英国のテレビを日常的に見ているという方はどのくらいいるだろうか。お気に入りの番組が何本もあるという人もいる一方、「どの番組を見ていいかわからない」「英語についていけないかも」と感じている人も多いのでは? 今回は、英国のテレビ番組の中から、比較的理解しやすく面白い番組を厳選してご紹介。社会を映す鏡でもある「テレビ」を通して、英国の姿を改めて見てみよう!
●サバイバー●取材・執筆・写真/名取由恵・本誌編集部
かつてはチャンネル数が少なかった英国のテレビだが、今では多くのデジタル・チャンネルが存在し、その数には圧倒される。それらの中で今回焦点を当てたのは、いわゆる地上波放送局である主要5局の「BBC One」「BBC Two」「ITV」「Channel4」「Channel5」。結論から言うと、英国のテレビ番組は多様性に富んでおり、番組のクオリティもすこぶる高い。「BBC」や「ITV」が制作するドラマは定評があり、世界各国でライセンス放送され、多くの視聴者を魅了している。ほかにも、野生動物や自然、歴史、科学などを取り上げたドキュメンタリー、時事問題や国際情勢を検証するニュース・討論番組、料理、ガーデニング、不動産、紀行、クイズ、コメディ番組など、内容もさまざま。なかには日本では考えられないようなお下劣な番組もあるが、総じて、情報量、知的・教養レベルはかなり高いと言っていいだろう。
こうしたテレビ番組を見ることの良さは、まずひとつ目に英国文化に触れられること。英国に住んでいても、英国のカルチャーを知る機会は意外と少なかったりする。そんなとき、テレビは貴重な情報源だ。2つ目が英語の勉強になること。最近のテレビ受信機や動画配信サービスでは、サブタイトル(英語字幕)をつけることが可能。「こんなときにはこういう表現を使うのか!」などと英語を学ぶのに最適だ。もちろん、自然とリスニングのレッスンができるのは言うまでもない。
そして3つ目が、英国人とのコミュニケーションのきっかけになること。人気番組の放送翌日に、職場や学校ではその話題で持ち切りになることがあるのは日本も英国も同じ。番組を見ているだけで周りとコミュニケーションを図るのに役立つことだろう。
このように、見るだけで英語や文化を理解できてしまうという英国のテレビ番組。PCやスマートフォン、タブレットでも視聴可能なので、ぜひチェックしてみよう。ちなみに、英国でテレビを見る際には、TVライセンス(受信料)が必要になるのをお忘れなく。
【初級】 リアリティ番組&料理番組
渡英したばかりで「何を見ていいのかさっぱりわからない」というあなたへの おすすめは、セレブリティや一般人によるリアリティ番組や料理番組。歌や ダンスのオーディション番組、スポーツや料理の技を競う参加型の番組だったら、英語がよくわからなくても十分に楽しめる。
ジェイミー・オリバーの料理番組Jamie and Jimmy's Friday Night Feast
英国を代表するセレブシェフ、ジェイミー・オリバーが、英エセックスで共に子供時代を過ごしたジミー・ドアティと一緒に週末にぴったりの料理を紹介するシリーズ。2014年にスタートし、現在シリーズ6が放送されている。エセックスにある英国一長い桟橋「サウスエンド・ピア」にカフェを設け、ふたりがゲストを迎えて料理を振る舞う。過去のゲストには、英俳優サイモン・ペグ、水泳選手トム・デイリーなどが登場。飾らないスタイルのジェイミーと農場主のジミーが作り出すリラックスした雰囲気で、「食」の楽しさが伝わってくるのが魅力。ジェイミー・オリバーは、1999年に料理番組『The Naked Chef』でテレビ・デビューして以来、明るく少々豪快な料理スタイルで人気を博し、『Jamie Cooks Italy』『Jamie's Quick & Easy Food』(共にChannel 4)など、自身の名を冠する番組を多数持っている。 料理に関心がある人には、色気たっぷりの料理研究家ナイジェラ・ローソン、シェフのトム・ケリッジ、ヘアリー・バイカーズなどの番組もおすすめ。
ポップスターたちの登竜門X Factor
