「シルクロード」と聞くと、アジアの砂漠をゆっくりと進むラクダの隊列を想像しロマンを掻き立てられるが、実際は東西を結ぶ単一ルートではなく、草原から砂漠を踏襲し、山を越え、海を渡り、極東の島国から遥か遠くのヨーロッパやアフリカまでをまるで葉脈のように繋ぎ、交差し重なり合っていたという。
道路や鉄道、飛行機で物理的に世界がつながり、インターネットの登場で劇的にグローバル化された今日の世界が形成される遥か昔、大陸をつないでいた交易ルートの東端として紹介されているのが「Land of the Rising Sun -- 日出づる国」、日本だ。エキシビションのスタートは、奈良の平城京から唐代の中国に派遣された遣唐使の紹介から始まる。日本から朝鮮半島、中国へ、さらに西へ西へとシルクロードは延びていった。東西が互いに利益を享受し、技術や文化を共有し、時に思想にまで影響を与えあっていた様子が、ルートを追うようにわかりやすく紹介されている。
お香やスパイスなどの香りを体感できる工夫もされており、五感を刺激しながらかつての交易団の姿を想像すると、旅心を刺激されると同時に、脳内で琵琶や民族音楽の音色が再生され、とてもエキゾチックな気分になった。
ほんのりとお香の香りが漂い、民族柄のテキスタイルや美しいジュエリーが並ぶ特設ショップもお見逃しなく。(写真・文/ネイサン弘子)
Silk Roads
2025年2月23日(日)まで
The British Museum
Great Russell Street, WC1B 3DG
毎日:午前10時~午後5時
金:午前10時~午後8時30分
チケット:大人£22~、16歳以下無料
www.britishmuseum.org
週刊ジャーニー No.1363(2024年10月10日)掲載