2011年5月12日 No.676

 

おすすめワイン産地めぐり⑰   ルーマニアへの旅 その2

 

 

 

リトル・パリを首都とする「ローマ人の住む地」

 

ルーマニアとは、もとは『ローマ人の住む地』という意味。首都は「Little Paris」と呼ばれるブカレストで、市街地ではフランス風の建築物があちこちに見られ、パリのものを真似た「凱旋門Arch of Triumph」やシャンゼリゼに似た並木大通りまである。石油産出国だけあって車が多く、街中であっても道路の幅が広い。並木や公園などの緑も豊かだ。しかし、ルーマニアでは、夜になっても電気をつけない家が少なくなく、町は非常に暗い。今でもこうなのだから、改革前の生活がいかに貧しく、虐げられていたかを察することができる。ブカレストの町から郊外に車を走らせると、未使用で、所有者の決まっていない荒れた土地が延々と広がっている。また、昔はブドウ畑だったと思われる、打ち捨てられた段々畑が丘や斜面を覆っているのも目にする。ブドウ畑に関しては、1992~93年には25万ヘクタールあったものが、現在では6万ヘクタールに減少しているのだから、こうした風景にしばしば出会うのも無理はない。しかしながら、ここ10年ほど前からワインの品質にこだわる産出者も次第に増え、ブドウ品種やクローンを選定するとともに、ブドウの栽培やワイン醸造に新技術を導入し、量より質のすばらしいワインを造るようになっている。

 

ルーマニアの主なワイン産地

 

それでは、ルーマニアの主要なワイン産地をご紹介することにしよう。

*モルドヴァ Moldova

ルーマニア北東部に位置するルーマニア最大の生産地。殊に、『モルドヴァの真珠』の異名を持つコトナリ地区が名高く、「ワインの女王」と呼ばれるグラサ・デ・コトナリGrasa de Cotnariを生み出している。これは世界的に有名な貴腐ワインのひとつで、「この高貴なるモルドヴァ国王の飲み物は、飲みすぎると毒だが、これを飲むと心にパワーを、そして肉体に美をもたらす」と称された。

 

*ワラキア Wallachia

ワラキア(ワラキア公国があった地方)では赤ワインが主として造られる。中でもデアル・マレDealu Mare地方はルーマニアの赤ワインの中心地。ルーマニアで最も有名なワイン醸造家のひとり、オーレリア・ヴィシネスクAurelia Visinescuによって2003年に設立されたドメーヌ・サハテーニDomeniile Sahateni、そしてルーマニア・ワインのパイオニアとして知られるガイ・デオゥ・ポワックスGuy de Poix伯爵によって1994年に設立されたサーヴServeが有名=右の写真はそのセラー(貯蔵庫)。

 

*トランシルヴァニア Transylvania

ドラキュラのモデルとなったワラキア公ヴラド3世はトランシルヴァニア地方出身。ここは高原地帯で、爽やかに仕上げた白ワインが生産の中心。英国人が経営し、非常に成功しているレカスRecas社がある。ここで造られるワインはどれを飲んでも美味しい。英国では「セインズベリーズ」で、Sainsbury's Romanian Pinot Noir(£3.39)として売られている。また、最近注目を集めているのは、プリンス・スタービーPrince Stirbey。ここは、プリンス・スタービ-の孫娘のイレアナIleanaさんと、夫でオーストリア人貴族であるクリップKripp卿がオーナーを務める。国際品種もさることながら、土着品種に特に力を入れており、ドイツ人の若手ワイン醸造家オリバー・バウアーによって驚くほど優れたクランポシエCramposie種の発泡性ワイン、ノバックNovac種の赤ワインが造られている。オーナーのクリップ卿は、「カベルネ・ソーヴィニョンは楽器でいうピアノのようなワインを造るが、ノバックはハープシコードのようなワインを造る」と評している。

 

*ドブロジャ Dobrogea

黒海沿岸に位置するドブロジャは、ルーマニアで最も温暖で、赤ワイン、白ワイン共に生産している。ムルファトラーMurfatlar地域の赤ワイン、ムルファトラーがその代表的な銘柄として広く知られている。

 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。
International Wine Challenge審査員。Slow Food審査員。
ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
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