フレッシュなビールを自宅にお持ち帰り

グラウラー / Growlers

■小規模醸造によるビール造りが盛んに行われ、豊富な種類のビールを取り揃えるパブや専門ショップが各地に続々とオープンするロンドン。愛好家らの「美味しい生ビールを自宅でも味わいたい」という声に応えて、「グラウラー」売りが広まっている。どんな仕組みなのか、実際に試してみた。

グラウラー(growlers)とは、「がみがみ言う人、うなる人」といった意味の単語だが、今回取り上げるのは、醸造所や販売店からビールを持ち帰るための容器のこと。19世紀頃にその名が使われていたとされ、ビールが入った容器の栓を抜くときに、うなるような音が聞こえたことに由来するという。
現在一般的に使われているものは、取っ手がついた琥珀色のガラス瓶で、容量は1.89リットル(3.33パイントに相当)。これにビールが注がれ、飲み終われば容器はもちろん再利用できる。米国やオーストラリアではすでに人気を獲得しており、数年前から英国でも広がり始めた。英国では、フラゴン(flagons)の名でも呼ばれている。
ロンドン東部ハックニーのビール専門店「クラプトン・クラフト(Clapton Craft)」を訪れてみると、2人組の女性客がメニューの書かれた黒板の前に立ち、品定めしていた。ホーム・パーティー用のビールを求めて来たのだという。
この日は、バーモンジーの醸造所「ブルー・バイ・ナンバー」やトテナム・ヘールの「ビーバータウン」といったロンドンの醸造所を中心に、8種類のビールが並んでいた。ラインアップは定期的に入れ替わり、ボトル販売されていない期間限定の珍しいビールも取扱うことから、愛好家から好評を得ているという。
同店では、一般的な1.89リットル・サイズのグラウラー(容器代6ポンド)のほか、1リットルのペットボトル(同50ペンス)も用意。「少人数ならばペットボトルの方が軽くて持ち運びに便利なので、おすすめ。ただ、常連客の多くはすでに大きい瓶を持っていて、それを利用する人が多い」とスタッフは話す。
価格は銘柄によって異なり、この日はグラウラー用12ポンド~(ペットボトル用6.50ポンド~)。同店では特殊な機械で注入されるので、最大で6週間、美味しく飲める状態が保たれるという。筆者は、ブライトン郊外の醸造所「バーニング・スカイ」の「オーロラ」を購入。1週間後に飲んでみたが、炭酸や風味がしっかりとしたビールを味わうことができた。

【左】ビールの豊富な品揃えを誇る「クラプトン・クラフト」の店内では、グラウラーが大量に並ぶ=ハックニー店。
ケンティッシュ・タウンにも支店あり。 www.claptoncraft.co.uk
【中】クラプトン・クラフトでは各醸造所でも使われるような、特別な機械を使ってボトリングを行うため、鮮度、炭酸が長持ちするという。
【右】1リットルのペットボトルでも提供するクラプトン・クラフト。少人数で数種類の味を楽しみたい人向け。

一方、ケンティッシュ・タウンに醸造所を構える「カムデン・タウン・ブルワリー」では、3.2パイントおよび1.6パイントのグラウラーを販売する。それぞれ容器代が5ポンド、2.5ポンドで、中身は一律10ポンド、5ポンドと分かりやすい価格設定だ。
グラウラーでビールを購入すると、一般的に瓶ビールでの購入よりも、最大で20%安くなると言われている。各所に取扱い店が増えており、キングズ・クロス駅北側のグラナリー・スクエアにあるウェイトローズや、ケンジントンのホールフーズなどでも購入可能。ホーム・パーティーや夏のピクニックで活躍しそうだ。

(写真・文/本誌編集部 西村千秋)