音楽オーディション系で最も成功したITVの看板番組。2004年にスタートし、レオナ・ルイス、ワン・ダイレクション、オリー・マーズ、アレクサンドラ・バーク、リトル・ミックスなど、数々のアーティストがこの番組から世に送り出されており、英音楽業界への影響力も絶大。各地のオーディションで選ばれた候補者が、観客を前にしたパフォーマンスに挑む。審査員と視聴者による一般投票の結果、毎週失格者が選ばれ、ファイナルで優勝したアーティストがデビューするという流れ。現在の司会者はダーモット・オーリアリー、審査員は英音楽界の仕掛け人、サイモン・カウェル、歌手のロビー・ウィリアムズ、ルイ・トムリンソンほか。一時期は高視聴率を誇っていた同番組だが、ここ数年はマンネリ化しているという声も上がっている。起死回生なるかが注目だ。
素人がお菓子作りを競うGreat British Bake Off
アマチュアのベイキング・ファンが10週にわたり、焼き菓子やパン作りの腕を競う番組。12人の参加者が3つの課題に挑戦し、審査員の評価により毎週1人ずつ脱落していく。最終選考に残った3人が決勝で競い、「ベスト・アマチュア・ベイカー」が決定する。英国各地から集まった挑戦者は、移民が多い英国らしく職業やバックグラウンドも異なり、独創的なアイディアとカラフルな作品に驚くばかり。番組内で紹介されたレシピの材料がスーパーで売り切れになるなど、一大ベイキング・ブームを巻き起こした。改めてベイキングが英国の伝統的な文化であることを実感させる。また、アマチュアなだけに、思いがけない失敗やハプニングが起こり、こちらまでハラハラ。一緒に泣いたり笑ったりの人間ドラマを体験できるのも人気の秘密だ。子供版『Junior Bake Off』(CBBC)もあり、親子で楽しめる。
セレブがプロ並みの本格的なダンスを披露Strictly Come Dancing
15人のセレブリティがプロのダンサーとペアを組み、社交ダンスやラテンダンスに挑戦するダンス・コンテスト番組。2004年に始まり、現在まで16シリーズが放送されている。土曜夜の放送分で各ペアがダンスを披露、4人の審査員による採点と視聴者投票が行われ、日曜夜の放送分で脱落するペアが発表される。決勝に残った4組の中から優勝者が決定。セレブリティがプロ顔負けの本格的なダンスを披露するのがこの番組の面白さ。ダンスのイメージに合わせたコスチュームやメイクも凝っていて、見ているだけで楽しい番組だ。
ペアを組んだセレブとプロダンサーをめぐる英メディアのゴシップ報道も、番組を盛り上げる要素のひとつ。練習時間が長いだけに親密になり、不倫関係になってしまう例も過去に起こっており、『ストリクトリーの呪い』として毎回話題を集めている
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Britain's Got Talent(ITV)一般人オーディション番組/The Voice(ITV)一般人オーディション番組/Dancing on Ice(ITV)セレブがアイス・ダンスに挑戦/Love Island(ITV)恋愛リアリティ番組/I'm a Celebrity...Get Me Out of Here!(ITV)セレブがジャングル生活を送る/The Island with Bear Grylls(ITV)冒険家ベア・グリルズが一般人を孤島に置き去りにするサバイバル番組/MasterChef(BBC)アマチュアシェフが腕前を競う/Naked Attraction(Channel 4)一般人によるデート番組/Saturday Kitchen(BBC One)料理番組/Great British Menu(BBC Two)料理番組
【中級】 ドラマ
一口にドラマといっても、刑事、犯罪、歴史、医療など、ジャンルは多岐にわたり、全3話のミニ・シリーズから、長寿シリーズまで形式もさまざま。映画顔負けの予算がつき、世界各地で撮影が行われることもある。人気スターたちの競演が観られるのも英国ドラマならではの魅力!
