サメ、涙、奴隷… テートモダンに噴水登場

■ テートモダンの中央に位置するターバイン・ホールに、巨大な噴水が期間限定で登場した。遠くから見ると少しにぎやかな普通の噴水に見えるが、近づくにつれ見えてきたのは…。

毎年秋から翌年の春にかけて、ターバイン・ホールに設置されるアート・インスタレーション。今年は、米国を拠点に活動する芸術家カラ・ウォーカー(49)が選ばれた。
彼女がテート・モダンに、そして英国に差し出した作品は、「Fons Americanus」と名付けられた噴水。バッキンガム宮殿前のモニュメント「Victoria Memorial」をモデルにして作られたものだが、大英帝国の栄華をたたえる代わりに、ヨーロッパとアフリカ大陸、アメリカ大陸を結んで行われ、大英帝国の繁栄の一翼を担った奴隷貿易に焦点を当てる。
白一色で爽やかな雰囲気を漂わせる高さ13メートルのモニュメントに近づいてみると、頂上に据えられたヴィーナスは首に傷がついているのがわかる。周囲には絞首刑に使われるようなロープ、何かを懇願する男性、かと思えば生き生きとした女性が配され、水面にはサメや今にも沈没しそうな船に乗った男性などが見られる。
同アーティストはこれまでにも人種問題や奴隷の歴史に関する作品を発表しており、白い壁に黒い切り絵で物語を展開する手法が有名。それらは重いテーマを扱いながらもどこか軽快な印象を与え、今回の作品も寓話を表現したようで、重々しさは感じられず、実際、噴水の周辺で来館者が楽しそうに憩う様子が見られた。人類史上の汚点ともされる奴隷貿易。歴史を改めて見つめる良い機会といえそうだ。(写真・文/西村千秋)

ターバイン・ホールにあるもう1つの彫刻「Shell Grotto」。中央では、涙に溺れるような人物が空を見上げている。

Kara Walker: Fons Americanus

Tate Modern
Bankside, London SE1 9TG
2020年4月5日まで
www.tate.org.uk/visit/tate-modern

週刊ジャーニー No.1108(2019年10月17日)掲載