
■ 第158話 ■プリンセスから一般ピープルに
▶回転寿司店湯飲みペロペロ騒動を挟む前、スペイン、カスティーリャ王国の女王イザベル1世のことを書いた。「戦争に勝つまでは」と願掛けして3年も下着替えなかったという尊敬しづらい逸話が残る女傑。その娘キャサリンがヘンリー8世最初の妻。5つ年上の姉さん女房だった。キャサリンは7人の子を宿したが死産や夭逝が相次ぎ生き延びたのは5番目の子メアリーだけ。やがてキャサリンは子を望めない年齢になった。どうしても男の子が欲しいヘンリーはキャサリンを諦め、離婚を画策。キャサリンは神聖ローマ帝国皇帝だった甥のカール5世に離婚を認めないようローマ教皇に圧力をかけさせた。教皇は強大な軍事力を持つカール5世の恫喝に屈した。
▶ヘンリーとカールの間で板挟みとなった教皇はロンドンに代理人を送り、形だけの裁判を開いた。ヘンリーは「キャサリンは兄の未亡人。聖書は兄弟の妻とのエッチを禁じている。だから初めからこの結婚は間違いであり無効だ」と訴えた。一方のキャサリンは「ヘンリーの兄アーサーは病気がちで私たちは一度もエッチしていない。ヘンリー、私たちが初めてエッチした夜、私がまだ処女だと知ってアンタ大喜びしたわよね!」と迫った。ヘンリー、たじたじ。法廷で繰り広げられる王と王妃の「やった」「やらない」赤裸々ラララのセックスライフ。こうしてみると英王室って昔も今もセックス絡みのスキャンダル、多いな。代理人は予定通り答えを出さずにのらりくらりしたまま「一旦持ち帰りま~す」と言ってローマに帰国。その後、教皇はダンマリを決め込み、離婚を許すことはなかった。永遠に。
▶キャサリンは宮廷を追われた。メアリーと会うことも許されなかった。北の方に連行されて幽閉された。その間にヘンリーは既に身重だった愛人アン・ブリンと強引に結婚。カトリックと決別して勝手にイングランド国教会を作りトップの座に君臨。教皇に破門された。アン・ブリンが産んだのは女児だった。男児だと信じていたがっかりヘンリー。全ての祝賀行事を中止した。女児はエリザベスと名付けられた。のちのエリザベス1世だ。キャサリンは王妃のタイトルを剥奪され、長女メアリーも王位継承順一位の王女から庶子、つまり一般ピープルに格下げされた。王妃キャサリンを追い出したアン・ブリンは国民から「王の娼婦」と呼ばれ、憎悪の対象となった。母親の婚姻無効を認めず、国教会への改宗にも応じないメアリーをヘンリーもアンも許さず、妹エリザベスの侍女という屈辱的な職務を与えた。メアリーは「王妃は母のみ。エリザベスも王女とは認めない」と譲らずヘンリーとアンを激怒させた。さすがイザベル1世の孫。激しい。
▶キャサリンが幽閉先で死んだ。広く国民に愛された元王妃。多くの人が嘆き悲しんだ。ヘンリーとアンは「邪魔者は消えた」と喜び、踊った。そのアンも次の子を流産すると不倫や国王暗殺の捏造スキャンダルに巻き込まれ、キャサリンの死からわずか4ヵ月と少し後にロンドン塔で首を刎ねられた。チューダー、滅茶苦茶。メアリーの祖母も母も女王に相応しい威厳と風格を備えた人たちだった。何より誇り高きスペイン王家の血を引くだけあって強烈なカトリック信者だった。「絶対にカトリック国に戻したる」。次号、屈辱のズンドコから這い上がり、女王となったメアリーの「この恨み、晴らさでおくべきか」が爆発しちゃう。チャンネルはそのままにするほどでもない。
週刊ジャーニー No.1280(2023年3月2日)掲載
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