21世紀のシャーロック・ホームズが活躍するSherlock
アーサー・コナン・ドイルの小説『シャーロック・ホームズ』をもとに、舞台をヴィクトリア朝時代から現代のロンドンに移し、スマホやブログ、ガジェット、インターネットを駆使して事件に挑む新世代のミステリー・ドラマ。2010年から2017年まで放送され、人気を欲しいままにした。スティーヴン・モファット(『ドクター・フー』ほか)とマーク・ゲイティス(シャーロックの兄役で出演)の黄金コンビによる脚本は、視聴者をも裏切る意外な展開の連続で、一度見始めると止まらなくなる面白さ。ずばぬけた頭脳と推理力をもつシャーロックを演じた英俳優ベネディクト・カンバーバッチはこの作品で世界的に知名度を上げた。また、相棒ワトソンを演じるマーティン・フリーマン、シャーロックの天敵モリアティ役のアンドリュー・スコットなど、個性的な俳優たちの競演も見逃せない。
社会現象にまでなった緊張のサスペンスBodyguard
2018年、英国で最も話題を集めたのが、この政治サスペンス・ドラマ。8月から全6話で放送され、BBCの過去10年間のドラマで最も高い視聴率を記録した。ストーリーは元軍人でアフガニスタン赴任によるPTSDに悩む警官が、英軍の海外派兵を推進した内務相の警備担当に抜擢され、任務と復讐心の狭間で悩むというもの。本作の一番の魅力は、繰り返し迫る緊張感。第1話で、列車内のトイレに隠れる自爆テロ犯を主人公が説得するシーンは、一歩間違えると全員爆死という緊張状態が20分も続き、見ている方も手に汗にぎる緊迫感だった。真犯人は誰か? について、視聴者が自説を語り合うファン・セオリーがネットで盛り上がり、翌日の職場はこの番組の話題で持ち切り! といったニュースが報じられるなど、英国で社会現象を巻き起こした。
人気ミュージカル、レミゼの歌なしドラマ版Les Misérables
ヴィクトル・ユゴー原作の大河小説を映像化した文芸ドラマ。今年1月に全6回ミニ・シリーズで放送された。19世紀のフランスを舞台に、ジャン・ヴァルジャンの数奇な運命を描いたストーリー。主演はドミニク・ウェスト、デビッド・オイェロウォ、リリー・コリンズほか。BBCドラマ『戦争と平和 War and Peace』(2016年)のアンドリュー・デイヴィスが脚本を手掛けた。レミゼといえば、ミュージカルが有名だが、本作は歌が一切なく、原作に忠実なドラマ展開となっている。フランス北部などで撮影された映像も美しく、またしっかりとした時代考証により当時の様子を臨場感たっぷりに描いている点で、「これぞBBCドラマの醍醐味!」といえる良作。ちなみに、英国を代表する作家ディケンズ、ブロンテ姉妹、ハーディ、オースティンなどの作品は繰り返しドラマ化されている。小説をもとにしているので、理解しやすいのも文芸ドラマの良いところだ。
カルト的人気を誇る長寿SFドラマDr Who
1963年にBBCで放送開始されたSFドラマ・シリーズ。1989年に一旦終了し、2005年に新シリーズがスタート。タイムロードという種族のエイリアン「ドクター」が地球の仲間と一緒に時空を自由に旅し、事件を解決する内容。歴史上の人物が登場したり、謎の宇宙人と対決したりと奇想天外な展開が見どころ。ドクターは瀕死状態になると、「リジェネレーション」(再生)して顔や体が変わるという設定で、さまざまな俳優たちが歴代のドクターを演じてきた。ドクター・フーを見て育った世代が親になり、自分の子供と一緒にこの番組を見るなど、家族みんなで楽しめる国民的ドラマで、製作陣も子供の頃からのドクター・ファンが多いというのも、世代を超えて愛される秘密だ。登場するエイリアンのダーレク(Dalek)やタイムマシンのターディス(Tardis)は、オックスフォード英語辞典にも含まれ、ポップカルチャーのイベントではドクター・フーのコスプレをする若者も数多いなど、英国の若者カルチャーに多大な影響を与えている。
英国の政治スキャンダルをドラマ化A Very English Scandal
