2016年9月8日 |
ご当地ワインと郷土料理&名産物⑰プーリア州 その1
シャンパーニュを愛する地
イタリアで最も東に位置するプーリアは、830キロもの海岸線を持つ細長い州で、平野が約53%、丘陵が約45%、山岳地帯が約2%と、イタリアで最も山が少ない。東はアドリア海に、南はイオニア海に面し、海の幸に恵まれているだけでなく、イタリア第2の広大な平野ではブドウ、オリーブ、果実、野菜、穀物などの農産物の生産が大々的に行われている。
「プーリアのワインとは?」と聞かれても、なかなかワイン名がでないほど国際市場においてはまだこの州のワインは知られていないものの、ワイン生産量はイタリア第2位(年間約6億リットル。フランスのボルドー地方のワイン生産量とほぼ同じ)とワイン生産も盛ん。
海産物は焼いたり、煮たりして食すほか、実は生(なま)でも食べる。グリルしただけの魚も美味だが、生で食べる海老の人気が高く、辛口のスパークリング・ワインと共に楽しむのが現地式。興味深いことには、プーリア州はイタリアで最もシャンパーニュ消費の多い州で、特にバーリBari村における年間シャンパーニュ消費量は、実に日本のシャンパーニュ消費量より多いという。
プーリア州のワインを生み出すブドウたち
さて、プーリア州で最も『活躍』している黒ブドウ品種は、北部地域で栽培されるネロ・ディ・トロイアNero di Troia種、中央地域のプリミティーヴォPrimitivo種、南部地域で栽培されるネグロアマーロNegroamaro種だ。ネロ・ディ・トロイア種は濃厚でチョコレートやココア、ベリー系のリキュール、ときには鉛筆の芯の香を持つリッチな赤ワインを生む。また、プリミティーヴォ種は、色合いが濃く酸味の高い、フランボワーズなどの香りを持つ濃厚な味わいの赤ワインを、そしてネグロアマーロ種は非常に力強い、アルコール分の高い赤ワインを造る。このほか、白ブドウ品種には、アロマチックなフィアーノ・ミヌトーロFiano Minutolo種、ヴェルデーカVerdeca種、ビアンコ・ダレッサーノBianco d'Alessano種などがある。
素朴な料理に乾杯
このプーリア州には4つの保証付き原産地呼称ワイン(DOCG)と28の原産地呼称ワイン(DOC)がある。4つのDOCGとは、ボンビーノ・ネッロ種から造られる辛口赤ワインのカステル・デル・モンテ・ボンビーノ・ネロCastel del Monte Bombino Nero、ネロ・ディ・トロイア種から造られる辛口赤ワインのカステル・デル・モンテ・ネロ・ディ・トロイア・リセルヴァCastel del Monte Nero di Troia Riservaとカステル・デル・モンテ・ロッソ・リセルヴァCastel del Monte Rosso Riserva、そしてプリミティーヴォ種から造られる甘口赤ワインのプリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア・ドルチェ・ナチュラーレPrimitivo di Manduria Dolce Naturale。
一方、DOCワインで最も有名なものは、サリチェ・サレンティーノSalice Salentino(シャルドネ種から白ワイン、非常に力強いワインを造るネグロアマーロ種からロゼワインと赤ワインを造る)がある。ネグロアマーロ種はイタリアで6番目に多く栽培されている有用なブドウ品種である。プーリア州の白とロゼ・ワインは早期消費用だが、赤ワインは長期熟成できるものが多い。
プーリアには世界遺産に登録されているアルベロベッロAlberobelloの村がある。この村には白壁に円錐形の石積み屋根を載せた「トゥルッロ」と呼ばれる伝統的な家屋が約1500軒あり観光地として有名だ。地元の食材を使った素朴な農民料理が多いが、ここで必ず食べたいのがブラータBurrataチーズ=写真。水牛または牛のミルクを原料とする、非常に柔らかく、クリーミーな口当たりのチーズで、少し甘味のあるバターのような味わいが特徴。このチーズはスターターとして供されることが多く、カステル・デル・モンテCastel del Monteのようなフレッシュな白ワインとよく合う。