2016年5月12日 |
ご当地ワインと郷土料理&名産物⑮イタリア産スパークリング・ワイン その2
イタリア産発泡性ワインの美しい泡ができるまで
前回に引き続き、イタリアの発泡性ワインについて記すことにしよう。発泡性ワインの造り方には、大きく分けて2つある。一つは出来上がったワインに、人工的に二酸化炭素を注入する方法で、コカコーラのような製法といえば分かりやすいだろう。そしてもう一つは、ワインの製造中にアルコール発酵によって生まれた副産物としての二酸化炭素を、『逃げ場のない環境』の中でワインに溶け込ませる方法だ。イタリアの良質発泡性ワインはほとんど後者の方法で造られている。さらに、『逃げ場のない環境』が瓶の場合には瓶内二次発酵方式と呼ばれ、密閉タンクの場合には密閉タンク方式と呼ばれる。瓶内二次発酵方式で造られる代表的なものにフランチャコルタFranciacorta、トレントTrento、オルトレポ・パヴェーゼ・メトド・クラッシコOltrepò Pavese Metodo Classicoが挙げられるほか、一部のプロセッコもこれに含まれる。一方、アスティAstiとランブルスコLambrusco、また、ほとんどのプロセッコは密閉タンク方式で造られる。
『イタリアのシャンパーニュ』と称されるワイン
瓶内二次発酵方式とはシャンパーニュの生産方法だが、イタリアにてこの方式で最初に発泡性ワインを造り、『イタリアのシャンパーニュ』とみなされているのがフランチャコルタだ。栽培地は、ロンバルディア州の州都ミラノの北東に位置するイゼーオ湖の南沿岸に広がる山麓斜面にあり、2,200ヘクタールの広さ。年間生産量は1,500万ボトルとシャンパーニュの4%ほどにすぎないが、シャルドネ(白ブドウ品種)、ピノ・ネロ(黒ブドウ品種。ピノ・ノワール種と同じ)、ピノ・ビアンコ(黒ブドウ品種。ピノ・ブラン種と同じ)から絶妙な発泡性ワインを造っている。3つのブドウ品種を使ったノン=ヴィンテージとミッレジマートMillesimato(収獲年の同じブドウだけを使って造られる。ヴィンテージと同じ)、ピノ・ネロを最低25%使ったロゼRosé、白ブドウ品種のみから造るサテンSatèn(ブラン・ドゥ・ブランBlanc de Blancsと同じ)がある。
ロンバルディア州で高品質ワインが造られる理由
フランチャコルタで高品質のワインが造られているのは、まず高品質志向の生産者が多いこと、そして、ブドウ栽培に適した地勢、気候、土壌に恵まれているおかげ。山麓斜面に位置する畑の土壌にはミネラル豊富な小石が多いことから水はけがよく、下層が石灰岩質なので雑味のない果実を実らせる。また、夏の日中は暖かく晴れた日が多い反面、夜間はかなり冷えるために、果実は完熟しながらも、発泡性ワインに必須の酸味を保つことができる。果実が完熟するおかげで口当たりに丸みがあり、モモ、リンゴ、柑橘類、アーモンドといった複雑な風味を伴うリッチな味わいの仕上がりとなる。出来上がった発泡性ワインの甘さによって分類され、極辛口にはNon Dosato (または、Pas Dosé、Dosage Zéro、Pas Opéré、Nature)、あるいはExtra Brut、辛口にはBrut、半辛口にはSec、半甘口にはDemi-Secとラベルに表記される。
ロンバルディア州には瓶内二次発酵で造られるワインがもう一つある。前述のオルトレポ・パヴェーゼ・メトド・クラッシコで、同州の西、ピエモンテ州との境地域で造られている。
さて、フランチャコルタ地方の伝統的な郷土料理といえば、カソンセイCasonsei(パン粉、卵、パルメザンチーズ、ビーフのひき肉を詰めた4センチ角ほどの一種のラビオリ。カゾンチェッリCasoncelliともいう)=写真。セージで風味づけしたバターをかけて食べる。夏の日に、今回ご紹介した発泡性ワインを楽しみながら味わっていただきたい料理のひとつだ。