
英国でマティーニを語るとき、必ず登場するのがジェームズ・ボンド。「ウォッカ・マティーニ、ステアではなくシェイクで」のセリフはあまりにも有名だ。生みの親イアン・フレミングが通い、ボンド流マティーニのヒントを得たとされるのがこの「デュークス・バー」。かつて「紳士街」として栄えたセント・ジェームズ地区に位置する。
マティーニ(13種類、各21ポンド)を注文すると、オフホワイトのジャケットにネクタイ姿のバーテンダーがトローリーを押してやってくる。冷えて白く曇ったカクテルグラスにベルモットを注ぎ、そしてジンを。片手にようやく収まるほどの大きなレモンの皮をむき、その皮を軽くツイストしてグラスの縁を優しく撫で、中にそっと落とす。目の前で行われる一連の動きは、シンプルながらもどこか儀式のようで贅沢な気分に包まれる。
店内には音楽が流れておらず、代わりに客らの落ち着いた声が響き、ジュニパー・ベリー由来のジンや柑橘系の香りが漂う。大人だけが浸ることができる上質な空間と言えるだろう。

13種類あるマティーニ・メニューの中でも、ウォッカとジンで作るマティーニ「デュークス・ヴェスパー」(21ポンド)が好評。レモンに代えてオレンジの皮が使われる。

バーへのアクセスはホテルのエントランスからで、しかも人気がゆえに案内されるまでに少し待つこともあり、敷居は高め。だが、一見さんでもバー・マネージャーのアレッサンドロ・パラッツィ氏=写真上=が優しい笑顔で迎えてくれる。写真は、「デュークス・ジン・マティーニ」(21ポンド)。
Dukes Bar
Dukes London, St. James's Place,
London SW1A 1NY
月〜土:午後2時〜午後11時
日、祝日:午後4時〜午後10時30分
www.dukeshotel.com/dukes-bar
週刊ジャーニー No.1130(2020年3月26日)掲載