1960年代の英国で実際に起きた政治スキャンダル「ソープ事件」を題材にしたジョン・プレストンのノンフィクション小説を映像化した全3回の政治ドラマ。ソープ事件とは、同性愛が違法だった時代に、自由党のジェレミー・ソープ党首がノーマン・スコット青年と関係をもち、彼の殺害計画を企てたというもの。脚本はラッセル・T・デイヴィス(『ドクター・フー』ほか)。このドラマの見どころは、何といっても、ソープに扮した英俳優ヒュー・グラント。英テレビ番組に出演するのは25年ぶりという彼が、ラブコメで見せる甘い表情とは異なる、計算高い政治家を演じて新境地を開いた。また、スコット役のベン・ウィショーも執念深いが憎めないチャーミングなキャラ。政治スキャンダルという難しくなりがちなテーマが、さらりと軽くなり、悲しくも笑える作品に仕上がったのは、ふたりの魅力のおかげだろう。
ミステリーの女王クリスティの世界を描くNew Agatha Christie Adaptations
日本人にもファンが多い英国の推理作家アガサ・クリスティ原作のドラマは数多いが、なかでも有名なのは、ITV制作・放送の『名探偵ポアロ』と『ミス・マープル』だろう。特に英俳優デヴィッド・スーシェが主演したポワロは世界的に大人気。今回紹介するのは、サラ・フェルプス脚本による、BBCのシリーズ。これまでに、『そして誰もいなくなった And Then There Were None』(2015年)『検察側の証人 The Witness for the Prosecution』(2016年)『無実はさいなむ Ordeal by Innocence』(2018年)が放送されている。フェルプスによる本シリーズの特色はオリジナル性。舞台設定やキャラクターが原作と異なるのはよくあるが、『無実はさいなむ』では何と原作と異なる人物が犯人。あっと驚く結末で原作ファンから賛否両論を呼んだ。2018年末に放送された最新作『ABC殺人事件 The ABC Murders』では、米俳優ジョン・マルコヴィッチが、苦悩・葛藤する新しいポワロ像を演じていた。
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Line of Duty(BBC One)警察ドラマ/Peaky Blinders(BBC Two)1910年代が舞台の犯罪ドラマ/Broadchurch(ITV) 刑事ドラマ/Downton Abbey(ITV)歴史ドラマ/The Uncivil War(ITV)ブレグジットがテーマの政治ドラマ/Skins(Channel 4)青春ドラマ/Silent Witness(BBC One)法医学捜査班の活躍を描いたドラマ
【上級】 クイズ・バラエティ・ドキュメンタリー
英語の問題もあって、少々ハードルが高く感じられるのが、クイズ、バラエティ、ドキュメンタリー番組。しかしながら、英国の文化や自然、歴史などを知るうえでは、これらの番組はとても役に立つ。ぜひ挑戦してみよう。
60年代から続く大学対抗クイズUniversity Challenge
オックスフォード大学やケンブリッジ大学など、英国のトップ大学を代表するチームが対決、トーナメント方式で勝ち進み、優勝を目指す大学対抗クイズ番組。1962年のスタート当初はITVで放送されていたが、1994年からBBCへ。毎週2チーム(4人1組)が対戦し、個人ごとの早押しクイズ、チームで答えるボーナスポイントなどで、最終的に得点が高いチームが勝ちとなる。在学生編、卒業生編、そして大学出身タレント編もある。出題範囲は歴史、科学、文学、芸術などで、難易度はかなり高い。1960年代からフォーマットがほとんど変わっていないというのも、いかにも伝統を重んじる英国らしい。ちなみに2006年には同番組への出場を目指す学生らを描いた映画『Starter for 10』がジェームズ・マカヴォイ、ベネディクト・カンバーバッチ出演で制作されている。
一般起業家が3分間で事業をプレゼンDragon's Den
