2011年4月14日 No.672

 

おすすめワイン産地めぐり⑰   ルーマニアへの旅 その1

 

 

 

世界第12位の生産量を誇る国

 

英国から訪ねたいワイン生産国リストの中に、ルーマニアは入っていないという方が多いかもしれない。ところが、ルーマニアはヨーロッパで第5番目、世界で12番目に数えられる立派なワイン生産国なのである。しかも、酒の神様バッカスの生まれた国でもあり、(これは余談だが)ドラキュラの故郷でもある。国土面積は23万7500平方キロメートルと、日本の6割程度で、人口は日本の約6分の1のみ。ルーマニアのワインの歴史についてはフランスやイタリアよりもずっと古く、中世時代にはヨーロッパ中の王侯貴族に絶賛されたワインを作っていた。フランスと緯度が同じであり、大陸性気候でありながらも、黒海やドナウ川の影響をうける地方は特に気候が穏やか。標高2500メートル以上の峰を幾つも持つカルパチア山脈のなだらかな麓にブドウ栽培地が集中している。ただ、車を走らせると、昔はブドウ畑だったのだろうと思われる、放置された段々畑が丘の斜面を覆い、未使用の荒れた土地が延々と広がっているといった風景を目にすることがまだ多い。この状態でヨーロッパ第5位のワイン生産国なのだから、復興が本格化した場合、ルーマニアの将来にいかに可能性がつまっているか容易に想像できるというものだ。

 

停滞していたワイン産業にルネッサンス到来

 

ルーマニアは世界大戦後、ソ連を中心とする社会主義体制に組み込まれ、さらにニコラエ・チャウシェスクNicolae Ceausescuによる独裁政治によって世界から長い間閉ざされた国となった。その後、ソ連のミハイル・ゴルバチョフによってペレストロイカが唱えられ、やがてソ連邦は崩壊。ルーマニアでも国民が民主化に目覚め、1989年の革命でチャウシェスクが処刑され、民主主義・自由経済への移行が始まった。というわけで、ルーマニアのワインの歴史は古いにもかかわらず、土地の民主化が進んだのはここ10年余り。新しいワイン生産者たちが国から土地を買い、土着のブドウ品種に加え、フランス産クローンのピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニョン、シラー、メルロ、シャルドネ、ソーヴィニョン・ブランといった国際的な品種の作付けも進められている。

 

『乙女』と名のつく3つのブドウ品種

 


早春のルーマニアで、本格的な春の到来を待つブドウの樹たち
ワインについての歴史が長い国だけあり、この国独特というブドウ品種が幾つかある。まず、フェテヤスカと名のつく3つの品種。白ブドウ品種のフェテヤスカ・アルバFeteasca Alba(『白い乙女』という意味)とフェテヤスカ・レガラFeteasca Regala(『忠実な乙女』)、そして黒ブドウ品種のフェテヤスカ・ネアグラFeteasca Neagra(『黒い乙女』)。フェテヤスカ・アルバもフェテヤスカ・レガラも新鮮かつさわやかで、どこかハーブ香を伴ったレモンやライムのアロマのしっかりとしたワインを造る。シャルドネやソーヴィニョン・ブランを飲みなれた人には、「新たな発見」と思わせるタイプのワインだ。フェテヤスカ・ネアグラはベルベットのようなスムーズさとソフトさをたたえ、色も濃く、ブルーベリーやスパイスの香り、そして穏やかなタンニンをもつワインを造る。フェテヤスカのワインはどれも非常に喉越しがよいのが特徴。一方、バベヤスカ・ネアグラBabeasca Neagra(『黒いおばあさん』という意味)は、フェテヤスカほど有名ではないものの、軽くて、フルーティな赤ワインを造る。特に甘口ワイン用として使われているタミオアサ・ロマネヤスカTamioasa Romneascaからはハチミツやマスカットの風味を持つ、しっかりとしたワインが造られる。
では、次号では、ルーマニアのワイン産地とワインの特徴、今話題のルーマニア・ワインを紹介する。

 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。
International Wine Challenge審査員。Slow Food審査員。
ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
e-mail : このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

ロンドンおすすめレストラン
面白すぎる英国ジョーク
なるほど英国Q&A
ロンドン近郊トラベルガイド
ロンドン最新トレンド
面白すぎる英国史
面白すぎる英国の偉人
ロンドンでアフタヌーンティー