ジェイソンの闘病生活、想像と創造の冒険 Jason and the Adventure of 254

Jason and the Adventure of 254
■ 医療や医学に関する、ありとあらゆるモノやアートを展示するミュージアム「ウェルカム・コレクション」。同館で開催中の一見とにかくポップでカラフルで楽しそうなエキシビション。その真意とは。

ギャラリーの空間を病棟に見立て、圧倒的な大きさとサイケデリックな色調のインスタレーションの数々は、彫刻、イラスト、アーケードゲームのようなインタラクティブなジオラマで構成されている。アーティストのジェイソン・ウィルシャー-ミルズのこれまでのエキシビションの中で最も記念碑的で個人的なものだという。彼が11歳の時、自己免疫疾患で首から下の運動機能を徐々に失い、病院で過ごした1年の記録と記憶を反映したユニークな作品群と共に、自身のアーティストとしての創造性がどこから来たのかについて考察している。

80年代のウエスト・ヨークシャー。サイケデリックな壁紙に囲まれた病室で、ジェイソン少年が動かない身体でできることは想像することだけだった。見舞いの家族が読み聞かせてくれる物語、大人の患者たちが語ってくれた驚きの戦争体験やちょっと下品なジョーク、つけっぱなしのテレビから流れる激動の世界、放送を心待ちにしたSFドラマ「ドクター・フー」。時に8人兄弟の中で病気の自分ばかりが注目を集めていることに罪悪感を感じ、院内学校に通う子どもたちの姿を見て車イスを渇望し、自分だけの特別な車イスを夢見る…。そんな日々が彼の類まれな想像力と創造力を育む。やがて車イスで院内学校に通えるようになった彼は、口で絵を描くことを習得。それは、その後の彼の人生を形作った。入院から1年後に念願の我が家に帰ったジェイソンは、上半身の機能を回復し、アーティストの道を歩んでいく。

胸が締め付けられる瞬間もありながら、大人も子どもも楽しめ・学べるエキシビションを、是非お見逃しなく。(写真・文/ネイサン弘子)

本エキシビションのタイトルにもある「254」は、ジェイソンにとって大きな意味を持つ。1980年8月、午後2時54分。病室では回診の小児科医が、彼の両親に「生き続ける望みは少なく、生きられても16歳くらいまでかもしれない」と告げていた。その横で、ジェイソン少年はテレビに映し出されるモスクワ五輪、男子1500メートルの決勝を興奮気味に凝視していた。この時、金メダルを獲った英国の英雄セバスチャン・コーがつけていた背番号も「254」だった。
「キャリパー・ブーツ」はジェイソンが子どもの頃に着用させられた整形外科用の器具で、着用時には痛みを伴ったという。少年はこの無慈悲なブーツを昇華させ、特別なブーツを想像し、描いていた。以来、彼の特別なブーツは度々作品に登場している。後ろの壁一面に広がるのは、闘病の出来事と想いをユニークなイラストと共に時系列に紹介した年表。
ギャラリーのあちこちに点在するプッシュボタン式のジオラマは、ジェイソンが家族で休暇を過ごした海辺のリゾート地ウィザーンシーにあったアーケード・ゲームマシンを彷彿とさせる。箱の中の紙人形は、ジェイソンの入院前と闘病中の記憶を覗き見る窓の役割を果たしているそうだ。それらは単純な思い出の描写ではなく、仕掛け絵本のように見るものをワクワクさせるマジカルな世界観で満ちている。幼少期から思春期を経て、家族との関わりや健康状態の変化、創作の旅に至るまで、彼の人生における変容の段階を示している。
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Jason Wilsher-Mills
Jason and the Adventure of 254

2025年1月12日(日)まで、無料
Wellcome Collection
183 Euston Road, NW1 2BE
最寄駅:Euston
火~日:午前10時~午後6時
(木曜のみ午後8時まで)
https://wellcomecollection.org

週刊ジャーニー No.1341(2024年5月9日)掲載

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