沈没から471年
メアリー・ローズ号
ついに完全公開!
The Mary Rose
■6世紀半ばー。海洋防衛の重要性を十分認識していた、イングランド王ヘンリー8世(在位1509~1547)は、即位後すぐに2隻の木造軍艦を建造。そのうちの1隻が、1511年にポーツマスで誕生した、メアリー・ローズ(Mary Rose)号である。同号が、フランス艦隊との戦いで沈没してから471年。1982年に引き上げられた、船体の右舷部分の公開準備がようやく整い、7月20日に博物館のリニューアル・オープンと同時に、ついに完全公開されるに至った。そのメアリー・ローズ号と久しぶりの対面を果たすべく、取材班はポーツマスに向かった。
2016年8月4日 No.944
チューダー朝のヘンリー8世が王位についた頃、バチカンとカトリック大国スペインが圧倒的な勢力を誇る欧州にあって、イングランドはまだ弱小国に過ぎなかった。しかし、1534年、男子の世継ぎを切望するヘンリー8世は、女官のアン・ブリン(後に反逆罪で処刑される、エリザベス1世の母)と再婚するため、離婚を認めないバチカンと決別。みずからイングランド国教会(プロテスタント)を設立し、その長となる。
後戻りのできないイングランドは、スペインや、宿敵であるフランスなどからの侵攻に備え、軍備拡張を急ぐ必要に迫られる。そのような情勢下で建造されたのがメアリー・ローズ号だ。
ヘンリー8世自慢の軍艦だったが、フランスが200隻超、3万人を動員してポーツマス・ソレント海峡に押し寄せてきた「ソレントの戦い」で、旗艦を務めながらも、ポーツマス沖、わずか1マイル(1.6キロ)の地点であっけなく沈没。乗員500名のうち生存者は35名のみという大惨事となり、助けを求める声が岸まで響き渡ったという。白兵戦で、敵兵がやすやすと入ってこられないようにメアリー・ローズ号の船腹に張り巡らされた網が、乗員の脱出を阻んだのである。
海底に対して60度の角度で沈んだ同号は、437年間、深い泥の中で眠ることになる。海水にさらされた左舷は失われてしまったが、右舷は他の多くの遺物とともに生き残った。
右舷部分が引き上げられたのは1982年のこと。チャールズ皇太子を現場に迎えて行われた引き上げの劇的な模様は、6,000万人がテレビを通して見守った。
©Peter Langdown
©Hufton+Crow
陸にあがった船体は、空気に触れて朽ちてしまう恐れがあった。まず海水を抜くために霧状にした真水を吹きかける作業が12年行われ、次に水溶性ワックスが9年にわたって吹きかけられた。さらに乾燥作業に2年あまり。いずれも気の遠くなるような地道な作業の連続だった。編集部では3度にわたって、途中過程についてご報告してきたが、先月末、ついに完全公開が実現したメアリー・ローズ号との再会を果たし、感慨に浸ってきたのだった。
現役の海軍港として使用される一方、このメアリー・ローズ号をはじめ、ネルソン提督の旗艦ヴィクトリー号、1860年建造の鉄製装甲艦ウォリアー号などを「ヒストリック・ドックヤード」内で一般公開しているポーツマスは、英国の海洋史を知る上で欠かせない場所。一度も行ったことがないという方はもちろん、メアリー・ローズ号の全体像はまだ見ていないという方は、ぜひ訪れてみていただきたい。
※ショップの品揃えも充実! 気の利いた品がみつかるはず。見学時には買い物の時間を予定に含めるのをお忘れなく。 (文/本紙編集部)
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専用フォームよりぜひご応募ください!
応募締め切り: 2016年8月18日(木)
Portsmouth Historic Dockyard
Victory Gate, HM Naval Base, Portsmouth PO1 3LJ
www.historicdockyard.co.uk
◆入場料(1年間何度でも入場可能)
大人…26.40ポンド
(メアリー・ローズ号のみの場合は18ポンド)
子供…18.40ポンド
(メアリー・ローズ号のみの場合は13ポンド)
家族向けのお得な料金設定あり。
◆ロンドンからのアクセス
車…A3、A27、M275経由でおよそ2時間。市内の駐車スペースは限られているので、「Park & Ride」の利用を強くお薦めする。
電車…Waterloo駅またはVictoria駅からPortsmouth Harbour駅で下車すぐ。所要時間は1時間半から2時間。