■ 世界90ヵ国以上でチャリティ活動を行い、70年の活動実績を誇る英国の慈善団体「オックスファム(Oxfam)」。数々の支援を通して現代社会が抱える問題に真摯に取り組んできた団体だが、今月9日、2011年にハイチで起きたオックスファム職員による児童買春問題を英紙「タイムズ」が掲載。国を巻き込んでのスキャンダルに発展している。
さらに、児童買春の事実を隠蔽していたとして、政府から同団体への助成金が打ち切られる危機に面しているという。BBCほか、英各メディアが報じた。
事の発端は、2010年に発生したハイチ地震の支援活動中に派遣された職員たちが起こした児童買春問題。現地へ派遣された幹部職員らが、オックスファム名義で借りた宿舎に複数の売春婦を呼び込み、未成年の少女へ性的虐待を行ったとされる。この事実のみならず、これを長く隠蔽していたことを重く見た政府は、オックスファムへの助成金打ち切りを示唆。当時、この事実を把握していながらも、委員会への報告を怠っていたという最高経営責任者のマーク・ゴールドリング氏は「隠蔽はしていない」と主張し、昨年度は政府から3200万ポンドが拠出された巨額な助成金の打ち切りを阻止すべく、国際開発相のペニー・モーダント氏との会合に近く臨む予定だ。
「オックスファムは明るみになったことを包み隠さず語るべき」と声明を出したチャリティ委員会の調査委員長、ミシェル・ラッセル氏は「オックスファム内で調査が行われた際、児童買春問題の全容は我々には伝えられなかった。もしきちんと報告されていたなら、今とは違う方法で対処していただろう」と、同団体の隠蔽疑惑を裏付ける証言を行った。
元国連高等弁務官のアンドリュー・マクレオド氏は「これは警察に通報されるべき問題だ。もし売春婦が未成年者だった場合は、重大な違法行為でもある」と断じているが、売春婦が未成年の少女だったとされる証拠は、今のところ見つかっていない。ハイチでの児童買春問題に関わった者のうち4人は解雇、3人は既に自主退職となっている。
政府との会合に先立ち、オックスファムは「性的虐待の防止に対する具体策」を発表。性的虐待に関与したことがあるかどうか、職員に対する調査を厳格化し、新入社員への教育を徹底している。その他、早々にコンサルタントへ依頼し、同団体の組織・風土の見直しを図り、改革が進められているという。前職員が行った恥ずべき行為には怒りを禁じえないが、その反省から学び、改善していくといった内容が並べられているが、モーダント氏は「道徳的側面を持ち合わせていない組織は、政府のパートナーにはなりえない」と強硬姿勢を見せている。
by 週刊ジャーニー(Japan Journals Ltd, London)