日本テレビで放送された『¥マネーの虎』の英国版。一般起業家が3分間でビジネスプランをプレゼンテーションし、5人のドラゴン(投資家)に資金提供を求める内容。起業家は自分のアイディアやビジネスについて語り、辛口の投資家たちの質問に正確に答えなければならない。投資家たちのするどい指摘に見ているこちらまで緊張してしまう。この番組で参考になるには、英語でどのように自分のビジネスプランを相手に説明するのか、ビジネスを立ち上げるために何が大切なのか、その方法が研究できること。実際に英国で事業を成功させているドラゴンたちだから、そのアドバイスは的確。英国で働いている人なら、一度は見てみても損はないだろう。
アッテンバラによる自然ドキュメンタリーBlue Planet
英国の人間国宝と呼ばれ、国民に深く愛されているのが、動物学者・植物学者・プロデューサーのデイヴィッド・アッテンバラ。92歳になった現在も現役で活躍している。これまでに『Natural World』『Planet Earth』『Blue Planet』『Life on Earth』『Dynasties』など多数の自然ドキュメンタリーを手がけ、画面を通して彼の自然への敬意がひしひしと伝わってくる。これに呼応するかのように、BBCチームのきっちりとした取材と美しいカメラワークで歴史に残る番組を制作している。世界各地で野生動物や植物、昆虫などを、じっくり時間をかけて丁寧に撮影した番組は、そのクオリティの高さに驚かされ、見るたびに知的好奇心が満たされる。昨年放送された『Blue Planet II』では、プラスチックごみが海と生物に与える影響を取り上げ、それをきっかけに、英国で使い捨てプラスチック問題への意識が急上昇するなど、社会に多大な影響を与えている。
英国人の飾らない姿を垣間見る!Gogglebox
英国各地に住む一般視聴者のリビングルームにカメラが入り、その1週間で放送されたテレビ番組を紹介しながら、彼らがどのような反応をするかを観察するリアリティ番組。2013年にスタート。家族や友人同士、年齢やバックグラウンドもさまざまなごく普通の英国人が、お茶の間でテレビを見て好き勝手にコメントする様子を、番組視聴者が覗き見るというスタイルだ。一般の英国人たちが普段どのような会話をするのか、どのような考えや意見をもっているか、笑いのつぼなどがよくわかる。話題のテレビ番組やニュースをハイライトで取り上げてくれるので、実際にその番組を見ていなくても、何となく見た気分になるのもこの番組の良さ。
英国サッカー・ファンの心のよりどころMatch of the Day
英国人といえばサッカー(フットボール)好きが多いが、サッカー・ファンから絶大な支持を得ているのがこのサッカー情報番組。1964年スタートで、「世界で最も長く放送されているサッカー番組」というギネス世界記録を保持している。その週に行われたプレミア・リーグの試合をハイライトでまとめて紹介する。試合のダイジェストと試合後のインタビュー、ゴールシーンなどをもとに、徹底した試合分析が行われる。サッカーに関心がなければ意味不明の番組だが、この番組が長続きしていることにサッカーがいかに英国で愛されているかを知ることができる。日曜日には『Match of the Day 2』が放送され、マーク・チャップマン司会のもと、同様のフォーマットで試合解説が行われる。
司会のガリー・リネカーが罰ゲームとしてパンツ一丁で登場した記念すべきシーン。
豪華ゲストのコミカルな素顔が見られるThe Graham Norton Show
コメディアンのグレアム・ノートンが司会のトークショー。2007年にスタート。とにかくゲスト陣が豪華で、俳優、スポーツ選手、ミュージシャンなど、旬の人気者が登場し、ゲストの素顔が見られるのがファンには涙モノ。これまでに、トム・ハンクス、ジョニー・デップ、トム・クルーズ、ジェニファー・ローレンス、ヒュー・ジャックマンなど超大物俳優が出演した。時事ネタに対するグレアム・ノートンのコメントも面白いが、ノートンがゲストをいじり、無茶ぶりされたゲストの反応を見るのが一番の見どころ。ベネディクト・カンバーバッチは、この番組でカワウソの顔真似という意外な技を披露し、ますます人気度を上げた。
同番組でカンバーバッチがカワウソの顔真似をしたシーン。ジョニー・デップがカンバーバッチの頬にキスするシーンもあり!
