、犯人が持っていたスクリュードライバーを奪って上半身を刺したと見られている。

刺された侵入犯は家を出たあと、近くの路上で倒れているのを発見され、救急車で病院に搬送されたが午前3時半頃、死亡が確認された。目撃者の話によると、もうひとりの男は怪我を負った相手の救助を一度は試みたものの、すぐにその場を立ち去った。死亡したのはヘンリー・ヴィンセントさん(37)=同右下=で、過去に高齢者に対する詐欺罪で逮捕されたことがあり、一時は最重要指名手配されたこともあるとされる。

同日、オズボーン・ブルックスさんは過失致死容疑で逮捕され、翌日には釈放されたが、正当防衛がどこまで適応されるかといった議論が英国で巻き起こっている。

同様のケースとして1999年8月に、農業を営んでいたトム・マーティンさんが、自宅に侵入した男2人のうち1人を射殺、1人にけがを負わせたとして終身刑が言い渡された事件がある(後に刑は軽減され、3年に減刑)。当時この判決をめぐり、不法侵入者に対する住民の権利に関して一般市民からは非難の声が上がった。

復讐劇の始まり?

オズボーン・ブルックスさんが釈放されたことで事件は終結したかに思われたが、事件から1週間が経過する中で状況は悪化の様相を呈している。

死亡したヴィンセントさんの家族や友人らが、オズボーン・ブルックスさん夫妻に対して復讐を計画しているとする証言もある。ヴィンセントさんの死亡現場には弔問する人が続々と訪れ、事件とは関係ない家屋の塀に花やカードをくくりつけ、さながら聖堂のようになっている。ヴィンセントさんの友人は、オズボーン・ブルックスさん夫妻に復讐をしなければ気持ちが収まらないと話しているという。現在、夫妻は警察の保護下にあり、自宅に戻ることは困難とされる。

by 週刊ジャーニー(Japan Journals Ltd, London)