2011年11月10日

 

おすすめワイン産地めぐり⑲  スペイン・リオハを味わう旅 その1

 

 

聖地に赴く人々をもてなしてきた村

キリスト教三大巡礼地といえば、エルサレム、バチカン、そしてスペインのサンチャゴ・デ・コンポステラ。この3つめのサンチャゴ・デ・コンポステラについては、1000年以上も昔より、ヨーロッパのさまざまな国からの信者たちが、例えばフランス方面からならピレネー山脈を越え、延々と巡礼路を歩いてこの聖地を目指してきた。ピレネー山脈のふもとからサンチャゴ・デ・コンポステラまでの道のりだけでも約800キロというから、大変な道のりだ。もちろん旅の途中では、病気になったり怪我をしたりする人々も多かっただろう。そんな人々にワインは欠かせないものだったに違いない。途中にあるリオハは、巡礼者をもてなす村として発展し、リオハ・ワインは長旅に疲れた人々を癒してきたのだ。

 

オハ川のそばで生まれたワイン

カンタブリア山脈に3方を囲まれたリオハは、エブロ川上流にある、広大なすり鉢型の丘陵地帯。リオハの名前はエブロ川の支流、リオ・オハRio Oja(「オハ川」という意味)にちなんでいる。リオハの上質ワインの産地は約6万4千ヘクタールあり(フランスのボルドーは約10万ヘクタール、ブルゴーニュは約4万7千ヘクタール、シャンパーニュは約3万ヘクタール)、エブロ川沿いのアロ村とログローニョ村を中心とした地区で特に品質の高いワインが造られている。
このリオハには赤、白、そしてロゼがある。赤とロゼのワインはテンプラニーヨTempranillo種、ガルナッチャGarnacha種、そしてグラシアーノGraciano種から造られ、白ワインは主にビウラViura種から造られる。スペインで最も重要な品種といえるテンプラニーヨ種は、スペイン北部と中央部で栽培され、果皮の厚い、酸味が若干少なめのブドウを生み出す。果皮に含まれる香味がベストの状態になるには高い気温が必要なのだが、その一方で、香味が増すと酸味があまりに低下しすぎてしまう傾向があるため、夏の暑い期間に海からの冷涼な風の恵みを受けるリオハのような場所が産地として最適とされている。また、ガルナッチャ種はフランスではグルナッシュ種と呼ばれ、ローヌ川流域や南仏で活躍している品種。こちらはアルコール度の高いワインを造るのに用いられることが多く、ブレンドすることによって、ワインに複雑さと膨らみを与えることができる。そして、最近とみに注目されているのがグラシアーノ種。一時は全滅の危機もささやかれたほどの品種だが、黒いベリー類を思わせるパワフルな香味、豊かな酸味とタンニンをあわせ持つ。
リオハのワインが出荷されるのは飲み頃になってから。つまり、ボデガ(スペインでは「ワイナリー」のことをこう呼ぶ)で、十分な期間寝かせてから出荷するわけだ。ラベルにCrianzaと書かれた赤ワインは最低24ヵ月間、Reservaは最低36ヵ月間、Gran Reservaと書かれたものは60ヵ月間熟成されてから市場に出される。市場に出たら、すぐに飲んでもよいが、ReservaやGran Reservaは購入後、更に熟成させることができる。

 

巡礼者からワイン愛飲家へリオハの新たなる挑戦

さて、前述のように、巡礼途上にあるリオハはさまざまな国からの巡礼者を受け入れてきたが、今日では、それだけでなくワイン愛飲家を歓待する観光産業にも力を入れている。ボデガにレストランを常設し、見学者のために英語の話せるガイドを手配したり、お土産コーナーを用意したりするかたわら、オペラ歌手を呼んでボデガでコンサートを開くなど、さまざまなアイディアを実現させるべく知恵を絞っている。そんな中、マルケス・デ・リスカルはヨーロッパでも他に例を見ないほどの奇抜なホテル&レストランをワイナリーに建てた。次回は、このホテルやワイナリーをご紹介するとともに、リオハでのその他のお薦めホテルなど、さらなる情報をお届けしよう。

 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。
International Wine Challenge審査員。Slow Food審査員。
ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
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