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Springwatch (BBC Two)英国の自然/Top Gear(BBC Two)自動車情報/The Jonathan Ross Show (ITV)トークショー/Countdown(Channel 4)クイズ番組/The Crystal Maze(Channel 4)ゲーム番組/8 Out of 10 Cats(Channel 4)ゲーム番組/The Chase(ITV)クイズ番組/Mastermind (BBC Two)クイズ番組/Grand Designs(Channel 4)建築インテリア番組/Antiques Roadshow(BBC One)アンティーク鑑定番組
映像業界のあり方を変えた「動画配信サービス」
近年急成長を遂げている、「Netflix(ネットフリックス)」「Amazon Prime Video(アマゾン・プライム・ビデオ)」。便利に使えるこれらの「動画配信サービス」について触れておきたい。
ネットフリックスとは米国発の動画配信サービス(月額5.99ポンド~)。海外ドラマ、映画の配信のほか、オリジナル作品も制作する。米英合作で、エリザベス女王の治世を描いたドラマ『The Crown』はクレア・フォイ主演で、第74回ゴールデン・グローブ賞のテレビドラマ部門作品賞と同部門女優賞を受賞した。ほかにも、政治ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段 House of Cards』やSFホラー『ストレンジャー・シングス 未知の世界Stranger Things』などのヒットドラマが生まれている。2019年英国アカデミー作品賞を受賞した『ROMA』は、同社のオリジナル映画で、独占配信した作品。
また、アマゾン・プライム・ビデオ(月額7.99ポンド)でも、映画とテレビ番組を視聴できる動画配信サービスとオリジナル番組の制作を行っている。BBC Twoの自動車情報番組『Top Gear』を解雇された司会者ジェレミー・クラークソンらによる新番組『The Grand Tour』はアマゾンでのみ視聴できる。
これらの動画配信サービスは、スマートフォンやタブレット、PC、自宅のテレビなどで楽しめる。
一方、地上波放送の各テレビ局もインターネットを通してのテレビ配信サービスを行っている。BBC iPlayer、ITV Hub、4 Catch Up、My5がそれにあたる。通常放送で見逃した番組を見ることができるほか、ボックスセットで連続ドラマを一気にまとめて見るビンジウォッチングも可能だ。
政治や世論、時事問題討論番組も人気!
英国では政治や時事ニュースを真面目に論じる硬派の番組も大人気だ。政治報道ではやはり公共放送局のBBCが強い。
日曜朝10時から放送の『The Andrew Marr Show』は、BBCの政治記者だったアンドリュー・マー司会による政治報道番組で、毎回の視聴者は平均200万人! 目玉はゲストを呼んでのインタビュー。首相や党首クラスの政治家にも、鋭い視点の質問を浴びせ、容赦なく突っ込んでいく。受け答えがそのままお茶の間に届くばかりか、翌日の新聞に大きく取り上げられることもあり、出演する政治家も真剣勝負だ。
『Question Time』は毎週木曜夜10時45分からの政治討論番組。英国各地で、政治家、著名人、実業家、専門家らによるパネルと一般観客がテーマにそって討論を行う。名物司会者として知られたデイヴィッド・ディンブルビーに代わり、今年からニュースキャスターのフィオナ・ブルースが司会を務めており、滑り出しは上々。
BBC Oneの金曜夜9時からの『Have I Got News for You』は風刺コメディクイズ番組。風刺雑誌『Private Eye』のイアン・ヒスロップ編集長と作家・コメディアンのポール・マートン率いる2組が政治や時事ニュースをテーマにした問題に、ウィットに富んだ受け答えで対決する。
また、ITVでもロバート・プレストン司会による政治討論番組『Preston』や時事問題を検証する『Tonight 』がある。
このような番組を見ていると、英国人が討論好きというのがよく理解できる。
今週のテレビ番組をチェック!
週刊ジャーニー No.1076(2019年3月7日)掲載