1メートル先は闇…
もやカクテル

 


■呼吸をするだけでカクテルを味わえる…。そんな一風変わった空間が、ロンドン・ブリッジ駅から徒歩3分の場所に期間限定で登場した。「Alcoholic Architecture」の名が冠されたその場所で一体どんな『カクテル体験』ができるのか、早速足を運んだ。



食市場「バラ・マーケット」に面する入り口の前に着くと、その先はカーテンで仕切られ、うっすらとした白いもやが、隙間から漏れているのがわかる。これから何が始まるのか、ドキドキしながらカーテンを開けて足を踏み入れると、「アルコール空間」の始まりだ。照明がわずかに設けられているが、もやのせいで足元はほとんど見えない中、手すりを伝って恐る恐る下りていく…。次第にもやが濃くなると、空気が喉に絡まりつくような違和感も感じられ、地下にたどり着いたときには、別世界に迷い込んだような錯覚にとらわれた。
この空間を手がけるのは「食」をコンセプトにアート作品を生み出す2人組のアーティスト「ボンパス&パーBompas & Parr」。2014年の年明けを祝うロンドン恒例の大晦日イベントで、「味わえる花火」を発表したことでも話題になったユニットだ。
今回の「Alcoholic Architecture」も、彼らの作品として設けられたもので、入り口から下りて現れた地下スペースには、「クラウド」と名づけられた小さな部屋とバーがある。全体に漂うもやは、強力な加湿器を使って、英国を代表するカクテル「ジン&トニック」を空気に変えたもの。クラウドの中は、湿度140パーセントに設定され、さらに深いもやに覆われている。近くにいる人でさえ、1メートルも離れれば、ぼんやりとしたシルエットでしか認識できないほどだ。  立ちこめる空気にはアルコールも含有されており、その空間にいるだけで、口や鼻、体の表面、目(!)からもこの『もやカクテル』を吸収できるのだとか。「1時間ほどすると酔ってしまうこともある」との触れ込みだが、これには個人差あり。 英国の中でも特に古い歴史をもつ「サザーク大聖堂」の隣という立地に着想を得て、内装やカクテル、スタッフの衣装などは中世の修道院をイメージ。クラウドの隣にあるバーでは、聖書正典のカクテル(Canonical Cocktail)、トラピスト修道院による醸造(Trappist Brew)といった文字がメニューに並ぶ。

エントランスを抜けた瞬間に始まる、
薄暗がりともやの世界。
  バーでは「ボンパス&パー」考案による
中世の修道院をテーマにしたカクテルが
メニューに並ぶ。

筆者が訪れたときには、フルーティーな甘い香りに混じり、オープンから間もないせいか地下のかび臭いにおいも感じられた。これも中世の修道院の雰囲気作りに一役買っている…?
入場にあたっては簡易のレインコートが貸与されるので、服がぬれる心配はなし。とはいえ、体験後は、顔や髪、手などがしっとりとするので、多少よごれてもよい格好で出かけた方が安心して楽しめそう。期間は来年1月まで。(文/本誌編集部 西村千秋)


Alcoholic Architecture
One Cathedral Street, Borough Market, London SE1 9DE
入場料:10ポンド~ www.alcoholicarchitecture.com