25年前、政府のオフィスや駐車場として使われていたサマセット・ハウス。同地が現在のような文化施設として生まれ変わってから25周年を記念して、今年は例年にも増して様々なイベントが計画されている。その第１弾として開催されているのが、『土』の世界を深堀したエキシビションだ。これまでにも『治癒』や『可愛さ』など、独創的なエキシビションを展開してきたサマセット・ハウスらしいテーマに期待が高まる。
生命の源である土。私たちの足元に広がる果てしない世界には、多様な生命が息づき、循環している。そんな素晴らしき土の世界を、各界のアーティスト、作家、活動家や科学者たちによる様々なアートやインスタレーション作品、歴史的・科学的な遺物、そしてドキュメンタリー映像や生成映像を駆使し、土壌の力と脆弱さ、基本的な役割や可能性について、来場者に学びやインスピレーションを与えてくれる。
真菌類の宝石のような美しさに気づき、うやうやしく並べられた英国各地の土のコレクションに関心させられ、かつては可憐な花々が咲き乱れていたが、戦争によって失われた豊饒の大地や、汚染された土地で弱っていく動物の記録映像には、胸が絞めつけられる…。改めて『土』ついて考え、感謝し、反省し、また、土に一番の悪影響も好影響も与えられる、その循環の重要な一員であると再認識したエキシビションだった。（文／ネイサン弘子）
『土』を見つめなおすきっかけになる展示たち
SOIL
４月13日（日）まで
Somerset House
Embankment Galleries, South Wing
Strand, WC2R 1LA
月曜休館
チケット：一般£18.50、6～11歳 £10
www.somersethouse.org.uk
週刊ジャーニー No.1380（2025年2月13日）掲載
