2012年9月13日

 

おすすめワイン産地めぐり⑳  英国産スパークリング・ワイン その5

 

英スーパーマーケットの大いなる挑戦

英国王室御用達のスーパーマーケットであり、取り扱い商品の質の高さには定評のあるウェイトローズWaitroseだが、そのウェイトローズが自社畑にブドウを植え、将来的にスパークリング・ワインを造って販売すると発表したのが2008年。そして、南イングランドのハンプシャーに同社が所有する4000エーカーの農園内にある、レックフォード・エステートLeckford Estate=写真右=の1600エーカーに、ブドウの樹を植えたのが2009年、3年前のことだ。

 

シャンパーニュと地層は同じ


© Waitrose
ご存じのように、大昔、イングランドはヨーロッパ大陸の一部で、フランスとくっついていた。現在のフランスと英国本土の間の海峡は『川』に過ぎなかったわけだ。ここで、大皿を例にとって説明すると、大皿の真ん中の凹んだ部分をパリ盆地だとすると、その盆地から大皿の縁に向かう斜めの部分は、真ん中の地面が凹んだために地表に現れた古い地層ということになる。大皿の真ん中あたりにパリを置くと、東の斜面にシャブリ、北東の斜面がシャンパーニュ、そして北西が南イングランドとなる。つまり、シャブリやシャンパーニュと南イングランドには、同じ地層が現れている箇所があるのだ。
これを証明するのに、シャブリの畑の格付けを用いてみよう。シャブリの畑の格付けというのは、キンメリッジ階粘土の含有率によって決まるが、このキンメリッジ階粘土の「キンメリッジ」は、南イングランド、ドーセットにある場所(土壌)の名、キンメリッジから取られた。また、シャブリの中でも、ポートランド階石灰岩を多く含む畑はプティ・シャブリと格付けされている。このポートランド階石灰岩は、ドーセットにあるポートランドの石灰岩と同じであることから、こう名付けられた(ちなみに、ポートランド階石灰岩は、セント・ポール大聖堂を築くのに使われた石灰岩でもある)。 

 

新進ワイナリーとのコラボレーション

ウェイトローズは、シャブリやシャンパーニュに見られるような石灰質土壌地層をもつ南向きの斜面を、自社のレックフォード・エステートに見出してブドウの樹を植えた。その斜面に育つブドウの樹が、根を土壌深く張り、シャブリやシャンパーニュと同質の地層からミネラルをいっぱい吸い上げて、凝縮された果実をつけるのを、ウェイトローズは待っていたわけだ。
去年の10月、最初のブドウが収獲された。ところが、実は、ウェイトローズはワイナリーの施設を持たない。そこで、醸造のご指名を受けたのが、ウェスト・サセックスにあるリッジヴューRidgeview (www.ridgeview.co.uk)。収獲されたブドウは即座にリッジヴューのワイナリーへと運ばれた。
リッジヴューはロバーツRoberts夫妻が、シャンパーニュと同じ造り方で上質スパークリング・ワインをイングランドで造りたいという思いから、1995年にウェスト・サセックスに創設した。ブドウ品種のクローンの選択から、栽植、醸造にいたるまで、有名コンサルタントのアドバイスのもとで行い、1996年には近代的な醸造所、そして熟成用の地下セラーが完成。醸造所には、温めることも冷やすこともできる温度調節付きステンレス・スチール製発酵タンクが44も並ぶ。さらに、熟成後のシャンパーニュから死んだ酵母を取り除くためのジロパレットから、低温殺菌そして瓶詰に至るまで、シャンパーニュにあるワイナリーと同様の大規模な設備が揃っている。栽培並びに醸造チームもすでに高く評価されており、そのスパークリング・ワインは、2000年から数々の賞を受けている。今年の3月に行われた94の英国スパークリング・ワイン・ブラインド・テースティング会においても、(先月号で紹介した通り)キャメル・ヴァレーに次いで、2位を受賞している。
このリッジヴューの醸造チームとウェイトローズのコラボレーションによる、スパークリング・ワイン(まだ、名前は決まっていない)の登場が待ち遠しい。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。

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