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救世主か、ただの偶然か? BCGワクチン、コロナに有効説

■新型コロナウイルス(Covid-19)が依然として猛威を振るっている。一方、動画サイトやインターネット上ではBCGワクチンが新型コロナウイルス感染の際、重症化させない何らかのカギを握っているのではないかという仮説が出回っている。因果関係は証明されていないが、既にオランダや米国、オーストラリアの機関が研究に着手しているという。新薬開発には膨大な時間がかかると言われる中、安全が確認されている既存のワクチンに効果が期待できるなら、それが一番の早道だ。まだ仮説でしかないが、新型コロナウイルス禍、早期終息のためには藁にもすがりたい日々。頭の片隅に置いていていい話かもしれない。

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BCGワクチンとは

BCGワクチンとは結核に対する生ワクチンで1921年にフランスのパスツール研究所で作製された。史上初のワクチンと言われる天然痘ワクチン同様、ここでも世話になるのが牛だ。BCGワクチンとは「牛が感染する結核菌」を取り出し、繰り返し培養することで人体にほぼ負担が掛からないところまで弱毒化させたものだ。この弱毒化させた牛の結核菌をあえて人体に取り入れることで軽く感染させ、人間が感染する結核菌への免疫を獲得させる。日本には細菌学者、志賀潔がパスツール研究所から分与を受け、1924年に持ち帰った。

現在、世界は上の世界地図にあるようにBCGワクチン接種プログラムを「今も実施している国(黄色)」「かつて実施していたが既に終了した国(紫)」「全く実施していない国(オレンジ)」に分かれている。割合から言うと「今も実施している国」が圧倒的に多い中、ヨーロッパは医療関係者等のハイリスク群以外への接種は既に終了している国が多い。スペインでは1981年に終了。英国では1953年以降、10歳から14歳の子供を対象に接種していたが2005年をもってプログラムが終了している。死者数が感染源である中国を抜いたイタリア(4月6日現在の死者数1万5887人)や米国(同9619人)は数少ない「実施したことがない国」となっている。

南米で唯一、BCGワクチン接種を実施していないエクアドルは死者数180人。人口が20倍のブラジルが359人であることを考えると深刻な状況と言える。

また、多くの死者を出しているスペイン(同1万3055人)の隣国ポルトガルは2017年に終了するまでBCG接種を続けており死者数が295人と、人口が約4分の1ということを考慮してもスペインより圧倒的に少ない。現在も接種を継続しているアイルランド(158人)にも同様のことが言える。これを「偶然」という一言で片付けてもいいのだろうか。

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前期分与と後期分与

患者から分離された新型コロナウイルス粒子の透過電子顕微鏡写真(米国立アレルギー・感染症研究所提供)。

日本で使われている株菌は日本株、または「Tokyo 172」と呼ばれるものでソビエト(ロシア)株やモロー株(ブラジル株)同様、パスツール研究所から直接分与された「前期分与株」と呼ばれるもので、オリジナルに最も近い株菌だ。日本で接種が始まったのが1951年。感染者で重症化したり亡くなったりしている人の大多数がBCGワクチンの接種が始まる前に生まれた70歳以上の人たちと言われている。先日亡くなった志村けんさんもちょうど境界線の70歳だった。日本の他に台湾、タイ、イラク、そして北朝鮮がこの日本株を採用している。北朝鮮は分からないが、日本株を採用している国ではいずれも4月6日現在までの死亡者数が少ない。

また、ソビエト株を採用しているロシア(4月6日現在の死者数47人)や旧東欧諸国でも死亡者数が少ない。もちろん今後、爆発的に死者が増える可能性もあるので決して断定はできないが。

一方、西側ヨーロッパの国々が採用していたデンマーク株やパスツール株(パスツール研究所とは無関係)などはオリジナルの株菌から枝分かれした「後期分与株」と呼ばれる株菌だ。英国では独自のグラクソ株が使われていた。中東で突出して死者数が多いイラン(同3737人)も独自のBCGワクチンを採用しているという。ちなみに日本株を使っているイラクの死者数は61人だ。

ドイツの場合は少し特殊で接種プログラム自体は終了しているが、旧東ドイツではソビエト株、旧西ドイツはデンマーク株が接種されていた。データでは旧西ドイツ側の地域により多くの死者が出ている。

「後期分与株」はオリジナルをコピーする段階でいつくかの抗力が失われていることが専門家によって指摘されている。

こうした傾向に着目したオランダやオーストラリア、そして米国の研究者たちによってBCGワクチンと新型コロナウイルスの関連性の研究が既に始まっている。

あくまでも仮説

これほど相関関係を並べられると、話が出来過ぎていてBCGワクチンが新型コロナウイルスに有効なのではないかと思いたくなる。しかし現段階ではあくまでも興味深い相関関係が認められているだけに過ぎず、因果関係は全く立証されていない。また仮に認められたところで、各国、毎年決められた量しか保有しておらず、突然ワクチンを増産するのは容易ではないという。ただもしも、BCGワクチンが新型コロナウイルスに対する免疫性獲得に役に立つとなった場合、心配なのはBCGワクチンを接種した過去がない米国がイタリア化することだと指摘する研究者は多い。

日本ワクチン学会は「新型コロナウイルスによる感染症に対してBCGワクチンが有効ではないかという仮説は、いまだにその真偽が科学的に確認されておらず、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。BCGワクチン接種の効能・効果は結核予防であり、新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防を目的としていない。また、主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない。本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCGワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない」と、救世主的な扱いを戒めている。

BCGワクチンと新型コロナウイルスの関係性に関しては冒頭で述べたようにネットや動画サイト等で専門家の方々がより分かりやすく解説されている。興味のある方はぜひそちらを検索してご覧いただきたい。

本稿は僭越ながら専門家でも何でもない記者が短時間で資料をかき集めてまとめた。事実誤認があれば、どうぞ遠慮なくご指摘下さい。(手島功)

【参考資料】驚異的に死亡率の低い「日本の謎」を解く鍵 池田信夫、アゴラ研究所所長/世界におけるBCG接種の状況 戸井田一郎 日本BCG研究所/BCGワクチンの効果を検証する動きが広がる ニューズウィーク日本版 他多数

By 週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)

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