2016年7月14日 |
ご当地ワインと郷土料理&名産物⑯イタリア産白ワイン その1
ゲルマン民族の大移動により再興された町
赤ワインの産地として名高いイタリアだが、2011年には白ワインの生産量が赤とロゼワインの合計生産量を上回り、2015年の統計では白ワインがワイン総生産の53%、赤とロゼワインの合計が47%であることが発表された。
イタリアで最も多く生産されている白ワインといえばソアーヴェSoave。ソアーヴェ地域はヴェネト州の州都ヴェニスの北西に位置する。丘の頂上に要塞としてそびえ立つソアーヴェ城Castello di Soaveから見下ろせば、ヴェロナ周辺の広大な平地と丘陵斜面にブドウ畑が広がっているのが分かる。ソアーヴェの地名は、古代ローマ崩壊後、ゲルマン民族の大移動で、この地にやってきたランコバルド族のスヴェーヴィ家によって町が再興されたことに因んでいるという。
ソアーヴェのワインには、ソアーヴェSoave DOC、ソアーヴェ・クラッシコSoave Classico DOC、ソアーヴェ・スペリオーレSoave Superiore DOCG、 ソアーヴェ・コッリ・スカリゲリSoave Colli Scaligeri DOC、レチョート・ディ・ソアーヴェRecioto di Soave DOCGと5種類ある。レチョート・ディ・ソアーヴェは乾燥させたブドウから造られる甘口ワインだが、他はすべて辛口ワイン。年間生産量はソアーヴェが約5000万本、ソアーヴェ・クラッシコは年1500万本、残りの3種類は各約10万本ほど。ブドウ作付け総面積は6637ヘクタールで、うち486ヘクタールのみが小規模生産者により所有され、残りは協同組合会員の所有となっており、ワイン総生産量の93%が協同組合で造られている。
対照的なふたつのワイン
ワインは、水捌けのよい痩せた土壌で育ったブドウから高い品質のワインが造られることが多く、ソアーヴェ・クラッシコ、ソアーヴェ・スペリオーレ、 ソアーヴェ・コッリ・スカリゲリは、水捌けのよい丘陵斜面の石灰岩を含む痩せた土壌で育つブドウから造られる。その一方、ソアーヴェは平地の肥えた土で育つブドウから造られている。
一般的に、ソアーヴェ用のブドウは1本の樹に多くの房をつける。これを機械で収獲し、ステンレス・スチール製タンクを使って醸造し、栓にはスクリュー・キャップが使われる。これに対し、ソアーヴェ・クラッシコ 用のブドウは1本の樹につける房の数を抑え、手摘み選果される。これを古いオーク樽やステンレス・スチール製タンクを使い分けて醸造し、栓にはコルクを使う。
さらに、ソアーヴェがライト=ボディで、フレッシュな果実風味の早期消費用であるのとは異なり、ソアーヴェ・クラッシコはミディアム=ボディで、ミネラルや乾燥したセージなどのハーブ、アーモンド、蜂蜜、アプリコットやモモなとの核果類、フェンネルといった複雑かつ凝縮した香味をもち、長期熟成させることもできる。
こだわりの「クラッシコ」
ワイン法の分類によると、ソアーヴェ・スペリオーレが品質上トップということになり、クラッシコ地区のみならずコッリ・スカリゲリ地区のワインにも「Soave Superiore DOCG」を名乗れるものがある。しかし、生産地域が限定される「クラッシコ」の名にこだわるトップ・クラスの生産者は、たとえ「Soave Superiore DOCG」を名乗れるワインであっても「Soave Classico DOC」とラベル表記している。そうしたこだわりの強いトップ・クラスの生産者で傑出したソアーヴェを造るメーカーとして、老舗のピエロパンPieropan、ジーニGini、そしてテッサーリTessariが挙げられる。
さて、イタリアン・レストランのワイン・リストにはピエロパンのソアーヴェ・クラッシコが必ずといってよいほど載っている。イカ墨のリゾット=写真下=やイカ墨スパゲティー、イカの墨煮(ポレンタ添え)、タコのレモン風味、ホタテ貝のヴェネチア風capesante alla veneziana(※)といったヴェネト州の郷土料理のお供にぜひ選んでほしいワインだ。
※パセリとガーリックをきかせ、オリーブオイルでソテーしたホタテにタップリとレモンをしぼった料理。しばしばホタテの貝殻に盛り付けてサーブされる。